相談事例4 元いじめられっ子のBさん
Bさんは、小学校高学年の頃から、いじめにあっていた。
理由はよくわからない。
ただ、同級生とうまくいかなった。
中学生になったときも、いじめはおさまらなかった。
両親いは、自分がいじめられているということを言えなかった。
両親に心配をさせたくなかったし、自分自身へのプライドもあった。
中学一年のとき、学校へいけなくなり、自分の部屋にひきこもった。いや“立て篭もった”
心配した母親が、部屋に押し入ろうとすると、BさんはBB弾というモデルガンで、母親を撃った。
昼夜逆転の生活がはじまった。
活動は家族が寝静まってから、そっと起き出し、台所や冷蔵庫をあさった。
昼間、トイレに行きたくなったら、ペットボトルや洗面器ですませ、深夜にトイレに流した。
中学3年のとき、父親が話したいといってきた。
それに応じると、父親はドライブに行こうと車に乗せた。
ひさしぶりの外出であった。
ひさしぶりのドライブ……、と、Bさんは思っていたという。
行き先は、不登校やひきこもりを預かる施設であった。
父親はBさんを、施設の残して去っていった。
Bさんは、親から捨てられたと思った。
わたしはBさんの両親を責めるつもりはない。
Bさんは言わないが、相当な家庭内暴力があったかも知れず、家庭内暴力がなかったとしても、親は親なりに悩んだ末、そのような行動をしたと思われるからだ。
施設での生活がはじまった。
これまでと違い、早朝に起され作業をする。
反抗すると体罰が待っていた。
その施設でもいじめがあった。
どうしてもなじめなかった。
自分を見捨てた親への殺意が沸いた。
しかし、頼る人は親しかいなかった。
Bさんは親に連絡して、なんとかして家に戻してくれと泣いてたのんだ。
改心して学校に行くならという条件で、Bさんは家に戻ることが許された。
Bさんは約2年ぶりに中学校に出席した。
異空間であった。
朝になると、ただ学校へ行き、授業にはまったくついていけず、ただ座っているだけであった。
そして放課後になると、家に帰る。
家に帰ると、そのまま部屋に閉じこもった。
ただそれだけの毎日であった。
友だちもできなかった。
魂をどこかに置き忘れたようであったという。
高校受験には失敗したが、定時制に受かった。
しかし、やはり出席を続けることはできなかった。
また部屋にひきこもるようになった。
しかしまた、施設に送られるのは、どうしてもいやだった。
勇気を出して、自分にできそうな仕事を探した。
コンビニの店員、肉体労働などを転々とした。
18歳のときに、不登校児童生徒のための『居場所』というのを人から聞いていってみた。
いくと、自分と似たような境遇の人が何人かおり、少しだが話しもできるようになった。
その場所は、週に1回だけ開かれるのだが、そこがBさんの居場所になった。
友だちもできた。
他の場所にも、同じような『居場所』があると聞いて、友だちの紹介で足を運ぶようになった。
他県の『居場所』にもいった。
アルバイトで貯めたお金で、安アパートで一人暮らしをはじめた。
自由になったと思った。
就職をしたいと思ったが、中卒ではなかなか採用してくれる会社がなかった。
アルバイトを転々とするフリーターになった。
一人暮らしをするようになると、これまでほとんど口を聞かなかった両親とも、少しずつ話しができるようになった。
まだ、完全に打ち解けたわけではないが、お金が少し貯まったときなど、両親にちょっとしたプレゼントをすることもある。
両親に対して、許しきったわけではなかったが、憎悪は少しずつおさまってきているようだ。
でも、ときどき不意に殺意が沸いてくることもあるという。
Bさんは、いま28歳になる。相変わらず、不登校やひきこもりのための『居場所』に通っている。
人とはいまだにうまくやっていくことができない。
KY(空気が読めない)と、からかわれることも多い。
それでも、まあなんとかやっていこうと思っているという。
いまの目標は、できれば……
アルバイトではなく、正社員として採用されること
(ただし、それは最近、あきらめつつある)
そして彼女を見つけることである。
彼はまだ、女性と付き合ったことがないのだ。
「巨椋さん、どうしたら彼女ができるんですかねえ?」
と、聞いてくるので、
「とりあえず、週に二回は風呂に入ること! 1日1回は歯を磨くこと! 下着もこまめに着替えて、服装も垢じみたものより、安くても清潔なものに変えるといいと思うよ」
と、あまり清潔でない服装をチェックして
「あとは笑顔。人と話すときは、暗い顔でいるより、よく笑っている方が好感がもたれるもんですよ」
と、アドバイス。
そして、「なるべくいろいろな女の子と話しをするといいですね」と……
すると
「どうすれば、いろいろな女の子と知り合えるんですかね?」
と、聞いてくる。
「そんなことは、こっちが聞きたいことです。ほとんどの男女は、その出会いを求めて悩んだり、右往左往しているんだから」
と、いうしかなかった。
Bさん、こんど女の子と知り合ったら、その子の女友だちでいいから、わたしにも紹介してね。(笑)
※この話しは事実をもとにしておりますが、ご本人のプライバシー保護のため、多少シュチュエーションを代えておりますことをご了承ください。
また、わたしは取材者であり、相談等に応じることはできませんことも合わせてご了承ください。