発達障害の生きづらさ
(私、おぐらおさむが描いた漫画『まり先生の心のお薬研究室』ぜひお読みください)
毎日新聞に次のような記事が出ていました。
●発達障害は生きづらい?
全文を引用すると長くなるので、(以下略)としたところを要約します。
発達障害の診断を受けた人のうち、
・うつ病と診断された人は45.5%いた。
・社交不安症やパニック症などは24.8%いた。
・自律神経失調症は24.7%いた。
・学校でいじめられた経験がある人は71.8%いた
・職場でのいじめ経験は45.4%いた。
・親や周囲からの虐待されたことのある人は33%いた。
・半年以上の引きこもりは27.4%。
・年間30日以上の不登校は23.2%・・・
ちょっとすごくないですかこの数字。
発達障害というのは、
先天的な脳機能障害が原因とされる。
対人関係が苦手でこだわりが強く、感覚過敏(鈍麻)がある「自閉スペクトラム症」
不注意や衝動的な行動が目立つ「注意欠如・多動症」▽読み書きや計算など特定の学習に著しい困難がある「限局性学習症」――などの総称。
それぞれの特性が重複することもある。
なんだそうです。
このアンケート調査は、毎日新聞が障害者支援団体に協力してもらい、発達障害と診断受けた人862人から回答を受けたものだそうですから、病院で診察を受け、さらに支援団体ともつながっている人たちなわけで、もしかしたらですが、発達障害の中でも、重篤な人が多かったのかも知れません。
精神疾患の人やいじめを受けた人があきらかに多いのです。
昭和大付属烏山病院(東京都世田谷区)の岩波明医師によると
「うつや統合失調症などの治療を続けても改善しない人の背景に発達障害がある、という事例は一般的に認識されていない。適切な治療を進めるためにも、併存症が多い実態を知ることが重要だ」
とのこと。
●人間関係でつまづきがちな人は発達障害を疑ってもいいかも
発達障害に限らず、不登校やひきこもり、ニート系の人、あるいは普段まじめで明るい人であっても、実は大きなストレスを抱えていたりする人は多いと思うんです。
その原因のほとんどが『人間関係』といわれています。
人間関係やコミュニケーションでつまづきがちな人は発達障害を疑ってみてもいいのかも知れません。
自分や家族が発達障害かも・・・ と思ったら、専門医やあるいは行政の無料相談サービスもありますので、まずは相談してみてはいかがでしょうか?
参考までに国立障害者リハビリテーションセンター 「発達障害情報・支援センター」のリンクを貼り付けておきます。
国立障害者リハビリテーションセンター 「発達障害情報・支援センター」
児童虐待は本当に増えているのか?
●虐待相談・対応件数は増えているが、虐待死は減っている
本日の『時事通信ドットコムニュース』に以下の記事が載っていました。
児童虐待被害、最多1394人=昨年、緊急保護も大幅増-警察庁
児童虐待事件の摘発が昨年1年間に1380件あり、被害に遭った18歳未満の子どもの数は1394人だったことが14日、警察庁のまとめで分かった。いずれも過去最多を更新した。
これだけ読むと、いまの親はなんてひどいんだとか、ひどい時代だとか思うかも知れませんね。
しかし記事にはこうも書かれています。
被害者数は前年比226人増の1394人。死亡したのは同22人減の36人で、全体に占める割合は2.6%と、これまでで最も低かった。
児童虐待被害者数は増えているけど、殺された子どもはこれまでてもっとも低かった?
児童虐待最大の悲劇は、被害者児童の死亡だと思うのですが、それがもっとも低かったとはどういうことでしょうか?
