家庭内暴力・殴られる母


不登校・ひきこもり・ニート』という問題の裏側に、家庭内暴力がひそんでいる場合があります。

被害者の多くは母親。

加害者は、父親か、子どもが多いようです


もうひとつの家庭内暴力というのは、親が子どもに行う暴力、虐待といわれるものがあります。

殴られる母親を見て育ったため、成長してから対人恐怖症になってしまったり、虐待されて育ったため、心に深い傷を負ってしまうこともあり、それが将来『不登校・ひきこもり・ニート』となって表れるという場合もあります。


また、そのように育ってしまったため、無意識のうちに成長してから親へ復讐するということもあるかも知れません。


家庭内暴力というのは、家庭という閉鎖された空間で行われるため、他人にはあまり知られないという一面もあります。

他人から見れば、理想の家族。

内部からみれば、最悪の修羅場の毎日なんてことも少なくありません。


家庭内暴力や、児童虐待が行われていても、被害者が誰かに訴えるということは、あまりありません。


加害者は、「相手が悪いんだ」、「これはしつけだ」と、言いますし、

被害者も、「アタシが悪いからだ」、「人様に知られたら恥ずかしい」という思いがあるようです。


虐待を受けている子どもの場合、親をかばうために、何も言わないということもあります。


家庭内暴力も、ある種の依存症で習慣化することがあります。

こうなったら、殴る暴れる理由など、ささいなことでいいんです。

アルコール依存者が、「きょうは雨が降ったから一杯やるか」というのと同じようなものです。

殴る理由は、どんなことでもいいのですから、被害者はなるべく加害者から遠ざかる必要があります。

息子の暴力に困っていた人が、精神科医に相談したところ、

「それは息子さんの人格を認めていなかった不満が爆発しているのです。しばらく我慢しましょう」

と言われ、我慢し続けたあげく殴り殺されてしまった事件がありました。

また逆に、耐え切れなくなって、息子を殺してしまったという事件もあります。


原因はどうあれ、暴力に耐え続けなければならないなどということはありません。


日常的な家庭内暴力を、夫婦喧嘩や、親子喧嘩のひとつだと思っていると、その認識の甘さに驚くことになります。


わたしの知っている例では、母親の目玉を千枚通しで、刺したというものがありました。

当時わたしは、『不登校・ひきこもり・ニート』などという問題にかかわっていない頃のことでしたので、本当にびっくりしました。


かかわるようになってからは、夫や子どもに殴られる妻や母、親から暴力を受ける子どもが、少なからずいるということを知り、暗澹(あんたん)たる気持ちになったものです。

もっとも安全安心できる場所であるべき家庭で


肋骨が折られる。

鼻の骨がつぶされる。

歯が折られる

肉体的暴力が無くても精神的暴力を受け続ける……



それでも耐えて、外側には明るく振舞っている人というのは、一見すると“けなげ”ですが、耐えているだけでは問題は解決しません。


相手が夫なら、離婚を考えるというのも、いい方法だと思います。

家庭内暴力というのは、一種の依存症、悪癖、悪習慣ですから、アルコール依存症の人や、ギャンブル依存症の人が、なかなかやめられないというのと一緒で、「もう二度としません」といって、本当にやめるかというのは、実に疑わしいんです。

だいたいにおいて、妻を殴る夫というのは、その直後にひどく優しくなったりもします。

それで「ああ、この人はもう殴らないといっているし、わたしがいないとダメなんだ」と、思ってもまた繰り返されリする場合が多いんですね。



加害者が我が子の場合、夫のように離婚というわけにいきませんから、暴力を振るわれたら、その後に逃げるようにした方がいい。

着の身着のままでは、どうにもなりませんから、お金や最低限の衣服などをカバンに詰めておいて、それをもって家から離れるというのが、いいと言われています。

そして友達の家や、ウイークリーマンション、支援団体のシェルター(避難所)などに数日かくまってもらう。

暴力を振るった子どもは、親が家から出て行くと、ひどく反省したり、または「オレを見捨てたな」と、怒り狂うかも知れません。

しかし、とにかく電話などで連絡をとり、「暴力を振るわれたら一緒にいられない」、「二度としないように約束してほしい」と、会話を続ける必要があると思います。

家庭内暴力については、なるべく支援機関や相談所、精神科医といった専門家に、どのような行動をすればいいかを相談してほしいと思います。


繰り返しますが、原因はどうあれ、暴力に耐え続けなければならないなどということはありません。


FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)