「抗うつ薬で暴力」否定できず

09年5月の時事通信社の記事に以下のようなものがありましたので、引用させていただきます。


 「抗うつ薬で暴力」否定できず=使用上注意を改訂−厚労省
2009年5月8日23時2分配信 時事通信



 抗うつ薬パキシル」など4種類の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)について、厚生労働省は8日、服用と暴力行為との因果関係を否定できないなどとする調査結果を公表した。


薬の添付文書を改訂し、注意喚起する。


 同省には1999年の販売開始から今年3月末までの間、「攻撃性」や「敵意」の副作用報告が268件寄せられた。


この中で他人への暴力に至った35件のうち、パキシルを服用した20代の男性が他人の首を刺して逮捕されたなどの計4件について、薬との因果関係が否定できないと結論付けた。


ほかの例については従来持っていた障害が原因の可能性もあるなど、因果関係は不明だとした。


 使用上の注意には「自殺企図、他害行為が報告されている」などの記載を加える。

 



ちょっとぞっとする記事です。


わたしは以前から、うつ病の人が、意外と攻撃性が高く、そのためにトラブルを起こしていることを見てきました。


その攻撃性は、実際の暴力として出る場合もあるし、暴言、陰口、いじわる、いじめ加害者、実際に他人を攻撃はしないものの、ネットなどを通じて、他者への非難中傷など、ネットでの暴力という形で現れたりします。


わたしの周囲だけでも、うつ病の人が他人の悪口をいったり、ネットなどで攻撃し、結局その仲間集団にいられなくなったり、仲間はずれになっている例が少なくないのです。


それは遊び仲間だけではなく、職場や取引先の人から「あの人はちょっと……」といわれ外される。場合によっては取引中止や解雇になるということもあります。


他の記事によりますと


 厚労省によると、報告があったのはパキシルルボックスデプロメールジェイゾロフトの4社4製品。


42件のうち「人を殺したくなった」など他人を傷つける恐れのある言動をしたり、実際に暴力をふるったりした症例が19件。残る23件も、興奮して落ち着きがなくなるなどの症状が表れたという。


因果関係は不明だが、うつ病を併発した認知症の70代の男性がパキシル服用後に妻を殺害するなど、刑事事件に発展したケースもあった。


―09年3月7日 共同通信より―


などと殺人事件に発展している場合もあります。


もともと、うつ病気分障害ともいわれ、突然気分が落ち込んだり、不安感や劣等感などのうつ状態になる精神障害です。


うつ病になると、うつ気分が続き、不眠または睡眠過多といった睡眠障害、そして強い自己否定感、罪悪感を感じ「自分など生きている価値がないんだ」「自分はダメな人間だ」と自分を責めるようになります。


行動は動きが遅くなったり、喋らないようになったりし、服を着替えるのも、部屋の掃除やお風呂に入るもおっくになり、疲れた状態になったりもします。

そうかと思うと、薬に関係なく、逆にイライラして落ち着きがなくなったりし、いつも焦燥感に苦しめられたりもする病気です。


そういった焦りやイライラが募ったとき、そのやるせない憤懣を暴力という形で、他者や家族にぶつけてしまう場合が、決して少なくないようです。



わたしは、今回問題になっている「パシキル」という抗うつ剤を飲んでいない人で、無用に攻撃的で、他者とトラブルが絶えない人を何人も知っていますが、暴力、暴言の対象が、家族や会社の同僚、遊び仲間にもおよぶため、どうしても「仲間はずれ」にされてしまう場合が少なくないようです。



医師にいわせると「これは本人がやっているんじゃないんだ。病気がやらせていると思うようにしましょう」と、アドバイスが入るのですが、暴力を受ける側になってみれば、そんな悠長なことは、いっていられません。



以前からよほどその人を知っている人以外、

その暴力、暴言、悪口が、病気のせいなのか? 薬のせいなのか?本人の性格なのかなど、判断のつけようがないのです。


また、わかっていたとしても、それに耐えること自体が、大変な苦痛になり、結局「あなたとは一緒にいられない」となってしまいます。


わたしの知っている人で、福祉に関心のある人がいて、あえてうつ病の人を部下にしたところ、その部署の空気が悪くなり、その人自身も病んでしまったということさえもあります。


現実では、周囲の人が、うつ病に対して理解していたとしても、職場にせよ、遊び仲間にせよ、決して治療機関やリハビリ施設ではありませんので、トラブルを起こす人とは一緒にやっていけないということになります。


うつ病の人は、そのことをよく理解し、病気と付き合っていかねばならないでしょう。


また、


攻撃的になる=病気のせい

暴力・暴言・いじわるをしてしまう=薬のせい


と、短絡的に考えてしまうのもどうかと思います。


薬を飲む以前から、そういった傾向があったから、病院にいったという人も多いからです。



厚生省の発表によると「薬との関係を否定できない」と述べているわけで、必ずしも「すべてに因果関係がある」とはしていないわけです。


抗うつ薬は、元気を出す薬でもありますから、もしかしたらご本人が潜在的に持っている“憎悪や敵意”が、薬の力を借りて噴出しているのかも知れません。

これは、薬学の知識のないわたしには、なんとも言えないところです。



これはもしかしたら、お酒と似ているのかも知れません。

普段、陰気で冗談もいわず不満もいわない無口な人が、お酒を飲むと、多弁になり、普段なら絶対いわない冗談やシモネタを連発し、さらに隠していた悪口や本音を喋ってしまう人がいます。

笑って済ませられているうちなら、陽気な酒でいいのですが、しつこく絡んだり、あばれたり暴言を吐くようになると、その人はお酒との付き合い方を考えた方がいいでしょう。



ともあれ、本人の性格であるにせよ、薬のせいにせよ、周囲に迷惑をかけない・自分が苦しまないというところが大前提です。



薬は良くなるために飲んでいるわけですから、薬を飲んでイライラ感が増すような場合は、医師や薬剤師さんと相談をすることをおすすめします。


また、SSRIなどは、飲み始めのころにイライラ感が増す副作用があるようですから、自分でその薬について、よく理解する必要もあるでしょう。


くれぐれも、自分の判断で薬をいきなり断ったり、増やしたりしないようにしていただきたいものです。




不登校・ひきこもり・ニートを考える FHN放送局代表』
巨椋修(おぐらおさむ)