大人のひきこもり問題を考える

●大人のひきこもり ― 広がる現状と課題

「ひきこもり」という言葉は、もともと若者の問題として知られるようになりました。

 しかし現在では、30代・40代・50代以降の世代にも広がり、「大人のひきこもり」が社会的な課題になっています。今回は、その実態や背景、そして支援の現状についてわかりやすく整理してみます。

 

●大人のひきこもりとは

 厚生労働省では「6か月以上にわたり家庭にとどまり、仕事・学校・交友などの社会参加がほとんどない状態」をひきこもりと定義しています。

 

かつては不登校の延長として若者の問題とされていましたが、いまでは大人のひきこもりが多数を占めています。

 

●規模と実態

 内閣府の調査によると、15〜64歳でひきこもり状態にある人は全国で約146万人と推計されています。

 そのうち40歳以上が半数以上を占めており、長期化・高齢化が進んでいるのが特徴です。ひきこもりの期間が10年以上に及ぶ人も少なくありません。

 さらに65歳以上で一人暮らしの高齢者がひきこもりになると、孤独死に直結する問題となります。

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●背景にある要因

大人のひきこもりは、単なる「怠け」ではありません。さまざまな要因が複雑に絡み合っています。

 

心理的要因:対人関係への不安、うつ状態、発達特性(ASDADHDなど)


家庭環境:過干渉や過保護、虐待など親子関係の問題


社会的要因:正規雇用の増加、就職氷河期世代の不遇、リストラや職場不適応


文化的要因:失敗や挫折を許容しにくい社会風土、「普通」であることを求める同調圧力

 

こうした要因が積み重なり、外に出られない状況に至るケースが多いのです。

 

●社会問題としての側面

 大人のひきこもりが長期化すると、「8050問題」と呼ばれる深刻な状況を生みます。これは80代の親が50代の子を支える構図で、親の介護と生活支援が重なり、家庭が限界に達するケースが増えています。 

 

 また、ひきこもりが続くと就労経験や社会的つながりを失い、生活困窮や孤独死のリスクも高まります。精神的にも、うつ病や不安障害を併発する人が少なくありません。

 

●支援の現状と課題

 各地には「ひきこもり地域支援センター」やNPO、家族会などがあり、相談や居場所、就労支援を提供しています。しかし、支援にはいくつかの課題があります。

 

* 本人が外に出られず、支援につながりにくい
* 家族も孤立しがちで、相談先がわからない
* 長期化・高齢化に対応する制度が十分でない

 

 そのため、支援の体制をどう広げていくかが大きなテーマになっています。

 

●回復への小さな一歩

 ひきこもりからの回復に「即効薬」はありません。大切なのは小さな一歩の積み重ねです。

 

* 家族が本人を急かさず、安心できる関係を築く
* 居場所やオンライン交流など、外とのつながりを持つ
* 短時間のボランティアや軽作業から少しずつ社会参加を始める

 

 こうした過程をゆっくりと重ねていくことが、回復への道になります。

 

 大人のひきこもりは、個人の問題にとどまらず、社会全体で取り組むべき課題になっています。

 就職氷河期世代の不遇や非正規雇用の拡大など、社会構造の影響も大きく、決して「本人の甘え」ではありません。

 

 支援の輪を広げ、一人ひとりが安心して社会とつながれる環境を整えていくことが、これからの大きな課題だといえます。

なぜ不登校・ひきこもり・ニートは増え、なかなか抜け出せないのか?

 最近、学校に行けない子・家から出られない人・働けない若者の声をよく耳にします。
 実はこれは、個人の「弱さ」だけで説明できる問題ではありません。社会構造・制度・時代背景が複雑に絡んでいます。
 
 本記事では、最新データも交えながら、なぜ増えるのか、なぜ長引くのかを「構造要因」と「促進因子」からわかりやすく整理してみましょう。
 
●データで見る現状
 まず現場感を持てるよう、最新の統計データを確認しておきましょう。
 
対象 数値・傾向 ポイント
 不登校(小・中学生) 令和5年度、不登校児童生徒数は 34万6,482人 に達し、過去最多。前年から約4万7,000人の増加しています。
 
