◆FHN放送局第70回【うつ病は心の風邪なんかじゃない! その4】

ミタニディレクターによる【うつ病心の風邪なんかじゃない! その4】です。

今回でこのシリーズが最終回となります。

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◆FHN放送局 第70回放送【うつ病心の風邪なんかじゃない! その4】



【初回配信日】 2009年12月26日


【出演】 巨椋 修(おぐら おさむ)、ディレクター・ミタニ



●解説
今回はうつ病シリーズのまとめとともに、うつ病治療の未来をお送りします。


うつ病治療の未来
体感ですが、昔のうつ病に使われる薬は、今のものよりも副作用がひどく、働くにも大きく支障が出るほどでした。
医学や薬学は日進月歩で進歩しています。こんな新聞記事が載っていました。


精神疾患>血液で判断 たんぱく質データ判定 大阪市大院
毎日新聞 - 2009年08月26日 02:34)


 大阪市大大学院医学研究科の関山敦生・客員准教授(43)=心身医学、分子病態学=が兵庫医科大と共同で、うつ病統合失調症などの精神疾患を判定できる血液中の分子を発見、血液検査に基づく判定法を確立した。
問診や行動観察が主流だった精神科診療で、客観的な数値指標を診断に取り入れることができる。
疾患の判定だけではなくストレスの強度や回復程度もわかるという。
関山准教授は27日午後、京都市立命館大学で開かれる日本心理学会で発表する。


 関山准教授によると、ストレスや感染などを受けて、生成し分泌されるたんぱく質「サイトカイン」の血中濃度データの差異を積み上げて分析。
データをパターン化することで、心身の変調やうつ病統合失調症などを判定できることが分かった。
うつ病統合失調症について3000人近くのデータから疾患の判定式を作成。
別の400人の診断に用いた結果、うつ病の正診率は95%、統合失調症は96%に達した。


 精神疾患の判定だけではなく、健常者に対するストレスの強度、疲労からの回復スピードも数値化した。
80人の男女を対象に、計算作業で精神的ストレス、エアロバイクなどで身体的ストレスを加える実験を実施。
いずれのストレスを受けたか100%判別することに成功し、ストレスの強度を数値で評価できる方法もつくり出したという。【深尾昭寛】


■この新聞記事について
これは今まで、自分が病気だ、病気でないという自己判断や、お医者さんの見立て以外に客観的数値として病気がわかるようになるということです。
また、個人のストレスに耐えられる力もわかるとの事。

ストレスも強い人、弱い人、十人十色。
しかし、世の中ではやれ「我慢が足りない」「気合いだ!」などと安易にいう人がいることも事実。
そういった人への理解を求める手助けになるかもしれません。
また、自分のストレスに耐えられる力を知ることで必要以上に自分を責めることもなく、自分を知る手助けともなるでしょう。
うつ病は甘えなどでは決してありませんが、甘えなのかと葛藤している人も数多くいます。
そんな人たちの心の負担も少しは軽くしてくれるのではないでしょうか。

この記事とは関係ありませんが、いずれは遺伝子検査を利用したオーダーメイド(テーラーメイド)医療として、はじめからその人に合った薬を処方することも可能になり、自分に合う薬をはじめから見つけることも出来るようになるでしょう。
今、まさに今、苦しんでいる人には、未来なんかではなく今何とかして欲しいんだ!!と思われるでしょうが、長期治療や再発リスクを考えても、未来は良くなっている事を、頭の片隅にでも置いて欲しいのです。


うつ病についてのまとめ
・うつかな?と思ったり、人に言われたら正しい診断を受け、もしうつ病ならうつ病を受け入れましょう。

・薬の効果は十人十色。正しい服薬と長期治療も覚悟しましょう。

うつ病は再発率の高い病気。自分を見つめなおし、予防も考えてみましょう。

そんな事を踏まえながら、うつ病と上手な付き合い方を見つけていただければ幸いです。


うつ病の診断テスト
あくまで一つの目安ですが、診断テストを載せておきます。

DSM-4-TR診断基準:大うつ病性障害(Major Depressive Disorder)

