映画『ヤクザと憲法』に観るこの国の人権


●ヤクザには人権はない?

実はたったいま、ドキュメント映画『ヤクザと憲法』を観て来て帰ったきたばかりです。いまから20年前、暴力団対策法ができ、やがて暴力団排除条例が全国で施行されています。この法律は、暴力団員とわかっている者を雇用してはならないこと、また事業の契約、金銭の貸し借りを禁じたりしているもので、暴力団に所属している人や、取り引きをしている人を排除するものです。


細かくは、各都道府県など地方公共団体によって多少違うのですが、この映画によると、暴力団関係者であると、銀行口座を持てなかったり、銀行等の金融機関からお金が借りれなかったり、生命保険に入れなかったり、あるいは住居を借りられなかったりするそうでう。


つまり当たり前の経済活動ができず、つまりはすべての日本国民が受けられるはずの日本憲法14条


『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。』


というものが、適応されないということのようなのです。


みなさんの中には「ヤクザなんかいない方がいいんだ。だからヤクザに人権なんてあげなくていいんだ」と、お考えの方もいるかも知れません。いや、もしかしたら国民の多くが「そんなに人権が欲しければヤクザを辞めればいいんだよ」と思っているかも知れません。


もし日本が民主主義国であるとしたら、法律というのは、民衆が選んだ政治家たちが決めるものであり、この条例が全国で決まり、施行されているということは、多くの国民がそれでいいと思っているからなのかも知れません。



憲法ですら解釈でどうにでもなる国?

そもそも、日本という国は法治国家を自称していながら、法律というものをあまり重要と考えていないフシがあります。


たとえば憲法。そもそも憲法とは何か? goo辞書にはこうあります。

1 基本となるきまり。おきて。

2 国家の統治権・統治作用に関する根本原則を定める基礎法。他の法律や命令で変更することのできない国の最高法規。近代諸国では多く成文法の形をとる。
http://dictionary.goo.ne.jp/jn/70821/meaning/m0u/



さて、そこで戦後何かと物議を出している憲法9条。



第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】

1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
  国の交戦権は、これを認めない。


とありますが、戦後の長い間「自衛隊は軍隊じゃない」という解釈で、やり過ごしてきました。世界でも屈指の軍事力を持ちながら軍隊じゃないというのは、さすがにムリがあります。ちなみにクレディースイス銀行の調べによると、現在では世界4位の軍事力を保持しているそうな・・・

そして自衛隊を英語でいうと「Japan Self Defence Force 」直訳すると日本自衛軍となります。


かくのごとく 国家の統治権・統治作用に関する根本原則を定める憲法ですら【解釈しだい】でどうにでもなるのが我が国。


そして映画『ヤクザと憲法』や暴力団排除条例をみていると、日本国憲法で明記されている「基本的人権」もまた、あまり尊重されていないように思えてきます。


それともヤクザは国民ではないというのでしょうか?



●異質なものを排除しようとする日本

実はコレ、ヤクザに限ったことではありません。


例えば生活保護。生活困窮者が生活保護を申請することは、憲法で明記されている権利ですが、ネットで検索してみればわかるように、生活保護を「怠け者が得をする制度」等、生活保護バッシングが後を絶ちません。


我が国では、生活保護をもらう資格があるのに申請すらしていない人が8割もいるといいます。
(※参照:『あなたも使える生活保護』より)



さらには、窓際作戦とかいって、行政の窓口で申請を断られてしまうことも多いと聞きます。一説によると、申請に訪れた人が申請書を手に入れられる確率は3割程度で、申請に訪れた7割もの人が、窓口で追い返されてしまっているという話しもあります。
(※参照:『様々な水際作戦』より)


これらは、官民がそろって日本国憲法 第25条

1、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2、国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。


を、無視しているということではないでしょうか?


それとも、ヤクザと同様、生活困窮者は国民としての権利はないということなのでしょうか?


人間の共同体では、異質なものを排除する傾向がありますが、なるべく異質な人々とも共存するために、憲法基本的人権があり、それらを尊重するべきだと思うのですが、この国においては、憲法基本的人権を無視しても異質な人たちを排除したいのでしょうか?



不登校・ひきこもり・ニートも排除の対象か?

映画『ヤクザと憲法』の中で、部屋住みの青年が暴力団排除条例に関して「学校とかでも、ちょっと人と違う変わった人がいじめられたり、排除されるのは間違っていると思う」というようなシーンがありました。


学校などでも、ちょっと変わった子などが、クラス全員、あるいは先生などから無視されたりいじめを受けたりすることがあります。


そのシーンを観て、ふと「不登校・ひきこもり・ニートといった人たちもまた、排除されている人たちなのかもしれない・・・」と、思ったのです。


私はヤクザについて特に興味はありませんが、ただ、憲法基本的人権を無視するような過剰なことは、ちょっと違うのではないか? と感じたのです。


同時に、不登校、ひきこもりやニートの人を「非国民」という人もいます。これも違うのだと思っています。


中にはヤクザと不登校・ひきこもり・ニートを一緒にするなという人もいるかも知れません。


一緒にはしておりませんが、同じ人間であることには違いはありません。


そんなことをいろいろと考えさせてくれる映画でした。






FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)


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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

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