 これは小学校+中学校を合わせた数。学校現場にとって無視できない規模です。
 小学校:13万370人、中学校:21万6,112人。小学校レベルでも、全体の2.1% が不登校状態という報告もあります。
 
 不登校児童生徒のうち、「やる気が出ない」「不安・抑うつ」「生活リズム不調」などを訴える者が多いとの学校把握データあり。
  これは単なる欠席ではなく、心理・情緒的要因が関与していることを示します。
 
 ひきこもり 15〜64歳を対象とする調査では、全国で約 146万人 がひきこもり状態と推計。すなわち、人口の “50人に1人” 程度となります。 2019年の調査時よりも数十万人増えており、コロナ禍影響なども指摘されています。
 
 年齢別では、15〜39歳層で2.05%、40〜64歳層で2.02% がひきこもり状態とされ、 若・中年の両層で共通して存在する問題であることが明らかです。
 
  中高年層(40〜64歳)のひきこもりでは、女性が半数以上を占めるという分析もあります。
 これまで「男性中心」と考えられがちだったひきこもり像の見直しを迫るデータです。
 
●今なぜ増える? ― 構造要因を通して見る
データが示すように、不登校・ひきこもり・ニートは決して少数派ではありません。それらが「増えている/見えやすくなった」のには、社会変化という背景があります。
 
1. 就労・キャリア構造の変化
 正社員中心の働き方が揺らぎ、非正規雇用契約社員の拡大など、安定性が失われています。
 将来に対する不安が若年層に強くのしかかると、「働く意味/場所」が見えづらくなります。
 雇用の流動性成果主義が強まり、失敗や挫折が取り返しにくいというプレッシャーを人々が感じやすくなっています。事実、いまの時代は昔以上に再出発しにくい時代というのが現実なのです。
 
2. 学校・教育制度の画一性
 画一的なカリキュラム、均質な評価、レール型進路は、個性・学び方の違いを吸収しにくい。いじめ・人間関係の摩擦、授業についていけないことなどが、不登校の引き金になりやすいなどは言うまでもないこと。
 文部科学省委託の調査でも、不登校における主な要因として「無気力・不安」が挙げられています。
 学校は「個性を大切に」と口では言うものの、実際に固定的であれば、いじめの対象になりやすく、教師に目をつけられやすいというのが、日本の教育界であるのは、昭和時代から変わっていません。
 
3. 地域・コミュニティの希薄化
 地域で顔を知る人が少ない、近所づきあいが希薄、地域の支え合い構造が弱体化しているのが現代社会。
 学校・職場外での居場所が少ないため、脱落したときの受け皿がない。「孤独・孤立」に関する全国調査も、つながりの希薄化を問題視しています。
 かといってご近所づきあいを嫌うのは、都市部も郊外も変わらないようです。
 
●なぜ長く続いてしまう? ― 促進因子の具体例
 不登校・引きこもり・ニートは、増えるだけでなく、一度つまずくと長期化しやすい理由も押さえておきましょう。
 
心理・発達的要因
 挫折の繰り返しから「どうせ自分は無理だ」という思いが強まる(学習性無力感)。
 発達障害精神疾患(うつ、不安障害など)が背景にある場合、外部からの支援がないと自己修復が難しい。
「やる気が出ない」「不安が強い」「生活リズムの乱れ」が不登校児童の学校側把握データで上位に挙がっています。
 
家庭・親子関係
 親が子どもを支えすぎ、社会との接点を遮断してしまうこと(過保護・介護化、7人に一人の子どもが貧困に苦しんでいるという現実)。
 親自身が孤立して支援を受けづらい、相談先がないという現実。
 家庭が安心領域となることで、「外に出る必要性」が薄れてしまう。
 
制度・支援の壁
 支援制度は「本人が来ること」を前提にしているケースが多く、動けない人にはハードルが高い。
 教育・福祉・就労支援は縦割りになりがちで、「途切れ」やすい。
 支援体制そのものが十分でない自治体もあり、地域偏在が問題となっています。
 もう一つは、不登校・ひきこもり・ニートの当事者や親は、支援にたどり着けるだけの知識が不足している場合も少なくない。
 