うつ病とありますが、ここでいう大とは主要な、中心となるという意味合いで使用されいます。

次の1)〜9)のうち、基本症状である1)と2)の少なくとも一つを満たすことが絶対条件。
他の症状と併せて合計5つ以上の症状に当てはまり、これらの症状がほとんど1日中、ほとんど毎日あり、2週間にわたっていること、そして1)〜9)の症状がA〜Dに当てはまっている場合に、大うつ病性障害と診断されます。

1) 抑うつ気分:気分の落ち込みを感じる。

2) 興味、喜びの著しい減退:全ての活動に対して興味や喜びを感じない。

3) 体重減少か増加、または食欲減退か増加:この1ヶ月で5%以上の体重の減少か増加がある。

4) 不眠 または睡眠過多:不眠または過眠(10時間以上)がある。

5) 精神運動静止または焦燥:何をするにも億劫で辛く感じ、仕事をするのに時間がかかるようになった。または焦燥感でイライラしたりする。

6) 易疲労感または気力の減退:やる気が出ない、すぐに疲れてしまう。

7) 無価値感または罪責感:自分を無価値な存在と感じて自信がなかったり、過度に自分を責めることが多い。

8) 思考力や集中力の減退または決断困難:考えるのに時間がかかり、決断ができなくなった。

9) 自殺念慮等:生きるのが辛く、死について考えることがよくある。

A 混合性エピソード(躁うつ)ではない。

B 著しい苦痛を感じる、または社会的・職業的な機能障害がある(非常につらい、または日常生活に支障がある。)

C アルコールや薬物による作用や身体疾患によるものではない。

D 死別反応ではない(愛する人を失った後、症状が2ヶ月以内ならば離別反応と考えられます。)


■訂正
WHOでは60%が治り、40%が治らないか再発を繰り返すと番組では発言していますが、間違えていました。大変申し訳ありません。
都立図書館の方に調べていただいたところ、WHOではそのような資料はなく、正しくは以下となり、以前に修正させていただいた資料を合わせても再発率は60%が正しい数字となります。

「世界の精神保健精神障害、行動障害への新しい理解」
 世界保健機関(WHO)編/中野善達 監訳 明石書店刊行 65ページより

最初のエピソードから回復した人の再発率は2年以内が35%、12年間では60%である。再発率は45歳以上ではもっと高くなる。
抑うつ障害によるもっとも悲観的な結果は自殺である。15〜20%のうつ病患者が自殺によってなくなっている(Goodwin&Jamison 1990)


以前から掲載させていただいていた、訂正資料。


塩江邦彦「抗うつ薬以外の薬物によるうつ病治療」(「こころの科学97」日本評論社、53ページ)より。

 「うつ病薬物療法において、1959年にわが国で初めての抗うつ薬としてイミプラミンが導入されて以降、一時は楽観的な見方もうまれていた。ところが急性期の治療に限っても、最近では抗うつ薬治療の限界を示すような報告が増えてきている。たとえば、うつ病の最初に投与された抗うつ薬への反応性は六十〜七十%と言われるが、不完全寛解も多くみられ、そのために完全寛解に至る患者は抗うつ薬療法をうけた者の二五〜四〇%にすぎないとする研究がある。また、今日では抗うつ薬治療に抵抗する難治性(治療抵抗性)うつ病の問題は軽視できない状況となっている。」


大嶋明彦「うつ状態再発の予防と早期発見」(「こころの科学」125号日本評論社、71ページ)より。

「大うつ病性障害・単一エピソード(すなわち初発)の患者の少なくとも60%が2度目のエピソードをもつことが予測される。エピソードを2回もったものが3度目のエピソードを持つ可能性は70%で、エピソードを3回もったものが4度目のエピソードをもつ可能性は90%である。」



不登校・ひきこもり・ニートを考える FHN放送局
ディレクター・ミタニ