2014年の名古屋大学大学院教育発達科学研究科 内田良准教授のグラフには次のようなものがあります。
『「虐待増加」「過去最悪」の報道は壮大な嘘である』
『虐待、体罰、いじめ… 子どもに降りかかる暴力や危害に対して、これほどまでに敏感な時代はない。子どもの人権を尊重しようと、不断の努力を怠らない社会の到来である。虐待防止活動がこの20年余りの間に驚く勢いで拡大し、悲願の児童虐待防止法も制定・施行(2000年、その後複数回にわたって改正)され、また養育者を対象とする子育て支援のサービスも急速に普及した。これほどまでに子どもを大切にする社会において、それでもなお「過去最悪」の事態が訪れているとは、いかにもおかしな話ではないだろうか。』
『「過去最悪」ではなく「過去最良」!』
(YAHOOJapanニュース「児童虐待7万件超 過去最悪」のウソ――減少する虐待死、煽られる危機感」より引用)
とまで書いています。
確かに虐待の相談や対応件数は年々増えていますが、児童虐待の究極ともいえる虐待死や無理心中は、減っているのが事実のようです。
●虐待の実数は見えないが・・・
実際のところ、児童虐待の実数というのはわかりません。すべての虐待が通報されているわけではなく、対応されているわけでもない。
むしろ児童虐待というのは、家庭内という密室で行われているわけで、加害者の親も被害者の親も、外部にバレないようにするのが通常。
ですから、実数は相談件数や対応件数の何十倍、何百倍もあると考えていいのでしょう。
それでも私は、内田良准教授と同様、この20年ほどで児童虐待は急速に減っているのではないかと想像しています。
上の図は『少年犯罪データベースドア』からの引用ですが、70年代に比べると殺される子どもは年々減っているのがわかります。
たとえば昭和の時代、「しつけ」との名目で現在なら虐待とされることが堂々と行われていました。
そのため子どもが死亡したとしても、親はせいぜい傷害致死、場合によっては罪に問われないということも当たり前のようにありました。
育てていけないために「間引き」、つまり生まれたばかりの赤ちゃんを殺してしまう場合、昭和初期には普通にやっていたようで、現在でも「殺人罪」なのですが、諸事情から情状酌量となることが多かったのです。
ところがここ20年ほどの間で、虐待はもとより体罰もよくないという考えが急速に広まります。
マスコミというのは、事件を報道するのが仕事ですので、虐待のデータが増えていることのみを強調しがちですが、親による子殺しが確実に減っていることから、おそらく児童虐待の相談件数や対応件数は増えていても、実数は減っているのではと、私は考えています。
児童虐待の相談件数、対応件数をゼロにするのは簡単です。相談を禁止し、対応しなければよろしい。
つまり、年々児童虐待の相談件数、対応件数が増えているのは、いままで隠れていた虐待が暴かれているということで、むしろいいことだと思うのです。
むしろまだまだ少ない。もっともっと増えていいんじゃないかと。
おぐらおさむ(巨椋修)
心の薬の減らし方
この前、『まり先生の心のお薬研究室』第4話と第5話をリイドカフェというネットマガジンに掲載していただきました。
4話5話のテーマは心の薬の減らし方。題して『心のお薬を減らしたいんです』
興味のある方は無料で読めますからぜひ!
心のお薬、つまり精神科のお薬を減らしたい。できたらやめたいと思っている人も多いかと思います。でも・・・
(リイドカフェ『まり先生の心のお薬研究室』より引用)
と、まり先生が言っているように決して自分の判断で減らしたりやめたりしないこと!
例えば、統合失調症という病気があります。この患者さんがお薬を飲むのをやめると
統合失調症で抗精神病薬を飲んでいる場合と飲んでいない場合の2つに分けると、1年後の再発率は「服薬している」が30%、「服薬していない」が70%になるというデータがあります。これはあくまで1年後で、2年3年と薬を飲まずに過ごしていると、再発率は残念ながら100%に近づいていきます。
(新宿区後援・12月新宿フレンズ講演会『 統合失調症の再発を防止する』より引用)
そして再発期間が長かったりすると、脳が小さくなるとも言われています。
精神疾患は、脳の病気です。心のお薬を自己判断で急にやめると、脳内のバランスが急に崩れ、離脱症状がでてしまい、かえって調子が悪くなってしまいがち。
たとえば、うつ病の薬の場合だともう治ったと思っても最低一年は坑うつ薬を飲み続けることで再発を予防し、それから時間をかけて少しずつ薬を減らしていきます。
(リイドカフェ『まり先生の心のお薬研究室』より引用)
『まり先生の心のお薬研究室』第5話にも描いたのですが、実は精神科の薬というのは1950年代までちゃんとしたものはありませんでした。
そのため患者さんは座敷牢に閉じ込められたり、精神病院に強制入院をさせられたりしていたという悲しい記録があります。
(リイドカフェ『まり先生の心のお薬研究室』より引用)
しかし50年代から多くの研究者が、いろいろな薬を開発。多くの心の病の人も社会にでて働けるようになったのです。
くわしくはリイドカフェ『まり先生の心のお薬研究室』をお読みください。
では失礼いたします。
おぐらおさむ拝
精神科のお薬についての漫画を描きました
●心の薬の漫画を描きました
精神科の薬というと、他の薬以上に偏見が強いものです。
中には本人が治療を望んでいるのに、偏見のためにご家族が治療に反対してしまい、どんどん悪化してしまう場合もあるといいます。
あまりに偏見や間違いが多いので、ぼくは精神科のお薬についての漫画『まり先生の心のお薬研究室』を描いてみました。無料で読めますのでぜひ!