社会・文化的ハードル
不登校」「ひきこもり」「ニート」というレッテルが本人の自己イメージを固定化する。
 他者評価・恥文化が強いため、再チャレンジの際のハードルが高く、支援があっても受けようとしない場合がある。
 インターネット・ネットコミュニティが代替的な居場所となり、外部との接点がますます薄くなる。
 
見失ってはいけない視点
 不登校・ひきこもり・ニートは「個人の責任」だけで語れない、社会全体の課題です。
 構造要因(社会・教育・地域の変化)と促進因子(心理・家庭・制度・文化)が複雑に絡みあい、問題を増幅・長期化させます。
 
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 不登校・ひきこもり・ニートの問題は、いまの時代と密接に関係しています。
 ネットやスマホSNSがなかった時代、もっと貧しいながらも経済成長をしていた高度成長の時代、このような問題はもっと少なく、あっても人々は注目しませんでした。
 
 でもいまの時代は我々が、望んで作ってきた時代なのです。何事も完全なものはありません。いつの時代でも時代に合わない人やシステムが出てくるものです。
 
 不登校・ひきこもり・ニートに苦しむ人たちも、そんな時代に合わない人たちなのかもしれません。だとしたら、彼らを切り捨てるのではなく、包含する方法を探るべきなんじゃないでしょうか?
 

不登校経験者が成人した時の現実

●データで見る「20歳時点」の違い

 近年、不登校の子どもが過去最多を更新し続けています。そのため「不登校のまま育ったら、大人になったときどうなるのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

 今回は、文部科学省総務省の調査をもとに、不登校経験者が20歳になった時の現実を数字で比べてみます。

 

文科省による追跡調査の結果

 文部科学省が実施した「不登校に関する実態調査(平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書)」では、中学3年生のときに不登校だった生徒を追跡し、20歳時点での状況を調べています。その結果は以下の通りです。

 

就業のみ:34.5%

就学のみ:27.8%

就学+就業:19.6%

非就学・非就業:18.1%

 

 つまり、不登校経験者の約5人に1人が、20歳時点で学校にも通わず、仕事にもついていない状況にありました。

 

●一般の若者との比較

 では、同じ時期の「一般の20歳前後」と比べるとどうでしょうか。

 総務省の「労働力調査」や「就業構造基本調査」によると、若者のNEET(非就学・非就業・職業訓練も受けていない)率は、15〜24歳全体でおおよそ 2〜3%程度 です(年によって多少の変動があります)。

 

 一方で、年齢を「20歳前後」に絞った場合は、就業も就学もしていない割合がやや上がり、5〜8%程度になる年もあります。

 

 差を数値で見ると?

 

不登校経験者(20歳時点の非就学・非就業率):18.1%

一般の若者(NEET率 15〜24歳):約2〜3%
→ 6〜9倍 高い

 

不登校経験者(同上):18.1%

一般の20歳前後(非就学・非就業率):約5〜8%
→ 約2〜3倍 高い

 

 つまり、どの指標を基準にするかで倍率は変わりますが、不登校経験者は明らかに非就学・非就業になりやすいという傾向が出ています。

 

 

※注意点

 ただし、この比較にはいくつかの注意が必要です。

 

定義の違い
 文科省調査の「非就学・非就業」と、総務省統計の「NEET」や「無業者」は定義が完全には一致していません。求職活動の有無や短期的な休学の扱いなどが異なります。

 

年次のずれ
 文科省の追跡調査は平成18年度に中学3年生だった層を対象としており、20歳時点は2010年代前半に相当します。そのため、比較する総務省統計の年を合わせる必要があります。

 

因果関係ではない
不登校だから非就学・非就業になる」と単純に言えるわけではありません。家庭環境、健康状態、支援の有無など多くの要因が絡んでいます。

 

●まとめ

データから見えるのは、不登校経験者が20歳時点で「学校にも行かず、仕事にもついて いない」割合が、一般の若者と比べておよそ2〜9倍高いという現実です。

 もちろん、これは平均的な傾向であり、不登校経験があってもその後に進学や就職で道を切り拓く人も多くいます。

 

 重要なのは、「不登校経験そのもの」ではなく、その後にどのような支援や学び直しの機会があるかです。家庭・地域・社会がサポートを続けることで、不登校経験者の将来は大きく変わり得るのです。

 

 出典

文部科学省不登校に関する実態調査(平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書)」

総務省労働力調査」「就業構造基本調査」

毒親育ち

毒親とは?

