ひきこもり支援団体と暴力団

斎藤環医師のつぶやき

 ひきこもり研究の第一人者でもある精神科医斉藤環さんが次のようなTwitterを書いておられました。




( https://twitter.com/pentaxxx/status/782857782408073216 より)

「ひきこもり支援が暴力団シノギになりつつある話は前に紹介したけど、実情を知るほど藁にもすがる思いの老親をターゲットにした高齢者詐欺みたいになりつつあるな。失敗しても被害者泣き寝入りで済むから良い商売。「ひきこもり必ず自立させます!」的な謳い文句は要注意。」



 私は斉藤氏のこのつぶやきを読んで「ついにヤクザがひきこもり支援に乗り込んできたか・・・」と暗い気持で思いました。


 というのも、大昔より福祉や求人案内はヤクザの仕事でもあったのです。



●ヤクザと福祉

 どういうことかといいますと、昔々、ハローワークとかいまのような求人案内雑誌などの情報がなかった時代、仕事がなくなってしまった人は、テキヤ香具師(やし)・的屋ともいう)のところに行きます。


 ああ、テキヤというのは、よくお祭りや縁日などで屋台とかが出ているでしょ。それを仕切っている人で、時代劇なんかでもテキヤの親分=ヤクザの親分といった感じて描かれています。


 仕事がなくなった人がテキヤの親分のところにいくと「じゃあ、アンタは今日からヤキソバの屋台やれや」とか「お面売りなよ」とかいって仕事を紹介してくれたのです。テキヤはお祭りだけじゃなく、露天商などの手配をしていました。


 仕事の紹介は、「手配師」や「口入れ屋」といったものもありましたが、これもマトモな職業とはみなされず、ヤクザ同様と思われていたようです。(労働者をタコ部屋に入れたり、貧しい家から娘を買って女郎に売ったりしていたためでしょう。もちろんまともな職業紹介もしている人もたくさんいましたが)


 ちなみに映画『フーテンの寅さん』は露天商、つまりテキヤです。露天商ですから、いまの反社会勢力である暴力団とは、ちょっと違いますね。だから寅さんは人と会う時にちゃんとテキヤのあいさつをします。


「お控えなすって、私、生まれも育ちも関東、葛飾柴又です。渡世上故あって、親、一家持ちません。カケダシの身もちまして姓名の儀、一々高声に発します仁義失礼さんです。姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。西に行きましても東に行きましてもとかく土地土地のおあ兄さんおあ姐さんにご厄介をかけがちたる若僧です。以後面体お見しりおかれまして、恐惶万端引き立って、よろしく、おたの申します」


この「お控えなすって」はヤクザ映画でもおなじみのあいさつで「仁義を切る」といい、いわゆるヤクザである博徒テキヤはこのあいさつをします。



 ちなみに「フーテン」は瘋癲と書きます。意味は

1.精神状態が正常でないこと。そういう人。


2.定職(というほどのもの)を持たず、ぶらぶらと暮らす人。


 いまのひきこもりやニートも、昔なら瘋癲と呼ばれていたのかも知れませんね。


 そういったわけで、昔から「定職(というほどのもの)を持たず、ぶらぶらと暮らす人」は、バクチ打ちやテキヤ、つまりヤクザの親分にお世話になることも多く、元々親和性があったと言えます。


 不良系のバクチ打ち、つまり博徒のところに行きましたし。博徒テキヤは、現在の暴力団の2大源流でもあります。



暴力団の資金源となったニセ支援『貧困ビジネス

昭和の終わりごろまでは、日雇い労働者を集めて仕事を紹介し、金をピンハネする暴力団組員は普通にいました。しかし平成になると、そういう人たちは見かけなくなり、その一方で現れてきたのが、いわゆる『貧困ビジネス』です。


 本来なら、生活弱者や、貧困に苦しむ人に手を差し伸べることを福祉や支援といいます。例えばお金に困った人に低金利でお金を貸すのは、貧困者支援といえるかも知れませんが、利用者の多くがお金に困っている人であるサラ金は決して支援とはいえません。


 貧困ビジネスとは、お金に困っている社会的弱者を狙ったもので、ネットカフェ難民などに対して、人材派遣会社で日雇い労働を紹介して不当に多額な金額をピンハネしたり、ホームレスに住所を与え、生活保護を申請し、大半の保護費を家賃や食費として取り上げるといったビジネスです。


 一見すると福祉や支援活動に似ているかも知れませんが、ニセ福祉、ニセ支援であり内容はあくどいものです。


 これらの貧困ビジネスは、まじめな支援団体がたくさんやっているにも関わらず、ヤクザがやっている貧困支援団体もNPO法人となっていたりして、まじめに同じような支援活動をしている人たちも誤解されたりもしているのです。


 ヤクザによるひきこもりの支援も、ひきこもり者本人を無理やり部屋から引きずり出し、狭い住居を与える。親からは子どもの面倒をみる多額の謝礼を受け取るというものと、子ども自身に生活保護を受けさせピンハネするという手法があるようですが、もしかしたら両方をやっているあくどいところもあるかも知れません


「それでもひきこもりは、家を出られるのだから、一歩前進でいいじゃないか」という人もいるかも知れません。


 しかし、この場合、お金が払える限りひきこもり当事者は、楽なお客さんですから、コミュニケーション能力が受けられる場が与えられるわけでもなく、職業訓練が受けられるわけでもなく、両親が定年を迎えれば、おそらく狙われるのは両親の貯金や財産、年金暮らしになれば両親の年金。亡くなってしまえば遺産が狙われることでしょう。


 これからは、ひきこもり支援団体にお願いする場合も、よく調べる必要がありますね。


 斎藤環氏がおっしゃっているように、『「ひきこもり必ず自立させます!」的な謳い文句は要注意。』なのでしょう。良心的なところほど、『必ず』とか『絶対』とは言わないものです。


 医療でもちゃんとした病院は『必ず治します』『絶対治ります』とは書かないものですが、あやしい代替医療霊感商法のようなところは、「〇〇は治ります!」なんて堂々と書いているもの。どうかお気をつけください。



 


FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)

巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

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