●精神科への誹謗中傷は本当か?
精神科の薬や精神科医療に対する、非難・中傷がごまんと出てきます。どんなものがあるかというと
>>
・精神科の薬は麻薬と一緒で一生やめられない
・精神科の薬は精神科医が儲けるために大量処方をしている
・精神科の薬では心の病気は治せない
<<
などなど数え上げればキリがないほど。
まあ、答えを言っちゃうと、統合失調症や双極性障害の薬は、内科でいうところの糖尿病や痛風といった慢性疾患と同じように、一生飲み続けないと再発し悪化するといわれています。
うつ病の場合、初診患者の回復率は、
>>
・1カ月以内が20~30%。
・1~3カ月以内が50%。
・1年半でも回復しない人が15%。
だそうで、治療してうまくいけば3カ月程度で社会復帰できる場合がほとんどなんかとか。
ただ、うつ病は再発率がとても高いので、回復したと本人や医師が判断しても、数カ月半年と、長く薬を飲み続けるのが大切で、治ったと判断されても医師から「しばらく薬を飲み続けましょう」と、言われるのが誤解の原因のひとつかも知れません。
つまりうつ病に関しては、時間はかかるけどやがて薬は飲まなくてもよくなるということですね。
さらに、精神科医が儲けるために薬を大量に出しているというのも・・・ ちょっと考えてみてください。昔と違って、いまほとんどのクリニックでは、クリニックで薬を買うのではなく、別の調剤薬局で購入するわけですから、医師が儲かるわけじゃないんです。
その調剤薬局だって、厚労省からの厳しい監視があって、不当な値段をつけられるわけもなく。
精神医学に不信を持つ人の中には
「だから厚労省と精神科医と薬局や製薬会社がつるんで、患者を作り出して大儲けしているんだ!」
なんていう人もいます。
どんな陰謀論やねん(笑)!
現実では、厚労省は増え続ける医療費を何とか減らそうとしているわけで、そのためみなさんが病院にいって薬をもらうとき、高い新薬ではなく安いジェネリック医薬品を勧められるはず。
儲けようと思えば、高い新薬を勧めるはずなんですけどね(笑)。
一方、製薬会社も新薬開発に十数年かかり、さらにその開発費はなんと200~300億円もかかってるんです。
(参照:新薬はどうやって生まれるか|製薬協が考えるくすり|日本製薬工業協会のサイトより)
研究開発費が2~3億でも、20~30億でもなく、200~300億円ってちょっとビックリですね。
そして【・精神科の薬では心の病気は治せない】とうのはある意味本当です。
●精神科の薬では心の病気は治せない?
