第6回 ろくでなし社会学「生活保護バッシングは国民のガス抜きに過ぎない!(後編)」


●在日外国人に生活保護を受給すべきか?

「ナマポがー!」を言っている人の中には「在日外国人には生活保護費を渡す必要なし! 彼らは在日特権で不当な特権などでまともに税金を払っていない人も多いし、そもそも日本国籍じゃないんだから!」という主張をする人も多くいるようです。

 ぼくはここにちょっと引っかかりを覚えるのですよ。それは「税金を払っていないから、日本国籍ではないから、生活に困窮している人、病気や障害の人、飢えている人を見捨てていいのか……」ということ。


在日特権という法律については、また別に考えるとして、ぼくは、もし日本に住んでいる人が本当に困窮しているのであれば、国籍や税金を払っているいないにかかわらす、助けるべきであると考えています。それが、日本人としての、いえ、人の道だと思いますがいかがでしょうか?


 これは道にケガをして倒れている人に対して、それが税金を払っていない人や在日外国人だとわかれば、救急車を呼ぶなど助ける必要がないといっていることと同じこと。


もし仮に、「在日外国人には生活保護費を渡す必要なし!」というそんな人がたくさんいるとしたら、「日本人はその程度の民度しかない、冷たい国民」と、思われても仕方がないでしょう。


 在日外国人に生活保護費を渡すべきではないと思っている人の中には、生活保護を受け取っている人の多くが、在日外国人と思っている人もいるようです。

以前、次のような報道がありました。


『2010年の生活保護世帯、外国人の被保護世帯は4万世帯で過去最多 - 厚労省厚生労働省が実施した2010年の生活保護被保護者全国一斉調査の基礎調査によると、同年7月1日時点での生活保護の被保護世帯は全国で136万1149世帯で、このうち外国人の被保護世帯は4万29世帯であったことが分かった。 厚生労働省 社会・援護局保護課によると、同省が把握している限りにおいて、同年7月1日時点での外国人の被保護世帯数は過去最多となった。』
[2012/10/02]−マイナビニュースより─


 このように「外国人で生活保護をもらっている人が過去最多になった」と書かれると、すごいことのように思えますが、実際のところ、ここ十数年の間に生活保護受給者は急増しているのですが、在日外国人の生活保護受給者はこの10年間ほとんど増えていないのです。


 下の図を見てください。 日本は、あまり外国人が住んでいない国なのですが、ここ10年間の間に日本人と比較して、外国人の生活保護世帯はほとんど増えていないことがわかります。

そして、生活保護受給者全体では外国人が生活保護をもらっているのは、わずかに3%弱です。


これらを見ても「ナマポがー!」といっている人たちも「在日がー!」といっている人たちは、ちゃんとデータを集めていっているのではなく、一部メディアやネット情報を鵜呑みにしているか、ただの感情論であることがわかります。


生活保護は財政を圧迫しているのか?

 そしてよく言われることとして「生活保護費が国や地方の財政を圧迫していている」というのはどうでしょうか?

 日本の生活保護費(社会扶助費)のGDP(国民総生産)における割合は、わずかに0.5%に過ぎません。

 わずか0.5%の生活保護費を切り下げたり、出し渋ることで、この国の財政は楽になるのでしょうか?

 いま、誰しもがいつ仕事がなくなったり、貧困状態におちいってもおかしくない時代だというのに、自分たちのセーフティネットを少なくするのは何かおかしくないでしょうか?


 そして日本人は、貧困や病気、障害に苦しむ人が高齢者で仕事につけない人に対して、わずか国民総生産のうち0.5%を出せないほど心が貧しい民族になってしまったのでしょうか?


生活保護引き下げをすると国民がより困窮する

 12年12月に行われた衆議院選挙で、生活保護費10%カットをあげた自民党が大勝しました。

 はたして生活保護費を10%下げれば、国民の生活はより豊かになるのでしょうか?

