第2回心の病気を考える「うつ病の再発率と治療 」


●約半数の人が再発する

さて、前回と重なるところもありますが、今少しうつ病について書きたいと思います。

 うつ病と自殺というのは大変深い関係があります。

 うつ病というのは、脳の神経システムに異常が起きて、生きる意欲、生きる元気がなくってしまう病気です。

 生きる意欲や元気がなくなるということは、自殺の可能性がとても大きくなる病気ということ。

 うつ病はめずらしい病気ではなく、日本ではうつ病は女性なら5人に1人、男性なら10人に1人が、一生のうち一度はかかる病気と言われています。


 うつ病はやっかいな病気で、初期のうちにちゃんと治療しないととても再発率が高い病気です。

 初めてうつ病にかかった人の再発率は50パーセント。約半数の人が再発します。

 2回目の場合75パーセント。

 3回目の場合は90パーセントもの人が再発します。

 うつ病は、一度治っても再発をしやすい病気なのです。例えば、風邪をひいた人が治っても、一生のうち、もう二度と風邪をひかないと考えるほうがおかしいのと同じと思ってもいいでしょう。


●良くなったと思って薬をやめると80%が再発!

 なぜこうも再発率が高くなるかというと、患者が良くなったからと、患者の判断で、勝手に薬を止めてしまうことが多いからと言われています。

 自分で良くなったと思いすぐに服薬をやめると半年以内に80パーセントの人が再発します。

 前回も書きましたが、うつ病の薬の場合、「もう治った」と思っても半年間は同じ薬を飲み続け、それから少しずつ減薬をする必要があるのです。

 うつ病にかかった人が、半年間服薬を続けた場合の再発率は20パーセント。1年半続けた場合、わずかに4パーセントと激減することがわかっています。つまり正しく服薬を続けた場合、1年半後には96%の人が治るとされています


抗うつ薬の問題点

 ところが、このうつ病の薬、まったく問題がないわけではありません。

 うつ病というのは、生きる意欲や元気がなくなる病気であり、やる気がなくなる病気なのですから、抗うつ薬を服用していると、やる気や元気が出てくるわけです。

「それならいいじゃないか」と思われるかも知れませんが、それまで生きる元気や何もする元気がなかった人に薬が効いてきて、これまで「死にたい」と思っていた人が、実行に移してしまうことがあるのです。

 また、これまで何のやる気もなかった人が、抗うつ薬を服用することで、焦りや不安、衝動的な意識に襲われたり、不安になったりすることもあります。

 また、うつの反対の躁状態になることもあります。

 うつ病セロトニンという脳内物質が不足することで、かかってしまう病気と言われていますが、抗うつ薬を服用することで、セロトニンが増えて、心が安定するのですが、ときにこの作用が、イライラ感や不安感、攻撃的な感情となってしまうことがあるのです。

 これをアクチベーション・シンドローム(賦活症候群)といいます。

 このアクチベーション.・シンドロームは、薬を飲み始めたときや、増量・減量したときに起こりやすいといいます。

 アメリカでは「抗うつ薬は自殺のリスクがあるため使用は慎重に」という警告をした後、かえって自殺が増えてしまうことがありました。原因はハッキリとしていませんが、この警告が原因となり、薬の服用を急にやめた人が増えたからではないか? という説があります。


●子どもへの使用は慎重に

 また、1999年に承認された抗うつ薬で、レクサプロ、ジェイゾロフトサインバルタ、レメロン、リフレックスルボックスデプロメールトレドミンの8種類は、海外での臨床試験によると、子どもに対して有効性が確認できないということで、「子どもへの使用は慎重に」という指示を出しています。

 ただし、ここでも当然のことですが、親御さん等が慌てて薬をやめたり減らしたりすると、ここでも副作用で、アクチベーション・シンドロームが出てしまいますので、医師の支持に従って、充分に気をつけながら減薬をしなければいけません。

 子どもへの精神科の薬は、まだ副作用や将来的な脳への影響がよくわかっていないのが現実なのです。

 また、子どもに限らず、精神科の薬は、薬物乱用や依存症、そして多剤大量処方などの問題点があるのも事実ですので、治療を受けている人は充分に医師と相談をしながら、使用していただきたいものです。

 特に、日本では抗うつ剤向精神薬の多量多剤が問題になっていますので、気をつけてほしいものです。


●一番の治療法とは?

 うつ病において、薬物療法が基本となっていますが、他にも認知行動療法といった心理療法があります。

 また、電気ショック療法なども行われていて、効果をあげているようです。

 うつ病は、他の病気と同じく、誰もがかかる可能性のある病気です。

 人によって、風邪をひきやすい人がいたり、お腹を壊しやすい人がいるように、うつ病になりやすい人もいるようです。

 風邪やお腹を壊しやすい人が、そういった病気にかかりにくいようにするには、当然、普段から環境や生活習慣に気をつける必要があります。

 風邪を引きやすい人は、普段から暖かくして体を冷やさないようにするとか、お腹を壊しやすい人は、食べ物に気をつけたりしますよね。

 ところが、どうもうつ病になりやすい人や、その傾向にある人は、なかなか自分の行動や環境を変えようとはしないことが多いようです。

 もしかしたら、そのように自分の弱いところを認めてしまうのが“負けているように”感じているのかも知れません。

 しかし、風邪をひきやすい人が体を冷やし続けたり、お腹の弱い人が暴飲暴食を続けたりすると……、その結果はご想像の通り、むしろいまの状態より悪くなってしまうことでしょう。

 心の病気も同じなんです。

 一番の治療法は、普段からの環境や生活習慣の改善です

 胃腸の弱い人が、いくら効く胃腸薬を飲んでも、暴飲暴食をやめないと良くならないのと同じです。

 うつ病は誰でもがかかる可能性のある病気。

 もし自分にその傾向があると自覚したら、普段からの行動や環境、生活習慣や物事の考え方を改善していくのが、一番の治療法といえそうですね。


● まとめ
うつ病はとても再発率が高い病気であると自覚するべきです。
うつ病の薬には、アクチベーション・シンドロームなど副作用がありますので、使用のときは医師と相談をしながら、正しく服用しましょう。
・ 一番の治療法は、普段からの生活です。






FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)拝



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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

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