毒親」という言葉は、いまや広く知られるようになった。過干渉、支配、暴力、過剰な期待や無関心――そうした行為を繰り返す親を指す親のことである。

 

 25年ほど前ぼくは、不登校の取材を始めたころ、不登校の親や支援者は口をそろえたように「親は悪くない」「悪いのは学校」「学校に毎日通っている方が異常」「学校に行けばバカになる」などと口々に行っていたことを思い出す。

 

 正直、ぼくは彼らの言に疑問を持たずにはいられなかった。

 

 実際、不登校の親と話していて「いや、そうじゃないだろう」と思うことが多かったからだ。当時は毒親という言葉はまだなかったか普及していなかったが・・・

 

  • 毒親に育てられた子どもはどうなるのだろう?

 毒親のもとで育った子どもは、大人になってもその影響を色濃く引きずることが多いことはすでに知られている。

本人は「もう親元を離れたのだから関係ない」と思いたいのに、実際には生きづらさに直面する場面が次々と出てくるという。

 

・自己肯定感の低さがつきまとう

 毒親育ちの人がまず苦しむのは、自己肯定感の低さである。

小さい頃から「あなたはダメ」「もっと頑張れ」と言われ続けると、「自分は愛される価値がない」と心の奥で思い込んでしまう。

大人になってもその感覚は消えず、仕事で評価されても「たまたま運がよかっただけだ」と自分を認められない。恋愛でも「自分なんかと付き合っても相手がかわいそうだ」と思ってしまうようになるのだ。

「好きだよ」と言われても信じられない。

 褒められても、何か裏があるのかと思ってしまう。

 テストで99点をとっても。親から「なぜあと一点が取れなかったの? ダメな子ねえ」と言われ続け、自己肯定感が持てなくなってしまっているのだ。

 

・人間関係がぎこちなくなる

親との関係が「条件付きの愛」だった人は、他人との関係でも苦労する。相手に嫌われないように過剰に尽くしたり、逆に距離を取りすぎたりする。

友人関係では「都合のいい人」にされやすく、恋愛では依存や束縛に走ってしまうケースも少なくない。人間関係がうまくいかないと、ますます「自分が悪い」と思い込み、負のループに陥る。

 

・自立が難しくなる

本来なら大人になる過程で「自分で決める力」が育つはずだ。

しかし毒親は進学や職業選択にまで口を出し、「あなたのため」と言いながら自由を奪う。その結果、社会に出ても「自分で決めていいのか」がわからず、常に正解を探そうとする。

仕事で指示待ちになったり、選択を避けてフリーズしてしまったりする。これがキャリア形成の大きな妨げになる。

 

・精神的な不調につながる

毒親育ちの多くは、精神的な病を抱えることが多いようだ。抑うつ、不安障害、摂食障害、依存症――毒親育ちの人はメンタル面でのリスクが高い。

親からの否定や無視は心の傷となり、ストレス耐性を下げる。大人になって壁にぶつかったとき、普通なら「まあなんとかなる」と思えるところでも「やっぱり自分はダメだ」と深みに沈んでしまう。

 

毒親自信も病んでいる可能性は高い

 毒親自身もその親から、同じように育てられた場合も少なくないようだ。

 そして毒親自身、子どもに悪いことをしていると思っていない。むしろ「良かれと思って」異常に我が子に執着していることが多い。

 この執着というのはとてもやっかいで、子どもが大人になって親と距離を置こうしても、理解できずに追いかけてくる。

 子どもにとっては狂人にストーカーされているような気分になる。しかし毒親は気がつかず「親の愛情」を楯に、どこまでも粘着質につきまとう。

 親自身、子どもへの共感性がとぼしくどこか病んでいるのだ。

 

