ミュンヒハウゼン症候群について


先日、自分の3人の乳幼児を点滴などに汚水や水道水を混入させ、結果子ども1人が死亡、2人が重症になった事件で、母親が逮捕、懲役10年の判決を受けるという事件がありました。

これは3人同時にやったわけではなく、子どもが入院などをしたのときに、それぞれ点滴などに汚水を混ぜて、子どもの具合を悪くさせ、母親は「一生懸命看護するけなげな母」「かわいそうな母親」という評価が欲しくて、我が子をわざと重病にして死なせてしまったという事件です。

報道によりますと、この母親は『「わたしも特別な看病する母として、気にかけてもらえる存在が居心地よかった」と話した。』と、あります。

この母親の場合、医師によって『代理ミュンヒハウゼン症候群』という病名がつけられました。

「代理」とは、自分以外の家族などを傷つけることで、傷つけた人の面倒をみる「けなげな人」、「かわいそう人」、「立派な人」という評価を得るためにやるといわれています。

「代理」がつかない『ミュンヒハウゼン症候群』というものもあり、これは自分が自ら何らかの病人やケガ人になることで、人から優しくしてもらったり、特別視してもらったりすることが目的で、自ら病気になったり、ケガをしたり、自傷行為をすることをいいまます。

誰でも子どもの頃、風邪など病気になったとき、母親が急に優しくなったり、あれこれと世話をしてくれるので、ちょっとうれしかったことがあるかと思うのですが、それが“病的”にまでなった状態といえるでしょう。


不登校・ひきこもり・ニート』系の中には、それほどひどくなくても『ミュンヒハウゼン症候群』の傾向がある人や、母親が『代理ミュンヒハウゼン症候群』の傾向がある人が、ある程度いると推測できます。

ある不登校の子どもを持つ母親は、我が子が学校に戻ろうとすると、それとなく「学校に行っても大した役にたたないよ」などと、妨害することもあります。

これはアルコール依存症の妻が、夫が本気でアルコール依存症を治そうとして、事実治りかかったときに、「よくがんばったわね。きょうは一杯くらいご褒美に飲みましょうか」と、お酒を出して、夫の努力を台無しにしてしまうことがあり、それを“共依存”というのですが、それと似たものでしょう。


我が子1人を殺し、2人を重症にしてしまったこの母親も、子どもの頃に、母親に甘えたくてリストカットをした経験があるといいます。

つまり『ミュンヒハウゼン症候群』の人が親になったとき、『代理ミュンヒハウゼン症候群』となり子どもを攻撃してしまうことが少なくなく、この母親はまさにその一例なのでありましょう。

このような『ミュンヒハウゼン症候群』や自傷行為には、たんに「かわいそうな自分」「特別視されたい自分」という思い以外に、「人に依存したい」「他人を支配」したいという心理や、まだ、どろどろと鬱屈した攻撃欲、そして幼児性のようなものも感じられます。

そういった人が、こういった症状から脱するためには、これらは一種のパーソナリティ(人格)障害ですから、最終的には“自分で気付く”“大人になる”という方法しかないといわれています。

あす、友人の精神科医と飲むことになっているので、ちょっとそこらへんを聞いてきますかね。


FHN放送局代表
巨椋修(おぐらおさむ)