『ルポ 子どもの貧困連鎖 』を読んで
『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』という本があります。
いま日本中を襲っている貧困問題。それも『子どもの貧困』にテーマを絞った良本です。
書いたのは共同通信の社会部、保坂 渉さんと池谷 孝司さん。
池谷孝司さんとは、ぼくが本にしたり映画にした『不登校の真実』を作っているときに取材をしていただいたことがあります。
このときはねえ。スタッフやロケ地である富山の不登校出身者や、通信制高校の先生方、精神科医の明橋大二先生や地元メディアの方々と夜遅くまでお酒を楽しんで、池谷さんと同じ部屋に泊まったのですよ。
すると、早朝4時くらいに池谷さんがそうっと起きて、部屋から出て行ったのです。
ぼくは入り口の近くに寝ていたから、ぼくを体の上をまたいて部屋がから出て行ったのですが、数時間たっても帰ってこない。で、ぼくも朝食をとろうと起きて部屋を出たら、池谷さんが新聞の記事を書いておられました。
いやあ、新聞記者さんというのは、日々ハードなお仕事をしておられるのだなあと思った次第です。
もっとも、そのときわたしは、「池谷さん、さっきぼくの体をまたいで行きましたね。ああ、また1人の男がアタシの体を通り過ぎたのね・・・」と、朝からバカなことしか言わないわたしでありました。(笑)
さて冗談はさておき、この『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』という本ですが、その内容は出版社によると
駅前のトイレで寝泊まりする女子高生、車上生活を強いられる保育園児、朝食を求めて保健室に行列する小学生……
大人たちからハンディを背負わされた子どもに今、何が起きているのか
反響を呼んだ共同通信の長期連載を単行本化
というもの。
ぼくが十数年前に不登校について取材をはじめだした頃、多くの不登校支援者と称する人たちは、子どもの貧困について深く考えていませんでした。
と、いうよりも「不登校はどんな家庭でも起こる。むしろ、中流から富裕層にこそ不登校が多い」
という人たちが多かったんです。
でもぼくが調べた限りですと。「不登校はどんな家庭でも起こる」というのは本当ですが、「中流から富裕層にこそ不登校が多い」なんていうことはなかったんですよ。
おそらく「中流から富裕層にこそ不登校が多い」と言っていた人たちの多くが不登校のフリースクール関係の方で、フリースクールって結構お金がかかるから、結局、フリースクールに通える子どもたちは、「中流から富裕層」がほとんどだったというのが、本当のところのようです。
あるいは「不登校の方がいい子が多い」とか「不登校っていうのは実はすばらしいんだ」と、一種不登校賛美をしていた一部の不登校支援者にとって、不登校児童が貧困家庭に多いというのは認めたくなかったのかも知れません。
しかし現実社会では、貧困の連鎖が大変な問題になっていて
貧困家庭に生まれる(親が企業の倒産やリストラで貧困になってしまう)
↓
どうしても、子どもの教育に回すお金がない
↓
子どもの教育に気が回らなくなってしまう
↓
就職のチャンスに恵まれない
↓
本人も貧困になってしまう
ということが現実に起こっています。
また下図のように親や世帯の収入と子どもの学力はほぼ正比例しているといっていいでしょう。
貧困層と富裕層とでは、子どもの学力に倍近い差があることがわかります。
貧困層では子どもに教育の機会を与えることが難しくなっているのです。
また、子どもが不登校になってしまった場合
子どもが不登校になる
↓
義務教育期間中は、学校の先生などがその子の様子など心配してくれるが中卒、あるいは高校中退をしたときから、文部科学省の管轄から離れ、進路相談などに積極的にのってくれる人がいなくなる
↓
ひきこもりになる
↓
社会経験を積まないまま、高齢化していく。
↓
親も高齢化し、親の年金で食べていくことになる
↓
親が亡くなると、生活保護で生きていくしかなくなる
ということが、現実に起こってきています。
そして、厚労省によると平成21年の「子どもの貧困率」(17歳以下)は 15.7%となっていて、6人に1人の子どもが貧困となっています。
さらに1人親家庭では50.8%が相対的貧困の状況!
こういう子どもたちを1人でも救うためには、やはり政治や行政の力が必要で、ちゃんとしたセーフティーネットや生活保障が必要となります。
これまで、日本政府というのは、社会保障を強化すると、なぜか低所得者がさらに貧困化するということがありまして……
なぜそんなことが起こるのかというと、社会保障のための税金を低所得者からとって、低所得者に渡すという政策だったりするからなのですが、いまの政府も同じことをやろうとしているようにしか思えなかったりしています。
この『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』にも書かれているのですが、教育を受けられない子どもや、貧困家庭のために学校をやめて働かないといけない子ども。
学校給食で1日の栄養を摂っている子どもたちが、たくさんいることをもっと知ってほしいと思います。
そして一言いいたい!
しっかりしてくれよ、日本!
と……。
FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)