・不利を抱えて生きるという現実

こうした要素が重なることで、毒親育ちは大人になっても不利を背負う。

就職や結婚など人生の分岐点で迷い、自己否定感でチャンスを逃す。

就職しても親が「そんなところじゃ」と否定、恋人を紹介しても文句をいう。人生のチャンスも、ことごとく潰してくる。

 当然、子どもは生きるのがつらくなってくる。すると親は「私の言う通りにしていればいいの」となる。

 

・それでも回復は可能である

もちろん、毒親育ちが一生不幸かといえば、そうではない。自分が抱えている「生きづらさ」の原因を客観的に理解することで、回復のきっかけをつかめる場合もある。

 

毒親に育てられた人は、大人になっても自己肯定感の低さ、人間関係のぎこちなさ、精神的不調、自立の難しさといった不利を抱えやすい。

だが、その苦しみの正体を知り、少しずつでも行動を変えることで、新しい生き方を切り開くことは不可能ではないと信じたい。

 

実は、50歳60歳になって、人間関係に問題を起こす人に、毒親育ちという人が少なくないようだ。

 

どうやらぼくの知る限りでは、それは金持ちも貧乏人も、学歴も職歴も関係ないらしい。子どもは親を選べないのだ。

9月1日に子どもの自殺が多い理由と、親ができること

●子どもの自殺が多い新学期時期と夏休み明け

 毎年9月1日になると、「未成年の自殺が最も多い日」として報じられることがあります。

 内閣府によると、1972年〜2013年までの42年間における18歳以下の未成年の自殺件数は合計18,048件。そのうち 9月1日 に自殺した人数が 131人 で、最多の日でした。

 次いで多いのは、4月11日(99人)、4月8日(95人)、9月2日(94人)、8月31日(92人)です。

 これは、新学期の始まりである4月と、夏休み明けの9月に自殺が集中する傾向があることを示しています

 

 では、なぜこれらの日に集中してしまうのでしょうか。そして親としてできることは何でしょうか。



●なぜ9月1日に自殺が多いのか
学校へのストレス

 夏休みの終わりに「また勉強が始まる」「課題が終わっていない」といったプレッシャーが一気にのしかかります。学業の遅れや進路への不安も大きな要因です。

 

いじめや人間関係

長期休暇でいじめから一時的に離れられても、再びその環境に戻らなければならないことが大きな絶望感につながります。

 

家庭や親子関係の問題

 小中学生では「叱責される不安」、高校生では「成績や将来への不安」が強調されます。親の期待や叱責が過度に重荷になるケースも少なくありません。

 

衝動的な自殺

 10代前半の子どもには予兆が分かりにくい「無予兆自殺」の傾向があり、周囲が気づけないまま突然命を絶つこともあります。

 

●親ができる6つのこと

1. 学校に行かなくてもいいと伝える

 「死ぬくらいなら学校を休んでいい」という人はたくさんいます。当たり前です。一度死んでしまえばもう二度と取り返しがつかないことなのですから。だからこそ命はもっとも大切なものなのです。

 そもそも子どもが死にたくなるほど追い詰められるというのは、異常なことなのです。親は子どもが百万倍前に、気がついてあげたいものです。

 しかし前述したように、子どもの自殺は予兆が分かりにくい「無予兆自殺」の傾向がありますので、気がつきにくい。思春期は反抗期の場合、対話も難しいかもしれません。

 だからこそ、普段から子どもの人格を認め、子どもに信頼される関係を築いておきたいものです。

 

2. 小さな変化に気づく

 食欲や睡眠の乱れ、急に口数が減る、身の回りを整理し始めるなどは危険のサインです。普段と違う様子に敏感になりましょう。

 

3. 無理に話させない

 子どもが話したがらないときに無理に聞き出そうとすると、かえって心を閉ざします。「話したくなったらいつでも聞くよ」と伝え、安心感を与えることが大切です。

 

4. 学校や相談窓口に頼る

 担任やスクールカウンセラー、地域の教育相談所などに早めに相談しましょう。匿名で利用できる「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)」などの公的窓口もあります。

 

5. 生きる楽しみを一緒に見つける

 ゲームや音楽、散歩や趣味など「学校以外の楽しみ」を尊重することも効果的です。小さな喜びが、子どもを支える大きな力になります。

 

