児童虐待は本当に増えているのか?
●虐待相談・対応件数は増えているが、虐待死は減っている
本日の『時事通信ドットコムニュース』に以下の記事が載っていました。
児童虐待被害、最多1394人=昨年、緊急保護も大幅増-警察庁
児童虐待事件の摘発が昨年1年間に1380件あり、被害に遭った18歳未満の子どもの数は1394人だったことが14日、警察庁のまとめで分かった。いずれも過去最多を更新した。
これだけ読むと、いまの親はなんてひどいんだとか、ひどい時代だとか思うかも知れませんね。
しかし記事にはこうも書かれています。
被害者数は前年比226人増の1394人。死亡したのは同22人減の36人で、全体に占める割合は2.6%と、これまでで最も低かった。
児童虐待被害者数は増えているけど、殺された子どもはこれまでてもっとも低かった?
児童虐待最大の悲劇は、被害者児童の死亡だと思うのですが、それがもっとも低かったとはどういうことでしょうか?
2014年の名古屋大学大学院教育発達科学研究科 内田良准教授のグラフには次のようなものがあります。
『「虐待増加」「過去最悪」の報道は壮大な嘘である』
『虐待、体罰、いじめ… 子どもに降りかかる暴力や危害に対して、これほどまでに敏感な時代はない。子どもの人権を尊重しようと、不断の努力を怠らない社会の到来である。虐待防止活動がこの20年余りの間に驚く勢いで拡大し、悲願の児童虐待防止法も制定・施行(2000年、その後複数回にわたって改正)され、また養育者を対象とする子育て支援のサービスも急速に普及した。これほどまでに子どもを大切にする社会において、それでもなお「過去最悪」の事態が訪れているとは、いかにもおかしな話ではないだろうか。』
『「過去最悪」ではなく「過去最良」!』
(YAHOOJapanニュース「児童虐待7万件超 過去最悪」のウソ――減少する虐待死、煽られる危機感」より引用)
とまで書いています。
確かに虐待の相談や対応件数は年々増えていますが、児童虐待の究極ともいえる虐待死や無理心中は、減っているのが事実のようです。
●虐待の実数は見えないが・・・
実際のところ、児童虐待の実数というのはわかりません。すべての虐待が通報されているわけではなく、対応されているわけでもない。
むしろ児童虐待というのは、家庭内という密室で行われているわけで、加害者の親も被害者の親も、外部にバレないようにするのが通常。
ですから、実数は相談件数や対応件数の何十倍、何百倍もあると考えていいのでしょう。
それでも私は、内田良准教授と同様、この20年ほどで児童虐待は急速に減っているのではないかと想像しています。
上の図は『少年犯罪データベースドア』からの引用ですが、70年代に比べると殺される子どもは年々減っているのがわかります。
たとえば昭和の時代、「しつけ」との名目で現在なら虐待とされることが堂々と行われていました。
そのため子どもが死亡したとしても、親はせいぜい傷害致死、場合によっては罪に問われないということも当たり前のようにありました。
育てていけないために「間引き」、つまり生まれたばかりの赤ちゃんを殺してしまう場合、昭和初期には普通にやっていたようで、現在でも「殺人罪」なのですが、諸事情から情状酌量となることが多かったのです。
ところがここ20年ほどの間で、虐待はもとより体罰もよくないという考えが急速に広まります。
マスコミというのは、事件を報道するのが仕事ですので、虐待のデータが増えていることのみを強調しがちですが、親による子殺しが確実に減っていることから、おそらく児童虐待の相談件数や対応件数は増えていても、実数は減っているのではと、私は考えています。
児童虐待の相談件数、対応件数をゼロにするのは簡単です。相談を禁止し、対応しなければよろしい。
つまり、年々児童虐待の相談件数、対応件数が増えているのは、いままで隠れていた虐待が暴かれているということで、むしろいいことだと思うのです。
むしろまだまだ少ない。もっともっと増えていいんじゃないかと。
おぐらおさむ(巨椋修)