相談事例3;風俗嬢になった元不登校少女
B子さんは、中学2年の頃から学校へ行けなくなった。
学校でいじめがあったわけではないが、ただ疎外感があった。
むしろB子さんが、トラブルの元であった。なんでもないことにキレたり、同級生をからかったりしていたという。同級生はむしろB子さんの方がいじめっ子と思っていたのかも知れない。
そのため、B子さんは嫌われべくして、嫌われたのだと自分ではいう。
家庭では、親からの暴力等はなかったが、親との間に愛情のすれ違いを感じていたらしい。
父親は無関心であり、母親は過保護・過干渉であった。
B子さんは【子どもの頃から手がかからない、いい子】であったという。
不登校やひきこもりになる人の中には、小さな子どもの頃【手のかからない、いい子】である場合が少なくない。
親から何とか好かれようと【いい子】を演じるのだという。
これは、子ども時代にあるべき親への『甘えたい』を殺し『我がまま』も殺し、自分自身も殺しているのだという。
子ども本人は、そのため大きなストレスと傷を心に持っているのだという。
そしてその傷やストレスが、思春期や大人になってから爆発するのだという。
その爆発が外へ向かえば、非行や他者暴力ということになり、親に向かえば家庭内暴力、自分に向かえば自傷行為になるという。
B子さんは母親に当たるようになる。
ささいなことで母親に暴言を吐き、物を投げ、殴りつけ、髪の毛を掴んで引きずりまわした。
リストカットを繰り返し、精神科に通院するようになる。
診断名は【境界性パーソナリティ障害】であった。
学校へ行けなくなったB子さんは、不登校を対象にしたフリースペースを利用するようになる。
ここでは何人か友だちができた。
しかし、ここでもB子さんはトラブルメーカーであったという。
多くの場合、男性関係のトラブルであった。
そのため、B子さんは、数箇所のフリースペース、スリースクールを転々としたという。
そのころのB子さん知る、ある女性が、わたしに言ったことがある。
「正直いって最低の女でした。女の子からは嫌われてましたね。男の子からは好かれてましたよ。誰とでもやらせてくれる女だって」
B子さんは、アルバイトをはじめた。
しかし、どこへ行っても長続きしなかった。
性風俗店にもいってみた。
『ファッションヘルス』といわれるお店で、実際のSEXではなく手や口をつかって男性を射精させるという性サービスを提供するお店である。
テストで、店長を相手にしたとき、あまりにも下手だったので採用されなかった。
しかし、他のお店では、なんとか採用してもらった。
風俗店でも、同僚と何度かトラブルを起こし、何軒か転々とした。
いまでもときどき、そんな自分が嫌になって、手首を切ってみたり、薬を大量に飲んでみたりする。
そして、自宅にひきこもった状態になる。
数ヶ月ひきこもったら、また風俗店に出勤する。
いまはそれを繰り返している。
両親は、娘の仕事内容を知っているが、それでも働き出した娘を喜んでいるという。
B子さんはいった。
「ときどき、自分が嫌になって、このままスゥッといなくなれればいいなと思います。あたし、これからどう生きていったらいいかわからないんです」
わたしは
「どう生きていいかなんて誰にもわからないよ。人はどう生きてもいいんじゃないかな」
「風俗嬢ってどう思います? このままでいいのかな?」
「別にいいんじゃないかな。でも偏見の多い仕事だから、世間には隠しておいた方がいいかもよ。もしも、風俗をやっていることで自分を傷つけているのなら、辞めた方がいいかもね」
わたしは、風俗店で働くことが悪いとは思わない。
元不登校やひきこもりの女性が、風俗店や援助交際、売春といった仕事につくことは、決して少なくないのだ。
『不登校・ひきこもり・ニート』業界の人は、ほとんどそのことを気がついていないのか、あるいは知っていて無視しているかわからないが、そういったことが話題になることはほとんどないように思える。
また、ある意味、若い女性にとって、入りやすい世界でもある。
風俗店で働くことが悪いとは思わないが、暴力団や、違法ドラッグに近い世界でもある。
その仕事をすることで自分が傷つくことも多く、決しておすすめはしない。
「あたしお金持ちのお嫁さんになりたいんです。女がこう考えるのってダメですか?」
「いいんじゃない。じゃあ、女を磨かなくちゃね」
と、いうとB子さんは「はい!」を明るく笑い
「巨椋さん、こんどお店に来てくださいよ。サービスしますから」
「やだよ」
と、げらげら笑ったものだ。
※わたしはカウンセラーではなく、相談を受け付けるということもありません。
またこの話しは、事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、シュチュエーション等を変えて、書いていることをご了承ください。