双極性障害について
●双極性障害とは?
双極性障害という病気があります。以前は躁うつ病と呼ばれていて、いまでも躁うつ病という名称のほうが一般の人にはイメージしやすいかも知れません。双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。
双極性障害は、海外では100人に一人がかかり、日本だと500人に一人くらいがかかる病気とされています。ただ・・・ 日本において実数はもう少し多いかも知れません。
と、いうのも『双極性障害』(加藤忠史著・ちくま新書刊)双極性障害は、うつ病、境界性パーソナリティ障害、統合失調症などと間違われやすい病気でもあるらしいのです。
また、双極性障害は境界性パーソナリティ障害と合併している場合も多いようです。
そして、近年になるまで、双極性障害は比較的軽い病と思われていて、十分な研究が進んでいなかったという現状もあるようです。
●再発率が非常に高い病気
双極性障害のやっかいなところは、再発率がとても高く、双極性障害は再発率が高く、1年間で48〜60%、5年間で81〜91%も再発するため、治ったと思っても予防治療を続ける必要があるといいます。
双極性障害は、再発を繰り返しやすい病気ですが、再発予防に有効な薬物が多数あり、これらを使うことで、かなりの程度コントロールすることができるようです。
双極性障害で病院に来る人は、最初は『うつ病かも・・・』と思ってくる場合が多いそうです。
双極性障害の『うつ状態』はうつ病のうつ状態の症状と同じらしいのですが、ただしうつ病用の薬は効きにくく、躁転(躁状態になってしまうこと)を誘発することもあるので注意が必要とのことです。
また、躁状態になると、気分が高揚し、明るく開放的になったりします。
また、おしゃべりになり一日中しゃべりまくったり、気が大きくなり金遣いが荒くなったりもします。
また怒りやすくなり、家族や周囲の人が傷つくようなことを言い続け、責め立てることもあります。
気分が高揚しているためか、躁状態になった患者さんは、「とても気分がいい。これが本当の自分」と思い、エネルギーが満ち足りている感じですので、自分ではとても病気とは思っていません。
しかし、家族や周囲の人にとって、際限なくお金を使ったり、働いている職場をやめて、急に会社をおこそうとしたり、職場で逸脱した言動などをするため、家族や周囲の人たちが振り回され、患者さんのいうことを聞かないと攻撃されたりしますので、躁状態のときが一番つらい思いをするそうです。
躁状態からうつ状態になると、患者さんは生きる意欲を無くし、とてもつらい思いをしますが、一方家族や周囲の人にとって、躁状態のような迷惑行動をしなくなるため、うつ状態になるとほっとするそうです。
ただ、躁状態による逸脱した言動や迷惑行為をしていても、本人はそれが正しいと思っていることが多く、気分もいいものですから、家族や周囲がいくら「あなたはおかし」といっても、病院に行くことを進めても、なかなか病院にはいかないとのことです。
このように、双極性障害は、立場によってつらい人が違うという病気でもあるということです。
●双極性障害とわかるまで平均8年かかる
本人が病院に行くのも、普段より気分がいい躁状態のときではなく、落ち込んでしまったうつ状態のときがほとんどのため、うつ病の診断を受けることから治療がはじまることが多いそうです。
しかし一般のうつ病用の薬が効きにくいため、うつ病と診断された患者さんが、ずっと病院に通い続け、実はうつ病ではなく、双極性障害とわかるのは、アメリカの研究によると治療をはじめて平均8年もかかるとのことです。
それだけうつ病など他の病気と間違われなどして、発見されにくい病気ということができると思います。
●まとめ
・双極性障害は再発を繰り返しやすい病気です。
・治ったと思っても再発防止のために薬を飲み続ける必要があります。
・うつ状態のときは本人が苦しみ、躁状態のときは家族や周囲の人が苦しむ病気です。
・双極性障害は、発見されにくい病気でもあります。
最後になりますが、もうひとつ患者さんや周囲の人にとって、やっかいなこの病気ですが、そのやっかいさゆえに、患者さんが自分で自分を責めてしまい自殺の危険もある病気とのことです。
躁状態になったときに行った行為をうつ状態のときに後悔して、自殺しようとしたり、気分が落ち込んだまま、躁の行動力が出てしまい自殺しようとすることもあるそうですから、注意が必要な病気だそうです。
『kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)』さんによると、双極性障害では、自殺企図が出るのが
未治療;29.2%
治療;6.4%
と、治療をするしないで大きな違いが出ているそうです。
双極性障害や統合失調症は、薬物療法が全てといって良いほど有力な治療法ですので、一時的に治ったと自分で思ったとしても、自殺予防という意味も含めて。治療を続けてほしいものです。
FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)