6. 親自身も相談する

「子どもの命を守らなければ」というプレッシャーで親自身が追い込まれてしまうこともあります。保健センターやNPOなど、親向けの相談先も活用してください。

 

 

 9月1日に未成年の自殺が多いのは、夏休み明けの学校への不安やストレス、いじめや家庭の問題が重なり、子どもが強い絶望感に押しつぶされるからです。

 

 親にできることは、学校よりも命が大切だと伝え、子どもの変化に気づき、無理に話させず支え続けること。そして一人で抱え込まず、学校や専門機関に頼ることです。

 

「休んでもいい」「生きていてほしい」――このメッセージを繰り返し伝えることが、子どもの未来を守る力になります。

 

 

●主な相談窓口(日本国内)

 もしも子どもの様子に不安を感じたら、すぐに相談してください。匿名・無料で利用できる窓口もあります。

 

24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国共通・無料・24時間対応)

 

いのちの電話:0570-783-110(毎日10時〜22時)、0120-783-556(毎月10日 8時〜翌朝8時・フリーダイヤル)

 

チャイルドライン:0120-99-7777(16時〜21時、18歳までが対象)

 

こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(各地の専門機関につながります)

 

LINE相談(厚生労働省「生きる支援」サイトからアクセス可):チャット形式で気軽に相談可能

 

 迷ったらまず「24時間子供SOSダイヤル」に電話してください。すぐに専門の相談員につながり、支援の第一歩になります。

 

 ぼく自身も、小学生の頃から自殺を考えるような子どもでした。たぶん自己肯定感を親や学校に破壊されてしまったからかもしれません。

 子どもは親や学校だけではなく、社会全体守って育てていくものだと思います。それがいま、できにくい時代になっているように思います。

 子どもたちが自殺など考えず、未来に希望が持てる世の中になることを望んでやみません。

不登校・ひきこもり・ニートと、家庭内暴力

不登校引きこもりと、親からの虐待

 不登校・ひきこもり・ニートと、家庭内暴力(DV)や過去の虐待体験の関係は、国内外の調査から「関連が強い可能性が高い」と言われています。

 

 過去の虐待とひきこもりの直接的な関連については、2024年の臨床研究(日本)では、幼少期の虐待が現代型うつの特性を介して、ひきこもりのリスクを高めるというモデルが妥当と報告されました


 また、「学校での逆境体験(教師からの不適切対応やいじめ:学校ACE)」が成人後の社会的ひきこもりに強く関連するという分析も公表されています。
(参照:学校ACE~学校での傷つき体験が引きこもりのリスクを高める~

 

 不登校と虐待(特にネグレクト)の関係を数量的に示した国内研究もあります。

 全国の自治体が対応したネグレクト事例を分析した報告では、12歳以降では概ね50%以上、14歳では約62%が不登校とされ、家庭の機能不全や経済困窮などの要因が不登校を促進していました。※探索的研究である点には留意が必要ですが、傾向を示す資料として重要です。
(参照:子どものネグレクトと不登校の関係

 

家庭内暴力は孤立を深める

 DVとの接点については、量的な「因果」の確定までは到達していないものの、複数の公的・準公的資料が家庭内の緊張や暴力・ネグレクトが長期の社会的孤立を深める実態を指摘しています。

 OECDの日本ケーススタディ(2025年)は、支援現場からの質的証拠として、家族内の暴力・養育困難が孤立の固定化に結びつくリスクをまとめています。

 また、警察統計でも配偶者からの暴力相談は各年で高止まりしており、東京都では2024年に9,254件を受理しています。

 こうした家庭内の暴力や葛藤は、当事者・子ども双方のメンタルヘルスを損ない、不登校・ひきこもりの温床になり得ます。

 以上を踏まえると、①幼少期の虐待(家庭ACE)、②学校での逆境体験(学校ACE)、③現在進行形のDVや家庭機能の不全が、単独でも重なっても、不登校・ひきこもり・ニート状態を生みやすく、長期化させやすいことが見えてくるのです。

 

●どうすればいいの?

