虐待や子殺しと本能



 動物行動学研究家の竹内久美子さんがお書きになった『本当は怖い動物の子育て』という本を読んでいて、ちょっとビックリするような文章に出会いました。

 竹内さんは霊長類学者の福田史夫さんのHPの文章を引用していたのですが、そこには「子供を持った男女は、子供が小学生以下の場合は決して再婚をすべきではない」と書かれていたのです。

 この本は動物の子殺しについて書いている本なのですが、最後の方は人間の子殺しについて書いておられます。

 動物界において子どもへの子殺しや虐待、DVは日常茶飯事のように行われているらしく、それは彼らの生き残りをかけた本能らしいのです。この本は、次のように我々に問いかけます。



『「ヒト」は彼らと別物か?』・・・ と・・・



 児童虐待や先住民の研究をしているカナダのマクマスター大学の教授であるマーティン・デイリーとマーゴ・ウィルソンによると、狩猟採集生活をしているような先住民でも頻繁に赤ちゃん殺しが行われていて、


母親の場合


・父親からのサポートが得られないとき(父親と結婚していない場合や、父親に経済的能力がないときなど)

・奇形児や双子が生まれたとき(双子のときはどちらか一方は残す)

・生まれた子が上の子と接近していて、2人とも育てるのが難しい場合、新生児を殺す

・年齢が若いほど子殺しは多い


父親の場合


・母親の不倫での妊娠

・他の部族の子

・母親の前の夫の子


 などだそうです。

 まとめると、「双生児」、「未婚の母」、「早すぎる出産」、「男性の支援を得られない」、「母親が死んだ場合」、「経済的困窮」などが、赤ちゃん殺しの原因のようです。

 これは先住民の研究ですが、先進国社会、日本社会での赤ちゃん殺しにもピッタリと当てはまるようです。

 また、これはカナダでの調査ですが、ステップ・ファミリー(再婚や事実婚により、血縁のない親子関係や兄弟姉妹関係を含んだ家族形態のこと)、での虐待は実の親同士の夫婦に比べて、40倍も多いのだとか。

 アメリカでの調査では、ステップ・ファミリーの場合、そうでない家族より70倍も虐待が多いといいます。

 なぜこうも桁違いに多いかというと、この本によると


 離婚などにより、女手一つで必死に育てている女が、新しい男の登場によって豹変。急に我が子を育児放棄(ネグレクト)し始めることがあります。
 それは新しい男との繁殖を有利にし、優先したいから。
竹内久美子著『本当は怖い動物の子育て』P160〜161より引用)


 当たり前ですが、ステップ・ファミリーであろうと、仲良く平和な毎日を送っている家族が圧倒的に多いのですが、事実を淡々というとこうなります。

 またアメリカでもっとも虐待のリスクが多いのが、「マムズ・ボーイフレンド(内縁の夫・母親と一緒に暮らす母親の恋人)」だそうです。

 日本ではいま年間50人前後で一週間に一度の割合で児童が虐待によって殺されているそうですが、確かにときどき報道でみかけるものは、幼い子どもを内縁の夫や恋人が母親と一緒に虐待していたというもの。

 ちなみに殺されるのは0歳児が一番多く、年齢を重ねるほど殺される確率は低くなっていくようです。

 霊長類学者の福田史夫氏にはご自身のホームページで次のようなことを語っています。


子供を持った男女は、子供が小学生以下の場合は決して再婚をすべきではない。
自分の愛する子供が疎ましく思うようにならないためにも、、、、、、あるいは、自分の愛する子供が自分を恐がらないためにも、、、、。 

最後に、児童相談所や保育園や小学校、さらには児童福祉施設の人たちは「子殺し行動」の一つの根源的背景について学んで欲しい。
福田史夫の世界「子供虐待と子殺し」より引用

 かなりショッキングな文章ですが、福田氏によるとハヌマンラングールという猿やライオンは、ボスが新しくなるとボスはまず前のボスの赤ちゃんを皆殺しにするそうです。そうしないと、子育て中の赤ちゃんは発情せず自分の子をうんでくれない。つまり自分の遺伝子を後世に伝えられないため、前のボスの子を殺すのだそうです。


 人間にも同じような本能があるらしく、それを福田氏が警告しているのですが、人間の場合、虐待をしていると世間に知られると、自分の評判が落ちることを知っていたり、場合のよっては逮捕されるということを知っているため、虐待が抑えられているそうなのです。


 虐待の背景には、様々な原因や理由があると思いますが、その中に私たちの遺伝子に隠された本能のようなものも、あるようです。


 虐待をしてしまう親を攻撃したり非難するのは、カンタンですが、私たちは虐待の背景になる様々な事柄があることを忘れないようにした方がいいようです。







FHN放送局
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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

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