第5回 ろくでなし社会学「生活保護バッシングは国民のガス抜きに過ぎない!(前編)」


生活保護バッシングは国民のガス抜きに過ぎない!

「ナマポ」とは生活保護の略語「生保(せいほ)」の蔑称としてネットで広まった言葉です。

 2013年1月現在、厚労省の発表によると、生活保護受給者は過去最高の213万人をこえ、さらに2013年春に、ある芸能人の母親が生活保護を不正受給していたことが発覚。多くの人々が激怒しました。

 まあそれ以前から生活保護受給者へのバッシングはたくさんありましたね。

 曰く「生活保護の受給費が、年金より多いとは何ごとか!?」
 曰く「まじめに働いているのに、働かないのにお金をもらうことが納得いかない!」
 曰く「生活保護率が上がって、財政を圧迫している!」

 などなど。

 確かに、地域や状況にもよりますが、これまでマジメに働いてきた人の年金と、働かずに生活保護費をもらっている人の金額を比べた場合、生活保護受給者のほうが多いことがあるのは事実です。

 ただ、年金と生活保護とは、その主旨と目的が違うのです。

 年金は、健全な国民生活の維持及び向上を促進するもので、生活保護は、最低限度の生活を保障するとともに、その自立の助長を図ることが目的。

つまり年金をもらっている人でも生活に困窮している人は、生活保護をもらうことができます。

またパートやバイトなど最低賃金で働いている人が、生活保護だけで暮らしている人よりも、収入が低いこともあります。

しかし、そういって生活保護を攻撃している人の多くが、生活保護の実態を知っていっているとは思えません。

おそらく、かたよったマスコミやネット情報を鵜呑みにしてしまっているか、あるいは、いまある不満の矛先を「生活保護バッシング」に向けてガス抜きをしているようにも思えます。


生活保護受給者はどんな人たちか?

 2010年の被保護世帯の割合は

· 高齢者世帯  45.6%
· 傷病世帯   23.9%
· 障害者世帯  11.5%
· 母子世帯   8.5%
· その他世帯  10.5%

 となっています。

 つまり生活保護受給者の半数近くが高齢者世帯、つまりご老人なのです。

 さらに35.4%が傷病・障害世帯と、8割以上が働きたくても働けない人たちが、生活保護を受けていることがわかります。

 また、母子世帯ですが、2011年度の厚労省調査結果によると、母子世帯の平均年収は291万円。これは世帯収入なので、同居している祖父母の収入なども含まれるわけで、母親だけの就労年収は、181万円となっています。その多くが非正規雇用であり、ちょっとしたことで雇用が打ち切られ、181万円の収入も確保できなくなります。

 いま、子どもを一年間養うには、0歳児でも約50万円かかります。2人いれば100万円以上がかかります。子どもが学校に通うようになればもっとかかるでしょう。当然、食べていけませんから、いろいろな手当て等もありますが、それでも間に合わないと生活保護ということになります。

 おそらく生活保護者を「ナマポ」といって非難している人たちは、これらの実態を知らずにかたよったマスコミ情報やネット情報のみで叩いているのでしょう。

もし知っていて、お年寄りや病人、障害者、シングルマザーたちに対して、「怠け者」「俺たちの血税を使いやがって」と、攻撃しているとすれば、ぼくはその人の人格を疑います。


●働ける人が受給を受けてはいけないのか?

 また、10.5%いるとされる「その他世帯」ですが、約半数が10代以下と60代以上なのです。

 その他世帯の約半数の3分の1は働いているのですが、しかし最低賃金以下の収入しか得られていない人たちであり、中軽度の障害を持っている人も多くいるといわれています。

 例え働ける人であっても、運悪く職を失ってしまいアルバイトに就くことも困難な人もたくさんいることでしょう。そういう人たちに対して、助けようとしない人や国は、決して住みよい国とはいえません。

 働けない人はもちろんですが、運悪く職に就けない人や、生活をするのが困難になってしまった人に救済の手を差し伸べることこそ必要なことであるはずです。

 そうしないと、生活保護を圧迫することで、自殺や孤独死は増えていくことになるでしょう。

 多くの人が誤解をしているのは、高齢者や重度の障害者は別にして、生活保護とは基本的に「死ぬまで生活の面倒をみる」というものではありません。基本的には「生活に困窮している人を一時的救済するシステム」なのです。

 ただ、このシステムは戦後に生まれたもので、すでに老朽化してきていますから、見直しが必要というのも事実です。

 いえ、生活保護のみならず、多くの福祉政策や教育政策は老朽化しており、なるべく早く、抜本的な改革が必要であるといえるでしょう。


●不正受給はそれほど多いのか?

 そして、おそらくもっとも多くの人が怒っている不正受給であると思われます。

 もしかしたら、ネットなどでしきりと生活保護受給者を攻撃している人は、もしかしたら受給者のうち過半数が不正受給や怠けていて、お金をもらっていると思っているかも知れません。

 しかし、厚労省の発表によりますと、不正受給が発覚したのは生活保護全体のうち、わずかに0.4%

 もちろん中には「発覚していない不正受給がもっと多いはず!」という人もいるでしょうし、実際そういうこともあるでしょうが、これは現在の調査による結果です。

 それ以上に問題なのが、受給しないと生きていけないような人が、受給できずに苦しんでいるということでしょう。

 現在、生活保護を受けることができるにもかかわらず、利用していない人は2割程度だといわれています。つまり残りの8割もの人が受給せず、あるいはできずに苦しんでいるともいえます。

 これらを見ても、多くの人が生活保護というセーフティーネットから漏れているために、命の危機にさらされている人がたくさんいるということがわかると思います。


(後編へつづく)






FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)拝


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