【・精神科の薬では心の病気は治せない】というのは、精神科のお薬に限らずあらゆる薬について言えることなんです。
例えば水虫という病気がありますよね。驚くべきことになんと5人に1人が水虫だそうで、かなりの人が毎日塗り薬を足に塗っているそうなんですね。
ところが水虫菌というのはしつこくて、なかなか治らない。
では水虫は治らないのかというと、ちゃんと治療を続けていくと治る病気なんです。
でも、薬だけではダメで、毎日ちゃんと足を丁寧に洗って、いつも清潔を心掛けていないと、薬だけでは治らない。
精神科のお薬も、内科のお薬も同じで、毎日の生活を改善しないと、薬だけで直そうというのはちょっと無理なんですよ。
だから、どんな病気でも薬+生活改善をしないと治るものも治らない。
当たり前の話しですね(笑)。
ということで、心の薬について描いた漫画『まり先生の心のお薬研究室』ぜひ読んでくださいね。
不登校過去最多のニュースを読んで
次のような報道がありました。
同性愛者はなぜ差別されるのかを調べてみた。
同性愛者はなぜ差別されるのかを調べてみた。
まず生物学的に差別の理由はない。同性愛は石器時代からあり、動物の同性愛は多い。キリンの9割のカップルは雄同士だ。
サル、ウシ、ゾウなど多くの動物に同性愛は見られる。
子孫を残さないということもない。
同性愛者でも異性と結婚したりSEXをして子どもを作る場合は多い。むしろ昔はそれが普通であった。つまり社会的に不都合はない。
また養子を迎えるカップルも少なくないという。
また子孫を残さず、養子を迎えないからといって彼らが攻撃されるなどということもなかった。太古より異性間でも子どもを作らない・作れないカップルは普通にいたからだ。
太古の同性愛者は、差別を受けることも排除されることもなく、他の群れの人間と一緒に狩りに行き、食べ物を探したことであろう。
人間の群れにおいて、狩りに行けなくなったり、子どもを作れなくなった高齢者には役目があった。他人の子どもの世話をしたり、他の人たちが出かけた後の留守を守ったりすることだ。
よって排除されることはない。
また同性愛は、戦前以前の日本、昔のイスラム社会、古代中国や古代ギリシャでも普通のことだった。
でななぜ現在、同性愛者やLGBTはバッシングを受けるのか?
一つは社会的教育であろう。
どうも日本においては、戦後のアメリカ式民主教育から同性愛=性的異常というイメージができたようなのだ。
元来キリスト教は、同性愛に厳しい。聖書に同性愛は忌むべきものと書かれているからだ。ただし近年には同性愛に理解ある教会も増えている。
ちなみに日本では欧米の批判を怖れた明治政府が明治5年に「鶏姦(けいかん)罪」(アナルセックスのこと。つまり男性同性愛)を発布したが、明治13年にこの罪は消滅している。
理由はあまりにも同性愛が当たり前でやめる人などいなかったから。日本において大昔から、衆道(男性同性愛)はしごく当たり前に行われていたのだ。
そして太平洋戦争後、日本人はアメリカに洗脳支配され思想まで替えられたため、その後同性愛=ヘンタイ、忌むべき差別の対象となったようなのだ。
それを牽引したのはマスコミや、「日本はダメな国」言い続けた進歩的知識人たちだろう。
彼らはこれまでの、つまり戦前日本を全否定し大マジメに「日本は遅れた国」と言い続けた。
ちなみにアメリカは、日本と違って戦後急速に同性愛等を認める方向に向かっている。
それともう一つ。ヒトは自分たちの仲間ではないと認識したとき強烈は差別意識が生まれる。
これもその人が生まれ育った社会的教育の結果なのだが、同性愛をバッシングしているヒトは、「彼らは我々の仲間ではない。=バッシングしてもいいのだ」と、考えているためらしい。
我々は、そろそろそういう思想から離れてもいいのではないだろうか?
参考:動物の同性愛に遺伝的な利点、仲間の繁殖力が強化されることが判明(スウェーデン研究)
本当に向精神薬で自殺者が激増したのか?
