薬物依存症の中で一番おそろしいアルコール依存症


●薬物依存症の中で一番おそろしいアルコール依存症

「薬物依存症の中で、何か一番怖いですか?」と聞かれれば、「アルコール依存症です」と答えます。覚せい剤よりも、コカインよりもアルコールが一番恐ろしい。


なぜでしょうか?


覚せい剤にしても、他の麻薬にしても、購入するのが困難です。ところが、アルコールというのは、コンビニで24時間、いつでも手に入る。自動販売機で子どもでも買える『ドラッグ』なんです。


そしてこのアルコール依存症と、『不登校・ひきこもり・ニート』や『生きづらさ』には深い関わりがあります。


不登校児を持つ親がアルコール依存症であることは少なくないんです。また、子どもが『不登校・ひきこもり・ニート』になり、その悩みから逃れるために、母親がキッチン・ドランカーになるということある。

不登校・ひきこもり・ニートの当事者や、生きづらさを抱えた人が、悩みや苦しみから逃れるために、アルコール依存症になることも少なくありません。


アルコール依存症の妻たちの共通点

アルコール依存症』は、家庭内疾病とも言われています。“共依存 ”という言葉は、アルコール依存症から生まれた言葉です。それはアメリカで、アルコール依存症の治療に関わるケースワーカー心理療法士、自助グループの支援者たちが、「アルコール依存症の妻たちには共通点がある」と、気がついたのが始まりでした。

共通点とは


アルコール依存症者の妻は、問題を起こしてばかりの夫から離れようとしない。


・自分を犠牲にしても夫を助け、世話をする。


・問題や危機が起こっている状況に身を置く事にやりがいを感じ、満足を得る。


・考え方や視野がせまく、極端な価値観を持っている。


・忍耐強さがなく、忙しく動き回ったり、先まわりして余計な心配をする。


・自分に自信がない。


アルコール依存症の妻たちの多くは、その父親もアルコール依存症者であった等々……

こういった特徴があることがわかってきたんです。


共依存アダルトチルドレン

そして、自分の事は脇へやり、アルコールに溺れる夫も世話を焼き、夫が起しつづけるトラブルの尻拭いを、けなげにやり続けます。


だらしない夫の世話をするのが、妻のアイデンティティ(自己の存在意義)になっておりますので、夫からののしられようと、暴力をふるわれようと、“けなげな妻”を演じつづけます。


そんな妻を見て、夫がもし本気でお酒を断とうとすると、妻は自分のアイデンティティが喪失するわけですから、本人も無意識のうちに、夫にお酒を飲ませるように仕向けます。


「もう一週間もお酒を我慢したんだから、お祝いに一杯だけ飲もうか?」

「むかし、デートしていたとき飲んだお酒は美味しかったよねえ」


などと、それとなく夫を誘惑したりして、お酒をやめられないように誘導します。


つまり、アルコールにだらしのない夫がいないと自己存在意義を感じられない妻と、世話を焼いてくれる妻がいないと生きて行けない夫という状態が生まれます。

これを“共依存 ”といいます。


また、こうした家庭に育った子どもは、心に傷を受け、精神的に不安定になることが知られています。

これがアダルト・チルドレンです。


そしてアルコール依存症の子どももまた、親と同じようにアルコール依存症になる確率が高いといわれており、女の子であれば、アルコール依存症の恋人や夫を持つ確率も高いといわれています。

アルコール依存症には“負の世代連鎖”があります。


アルコール依存症は死にいたる病気

アルコール依存症は、当然体にいいわけがなく、その死因は、心不全や肝臓障害によるものですが、次に多いのは自殺もしくは事故です。


アルコール依存症者は、5年後にはその3割が、10年後には約5割が死亡しているといいます。


アルコール依存症は、家庭や人間関係を破壊し、死にいたる病気ということができます。


また、自殺者にうつ病が多いことは有名ですが、うつ病以外ではアルコール依存症が最も頻度が高く、自殺者全体の15〜56%にアルコール乱用かアルコール依存がみられるといいます。
※参照;http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/110913_1/4.pdf

そしてアルコール依存症うつ病が合併する場合もとても多いのです。

また、うつ病がなかなか治らないという人の場合、お酒を飲んでいる人が大変多いともいいますので、うつ病治療をしているかたは、お酒をやめたほうが良いようです。


アルコール依存症の治療

そんなアルコール依存症の治療ですが、よくテレビドラマとかで、無理やり体をベッドに縛り付けて、体からアルコールや麻薬を抜いてしまうという、荒療治の場面が出てきますが、これはまったく効果ありません。


何年も入院していたり、刑務所に10年20年と入っていて、一滴もお酒を飲まなかったからといって、アルコール依存症が“完治”するということはないんです。


30年お酒をやめていても、ちょっと一杯飲んだら、たちまち元に戻ってしまうというのが、アルコール依存症の恐ろしいところで、それゆえ、アルコール依存症は『不治の病』と永く言われてきたほどです。


現在のところ、アルコール依存症に効く薬はなく、治すには「一生お酒を飲まない」以外にはないと言われています。

もっとも効果があるのは、アルコール依存症と闘う人たちが集まっている自助グループに参加して、同じ病を持つ仲間と一緒に、アルコールと闘うというのが、効果が高いと言われています。


さて、アルコール依存症は、『不登校・ひきこもり・ニート』に悩む人たちや『生きづらさを抱える人たち』と、共通する点が非常に多くあり、ほとんど同根に近いと思われる点もあります。


お酒は上手に利用すると楽しいものですが、逃避や依存対象になってしまうと、命を縮め、家族は崩壊し、下手をすればすべてを失ってしまうかも知れません。

お酒は楽しくいただきたいものですからね。



FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)


FHN放送局で、何か取り上げるテーマや、ご意見・ご質問などを募集しております。
もし何かあれば osaogu@yahoo.co.jp もしくはコメント欄に書き込んでいただければと思います。