 ならないんですよコレが。

 というのも、憲法25条が保障する【すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。】というのは、いわゆる生活保護の権利でもあります。


 つまりこの「最低限度の生活を営む」ための金額が、生活保護費とほぼ同額で、この「最低限度の生活を営む」ための金額は、パートさんやアルバイトさんがもらう「最低賃金」にもなるわけです。

 つまり、生活保護費が切り下げられるということは、この「最低賃金」の切り下げにも繋がらざるを得なくなるのです。


 するとどうなるか?現在、生活保護を受けていないが、最低賃金で何とか頑張っている人たちが、もはや耐え切れなくなるおそれあるということです。

 耐え切れなくなればどうなるか? その人たちは、新たに生活保護を申請するしかありません。そうしないと、ホームレスになってしまうからです。 そうすると、生活保護受給者が激増することになる可能性が大となります。


 つまり、【短絡的な生活保護費の切り下げ】は、最低賃金の切り下げに繋がり、結局、生活保護費受給者やホームレスが増え、ホームレスは長生きできず死亡するか、保護されて結局生活保護となるしかありません。


 そのため【かえって財政を逼迫する結果になる】ということになり、国民はより困窮するという結果になるおそれがあります。



●最後は自殺か刑務所か……

 また、生活保護を打ち切ったり、切り下げたりすると現実としてホームレスになったり、飢え死にの心配をしなくてはならなくなります。

 住まいを追われたり、食べ物に不自由するようになると、人は何を考えるのでしょうか?

 追い詰められ、生活保護という救済さえ、もし行政の窓際で拒否されてしまったとすれば…… ある人々は、絶望し自殺を実行してしまうことになるでしょう。 自殺をしてしまう人でもっとも多い職業は無職であり、自殺の原因で2番目に多いのが経済問題となっているのです。


 また、刑務所に再入所してしまう人の約7割が無職であるのも事実。 実際、刑務所は最後のセーフティーネットといわれていて、頼るところや頼る術がない人は、生きるために軽い犯罪を行い刑務所に入るという選択をする人もいるのです。

 では刑務所で受刑者1人を世話するためにかかる費用はいくらくらいだと思います? なんと、260万円以上かかるといわれています。

 生活保護単身者だと、仮に月14万円だとして、年間で168万円。 単純計算だと、犯罪被害者も加害者も出ないうえ、コストも安上がりとなります。

 これらのことを、考えてみれば、生活保護は日本という国を回りまわって下支えしている制度といえるかも知れません。 もしこの制度がなかったら、もっと多くの自殺者や犯罪者が溢れているかも知れないのですから。



●健康で文化的な最低限度の生活とは?

 いま生活保護はこれまでにないバッシングを受けています。

 なぜかというと、ここ数年で生活保護受給者が急増し、年間3兆7000億円という大金が生活保護費用にかかっていること。

 一部の不正受給や、生活保護受給者についての偏見を助長するようなマスコミ報道によって、いろいろと言われたりもします。

 生活保護受給者の中には、被害者感情が強くある人もいて、他人の神経を逆なでするような言い方をする人もいることでしょう。


 よく「生活保護を受けているくせに酒を飲んだり、パチンコをしたりするのは許せない」という人がいますよね。

 もしこの国の人々が、憲法25条が保障する

【すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する】

 というものに、お酒を飲んだりパチンコをしたりする自由など与えられないというのなら、それはこの国の【健康で文化的な最低限度の生活】とは、飲酒やパチンコをする自由も与えられないのが【健康で文化的な最低限度の生活】なのでしょうか。

 それは皆さんがそれぞれお考えください。



生活保護カットの効果は?

 それと、生活保護問題ですが、一つは日本の景気が良くなればまず、受給者自体が減るでしょう。

 おそらくバッシングも無くなりはしないかも知れませんが、減るとは思います。

 過去もっとも受給者が少なかったのが、バブル崩壊後とはいえ、いまにくらべると、まだまだ景気が良かった95年の88万人なのです。

 その後、99年に100万人を超え、2011年には200万人を超えました。 いかにここ十数年の景気が悪かったかがうかがえます。

  景気が悪くなると最初に犠牲になるのは、立場の弱い者です。 結局、すべては景気次第なのかも知れませんね。




 この国を良くしたいのなら、景気を良くすると同時に、苦しんでいる人たち、困っている人たちにも手を差し伸べてほしいものです。







FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)拝


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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

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