 不登校や引きこもり、あるいは家庭内での暴力や過去の虐待経験に直面しているとき、まず大切なのは「ひとりで抱え込まないこと」です。親自身が疲弊してしまうと対応がさらに難しくなり、子どもも安心できません。

 可能であれば学校のスクールカウンセラー、地域の教育支援センター、児童相談所NPOなどに早めに相談してほしいと思います。

 

 本人にとっても「すぐに学校や社会に戻ること」より「安心して過ごせる環境」を整えることが優先です。

 小さな生活リズムの回復(昼夜逆転を少しずつ直す、家族以外と短時間話すなど)から始めるのが有効だとされています。過去の虐待やDVの影響がある場合は、専門の心理支援や医療機関とつながることが重要です。

 

 また、親も「どうすれば立ち直らせられるか」ではなく、「一緒に安全に過ごすこと」を意識してほしいものです。

 責めたり急がせたりせず、本人の気持ちを尊重しながら関わることで、次の一歩につながります。

 社会には利用できる支援が数多くあるので、親子ともに安心して相談できる窓口を活用していくことが回復への大切な第一歩です。

 

 

不登校・ひきこもりと精神疾患

不登校やひきこもりには精神疾患が多い

 近年、日本では不登校やひきこもりが深刻な社会問題となっています。

 文部科学省によると、2022年度の不登校児童生徒は約29万人と過去最多を更新しました。内閣府の推計では15〜64歳の「ひきこもり」状態にある人は149万人に達するとされています。

 単なる一時的な休養や内向的性格の問題ではなく、その背後には精神疾患や家庭環境の影響が大きく関わっていることが明らかになっています。

 

 まず注目すべきは精神疾患の有病率です。

 一般の成人における1年間の精神疾患有病率はおおむね一桁%台とされていますが、ひきこもり状態にある人では半数前後にうつ病や不安障害、統合失調症などの診断がつくと報告されています。

 

 特に社交不安障害やうつ病は頻度が高く、加えて自閉スペクトラム症ASD)やADHDといった発達特性を抱える人も多いのが特徴です。

 不登校の場合も、不安や抑うつを自覚する割合は一般の子どもより有意に高く、完全な不登校層では重度の抑うつを訴える生徒が約2割にのぼるとの調査があります。

 

 では、なぜ精神疾患が多いのでしょうか。

 一つは「回避と不安の悪循環」です。不安やいじめ、学業不振といったストレスを避けるために学校や社会から距離をとると、短期的には楽になります。

 

 しかし回避は不安を強化し、外出や人との関わりをさらに難しくしてしまいます。その結果、気分の落ち込みや昼夜逆転といった二次的な問題が重なり、うつ状態に陥りやすくなるのです。

 

不登校・ひきこもりと親の影響

 ここで軽視できないのが親の影響です。不登校やひきこもりが長期化する背景には、家庭の雰囲気や親の対応が大きく関わります。

 

 過干渉や過保護、逆に無関心や厳しい叱責といった両極端な関わり方は、子どもの自己肯定感を下げ、不安を強めます。

 親が「学校に行かないのは甘えだ」と突き放せば、子どもはますます孤立します。

 

 一方で親自身が不安傾向を抱えていると、子どもの問題に過敏になり、安心感よりもプレッシャーを与えてしまう場合もあります。

 実際、精神保健の研究では「子どもだけでなく親のメンタルヘルス支援が必要」と繰り返し指摘されています。

 

 親自身も精神疾患にかかっている場合もあります。

 

 実際、統合失調症の遺伝率は、約60~80%

 双極性障害も、約60~80%

 ADHD](注意欠陥多動性障害)、約30~40%

 うつ病、約30~40%

 不安症(パニック障害強迫症・社交不安など)、約30~50%

 

 などなど、精神疾患は遺伝率が高い病気です。

 そういった意味でも、親子ともどものメンタルヘルスが必要な場合も少なくありません。

 

 変な話しですが、わが国では支援が必要な人ほど、支援されるのを嫌がったり、避けたりする人が少なからずいます。

 逆に「親子で支援を受けてよい」と考えることが、改善への第一歩です。精神疾患との関連を理解し、親自身もサポートを受けることで、子どもが再び学びや社会につながる道が開けていくのではないでしょうか。