ひきこもりの引き出し屋について①
わたしはどうも、以前裁判になった『長田塾』や、殺人事件になった『アイ・メンタルスクール』というような暴力的に……、あるいは強制的に人をどうにかしようという考え方って、あまり好きになれないんです。
しかし世の中には、『ひきこもり』を引き出す商売というのがあります。
俗に言う『引き出し屋』ですね。移送ビジネスともいいます。
『アイ・メンタルスクール事件』や、『長田塾裁判』などがある以前から、ひきこもりを強制的に引き出すことを代行する商売はありました。
わたしはね、『長田塾』や『アイ・メンタルスクール』といった犯罪か、犯罪スレスレのところはともかく、引き出し屋が悪いなどと思ってはいません。
『アイ・メンタルスクール』が、良くなかったのは死亡者を出したことじゃなくて、違法の逮捕監禁拘束があったこということです。
このような機関や施設で、もっと大切なのは、“人間を大切にする”ということであるなずなのですが、それを忘れてしまったということでしょう。
ときには、法律やルール以上に、“人間”というものを大切にするべきです。
人間って難しいところがあって、一方の正義は他方の悪であったりすることが多いんですね。
どっちが正しいと決めつけられないときも多い。
さてさて、今回のテーマである、引き出し屋、移送ビジネスですが、ときとして必要なこともあると思っています。
ときにはね、ひきこもり者自身が、ひきこもり中に精神的な病気を発症してしまったときなど、素人ではどうしょうもない場合があります。
『ひきこもり』は、少なからず家庭内暴力が発生し、そしてその被害者は、家族、特に母親であることが多くあります。
『引き出し屋』に依頼する人は、そのような家庭内暴力に疲弊しきった家族であることが、かなり多いようなのです。
長田塾やアイ・メンタルスクールは、それぞれ自前の収容施設があるようですが、引き出し屋といわれる移送ビジネスは、多くの場合、精神病院へ移送させることが多いようです。
それは何も、親が子を強制的に移送するばかりではありません。
子が老いた親を移送するために依頼することもあります。
兄弟が依頼することもあります。
家族が相談機関に依頼をしている間に、施設や病院に空きがないとか、相談機関をたらい回しにされている間に、家族が取り返しのない被害にあってしまうことも実際にあります。
取り返しのつかない被害……、つまり殺されてしまうとか、殺してしまうといった事態です。
「家族の愛があれば何とかなる」
という人もいるかも知れませんが、その愛が事態を深刻にする場合も少なくなかったりします。
強制的に移送される人の中には、薬物依存の人も少なくありません。
わたしの知る限り、薬物依存症の中で、もっとも危険なのは、覚せい剤や大麻よりもお酒です。
家族の中には“愛”ゆえに、ひきこもり者が求めるままアルコールを与え、ひきこもり者の暴力に会っている人もいます。
家庭内は他者からは見えないゆえに密室です。
こういったことは、相談機関にもなかなか言えないことなので、事態はどんどん深刻化していきます。
家族とはいえ、話し合いで解決でき難い場合も少なからずあります。
家庭内暴力をくり返すひきこもり者が自殺をしたとき、家族が
「正直いってほっとした」
と、思うこともあります。
できれば……
そういう最悪の事態……、自殺や家庭内殺人といった事態がある前に、なんとか解決に向けて行動していただけたらな……
と、思ったりもします。
それが、例え家族と縁を切るようなことになったとしても……
です。
『不登校・ひきこもり・ニート』の裏側には、こんな切実で悲しい現実があったりもするのです。
(つづく)
FHN放送局代表
巨椋修(おぐらおさむ)