◆FHN放送局 第67回放送【うつ病は心の風邪なんかじゃない! その1】
【初回配信日】 2009年12月02日
【出演】 巨椋 修(おぐら おさむ)、ディレクター・ミタニ
●解説
「うつ病はこころの風邪です」こんな言葉、皆さん、一度は聞いたことはありませんか?
しかし、実際、うつ病は風邪のように2〜3日休んだら元通り!というほど簡単なものではありません。
企画のきっかけは、NHKのうつ病に関する番組を見ていた人が、ネットに書き込んだひと言の書き込みでした。
「うつはこころの風邪なんかじゃない!こころのガンなんだ!!」
確かに私の経験としても、うつ病を風邪というには無理があるという実感があります。
では、なぜうつ病はこころの風邪といわれているのでしょうか?
まず一つとして、10年ひと昔といいますが、10年前は精神科への敷居がとても高く、世間に偏見と差別が今以上に渦巻いていました。
しかし、うつ病は特別な病気ではなく、誰がなってもおかしくない病気。10人に1人は生涯に一度はかかるとも言われています(*参考資料参照)。
そういった差別や偏見のある精神科への敷居を下げるために生まれたのが、うつ病はこころの風邪であるという言葉。
風邪のように誰でもなるし、治療すれば必ず治るんだよとキャンペーンがおこなわれたのです。
また、うつ病は自殺願望を持ちやすい死と隣り合わせの病気でもあります。
苦しんでいる患者さんのために、うつはこころのかぜだから必ず治るんだよと、希望を与える言葉でもあったのです。
この言葉によって、早期発見・早期治療の道が開かれたことはとても大きく、救われた人は多くいるかと思います。
しかし、うつ病はこころの風邪であるという言葉が浸透した今、逆にその言葉によって、うつ病を軽く考えてしまう人も増えてきました。
一度病院へ行ったものの、すぐに薬を飲むのをやめてしまい、また悪化しては病院へ行くことを繰り返す人、薬が効かないと自己判断で多量服薬をする人・・・・
今回はそんな「うつ病」についてお送りしたいと思います。
ポイント
・早期発見・早期治療が大切
・風邪のように再発することも考えておく
・うつ病と真剣に向き合あう
昨日、12月1日(※収録配信当時のことです)はいのちの日として、メディアでは自殺に関する特集がいくつか行われて
いました、うつ病は自殺とも密接にかかわる病気です。正しい理解がなされ、自殺が少しでも少なくなって欲しいと願ってやみません。
次回は、なぜ、うつ病が風邪というほど簡単なものではないのか、うつ病の人が飲む薬に焦点を合わせてお送りしたいと思います。
ご視聴いただければ幸いです。
*参考資料(その1)
「うつ病の10人に1人は人生で一度はなる可能性がある」について
多田幸司「新しいタイプのうつ病概説」(「こころの科学146」日本評論社、26ページ・表1)より。
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うつ病の生涯有病率(人生における有病率)4〜10%と記載されています。
厚生労働省 平成17年度患者調査報告(疾病分類編)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/05syoubyo/suiihyo18.html
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資料ではうつ病は生涯で15人に1人くらいの割合でなる、数がとても増えているというデータが示されています。
平成16〜18年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)
こころの健康についての疫学調査に関する研究
http://www.khj-h.com/pdf/soukatuhoukoku19.pdf
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こちらの資料ではうつ病を含む気分障害は100人に9人ほどの割合でなるというデータが示されています。
ファイザー製薬の調査
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_04_11.html
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ここでは8人に1人の割合というデータが示されています。
参考資料(その2)
「うつ病の6割が治り、4割は再発をするか治らない」について
WHOの統計と発言していますが、資料の日本語訳がない等、しっかりとした元データを示すことが出来ませんでした。申し訳ありません。
代わりに以下の資料を転載させていただきます。
塩江邦彦「抗うつ薬以外の薬物によるうつ病治療」(「こころの科学97」日本評論社、53ページ)より。
「うつ病の薬物療法において、1959年にわが国で初めての抗うつ薬としてイミプラミンが導入されて以降、一時は楽観的な見方もうまれていた。ところが急性期の治療に限っても、最近では抗うつ薬治療の限界を示すような報告が増えてきている。たとえば、うつ病の最初に投与された抗うつ薬への反応性は六十〜七十%と言われるが、不完全寛解も多くみられ、そのために完全寛解に至る患者は抗うつ薬療法をうけた者の二五〜四〇%にすぎないとする研究がある。また、今日では抗うつ薬治療に抵抗する難治性(治療抵抗性)うつ病の問題は軽視できない状況となっている。」
大嶋明彦「うつ状態再発の予防と早期発見」(「こころの科学」125号日本評論社、71ページ)より。
「大うつ病性障害・単一エピソード(すなわち初発)の患者の少なくとも60%が2度目のエピソードをもつことが予測される。エピソードを2回もったものが3度目のエピソードを持つ可能性は70%で、エピソードを3回もったものが4度目のエピソードをもつ可能性は90%である。」
ディレクター・ミタニ