凶悪犯罪者の特徴とは
07年5月、福島県会津で、17歳の高校生が母親の首を切り落し、警察に出頭するという事件が起こりました。
当時掲載された、サンケイスポーツの記事を引用しますと以下のように出ておりました。
「母親を殺しました」。福島県会津若松市の高校3年の少年(17)が15日朝、切断された人間の頭部をバッグに入れて会津若松署に自首してきた。そして少年のアパートには頭部を切断された母親(47)の遺体が…。あの「酒鬼薔薇聖斗」をも思い起こさせる衝撃的、猟奇的な少年事件。15日は母親の誕生日だった。不登校状態で精神科に通院歴があるという少年に、何があったのか。
他の報道も読んだ中で、わたしがこの事件で注目したいことは、少年は
【高校を不登校・ひきこもりであったこと】
【少年は実家近所に一人暮らしをしていたこと】
【少年が精神科に通っていたこと】
【登校刺激もせず、言い争いもなく、少年の不登校・ひきこもり以外では近所の人も“理想の家族”というほどであったということ】
つまり、長男の不登校と通院以外では、少なくとも外から見ている限り、問題がない家族であったということです。
アメリカ人の凶悪犯罪者36人を調べた元FBI捜査官ロバート・K・レスラー氏によると、凶悪犯罪者の家庭には、いくつかの共通点があるようです。
●全員が男性
●長男が多い。
●大多数が両親健在。
●父親の4分の三が、安定収入を得ており、80パーセントが“中流家庭”
●母親の半数が専業主婦
●犯人は知能の点でも優秀なものが多い。
さて、ここまでで言える事は、たったひとつ。
恵まれた、ごくごく普通の家庭である。
ただし、表向きは……
家族の裏側、実態をみると、そうでもないことがわかります。
●70パーセント近くの家庭にアルコール依存者がいた。
●半分以上の家庭に精神障害者がいた。
●半数以上の家族に犯罪歴があった。
●彼らの多くは引越しを経験しており、12歳以前に父親が家を出たり、18歳以前に自分が家を出るケースがいずれも半数近くあった。
●また父親がいる場合でも、母親が主導権を握っているケースが多く、自分がモデルとする男性像を見つけられなかったものが多い。
●彼らの42パーセントが家庭内での身体的虐待を受けており、74パーセントが心理的虐待を体験していた。
●過去に性的ストレスを受けているものが、73パーセント、13歳までに性的虐待を受けている者が43パーセントと高率である。
●彼らの約半数は、大人になってからもセックスへの嫌悪感をもち、約70パーセントが自分の性的能力に自信が持てず、56パーセントは性的不能になった経験がある。(参照;『現代殺人論』作田明著 PHP新書刊)
ロバード・K・デスラー氏のデータは、アメリカの、それも“超”や“犯罪史上”に残るような「凶悪犯罪者」を調べたもので、日本の少年犯罪には、そのまま通用するものではありませんが、それでも多いに参考になります。
わたしが不登校・ひきこもりに関して次のようなことをいいます。
「不登校やひきこもり自体は、それほど大きな問題ではない。その裏側に本当の問題が隠れていることがある」
「不登校・ひきこもりは“家庭内障害”であることが多い」
これはある種、大変な反感をかう言葉であるかも知れないのですが、わたしが取材をした限り、どうもそういった傾向はある場合が少なくないように思えます。
裏側とは、虐待や過干渉、共依存 、家庭内暴力、アルコール依存症やその他依存症、親夫婦の問題、子どもや親のアスペルガー症候群やADHDのような障害、心の病気、などなどのことです。
最初に例に挙げた、17歳の高校生が母親の首を斬り落し、警察に出頭した事件報道では、いまのところ事件の裏側は、あまり見えてきていません。
せいぜい、少年に精神病院の通院歴があったこと。
17歳で家の近くに一人暮らしをしていたことくらいですが、これらは特別めずらしいことでもありません。
ただ、これらの裏側にも何かあるのかも知れません。
もうこういう事件は起きて欲しくないなと思うと同時に、『『不登校・ひきこもり・ニート』の解決には、表面的なことばかりではなく、前述したような裏側の問題を解決するということが重要だと思う次第です。
『FHN放送局』
巨椋修(おぐらおさむ)