●減っている自殺者と増えている精神疾患患者
1990年代末、日本は急激に自殺が増えました、長く年間3万人以上の自殺者が出てしまっており、先進国でもトップクラスの自殺大国というありがたくない異名が付けられたくらいです。
その原因の一つとされたのが、1990年末に売り出されたSSRIと言われる当時新しい抗うつ薬でした。
このグラフを見ると、いかにも・・・ という感じがしますよね。
しかし『全日本民医連』の記事にはこうも書かれています。
警鐘事例であげた「自殺念慮」は、プラセボと有意差がないことを理由に添付文書に副作用として記載されていません(「注意」事項として記載)。
(2016年5月26日【新連載】10.抗うつ薬の注意すべき副作用)
プラセボとは別名プラシーボともいわれる偽薬のことで、薬を作るとき、本当に効くのかどうかを、まったく薬効がない偽物の薬と効果を比べるのです。
その一方、同じ記事の中に
パロキセチンの副作用はこれまでも多く報告されています。主なものは精神神経系、消化器系の副作用です。また自殺念虜、自殺企図のリスクが増加するという報告もあり、あらためて注意を喚起します。自殺念虜、自殺企図のリスクは24歳以下の若年者が高く、特に注意が必要です。
ともあります。はたしてどちらなのか、よくわからないですね。ただアクチベーション症候群といって、不安になったり、怒りっぽくなたり、あるいは躁状態になったりすることは、SSRIの飲み始めに起こることがあるそうです。
うつ病は脳内のセロトニンという物質が少なくなって起こる病気と言われており、SSRIはセロトニンを増やす効果があるそうなのですが、飲み始めの頃、脳内のセロトニンが不安定に上がってしまい、気分も上がったり不安定になることがあるというのです。
●自殺が減っているのに精神疾患の患者は増えているとは?
ちょっとまって。実はここ数年、日本の自殺率、自殺人口は減っているのも事実。
もし自殺とSSRIや向精神薬とが、相関関係あるとすれば、自殺が減るのと同じように精神疾患の患者が減っているはず・・・
ふむ? どうやら精神疾患の患者は増え続けています。
ほとんどの患者は向精神薬を処方されるでしょうから、どうやら「SSRIや向精神薬の処方が増えると自殺が増える」と、短絡的には言えません。
●抗うつ薬の処方が増えると自殺が減るという報告も
『MSDマニュアル 家庭版』によると
抗うつ薬と自殺のリスク
自殺企図のリスクは、抗うつ薬治療を開始する前の月に最大となり、抗うつ薬の使用を開始してからは、それまでと比べて自殺による死亡リスクが低くなります。ただし、抗うつ薬を使用すると、小児、青年、若年者では自殺念慮や自殺行動の頻度が若干高まります(自殺既遂の頻度は高まりません)。このため、小児や青年の親に注意を促す必要があり、小児や青年については不安、興奮、不穏(落ち着かなくなる)、易怒性、怒りの増大、または軽躁病(患者に活力が満ち、元気になるが、しばしばすぐに苛立ち、気が散り、興奮する状態)への移行などの副作用が生じていないか、特に薬剤の服用開始後の数週間は注意深く監視する必要があります。抗うつ薬を服用すると自殺のリスクが高まる可能性があるという公衆衛生上の警告が出されたことから、小児や若年者に対して抗うつ薬が処方される頻度が約30%少なくなりました。しかし、これと同じ時期に、若年者の自殺率は一時的に14%増加しました。したがって、うつ病の薬物療法を控えさせるこの警告は、結果的に自殺による死亡者数の減少ではなく、逆に増加につながってしまった可能性があります。
(引用:『抗うつ薬と自殺のリスク』より)
こちらには
「抗うつ薬の使用を開始してからは、それまでと比べて自殺による死亡リスクが低くなります。」
「抗うつ薬を服用すると自殺のリスクが高まる可能性があるという公衆衛生上の警告が出されたことから、小児や若年者に対して抗うつ薬が処方される頻度が約30%少なくなりました。しかし、これと同じ時期に、若年者の自殺率は一時的に14%増加しました。」
と、あり、むしろ抗うつ薬が自殺予防に有効であると書いています。
また、『日本うつ病学会』の野村 総一郎理事長によると
「米国食品医薬品局(FDA)は、この現象はすべての抗うつ薬に共通する可能性が高いとして、抗うつ薬を未成年うつ病患者に投与する際にはリスクとベネフィットを評価することを警告(Black Box Warning)している。その後の解析データに基づき、2007 年 5 月に 18〜24 歳の若年成人において、すべての抗うつ薬が自殺のリスクを増加させることを追加した。」
(引用:『抗うつ薬で自殺が増加するか? 』)
と、米国の情報を書いたあと
「一方、抗うつ薬治療によりうつ病患者の自殺死亡・企図が増えるとする見解には否定的な研究報告も少なくない。経年的にみると、新規抗うつ薬の処方数と自殺死亡率との間には負の相関がみられるとする報告が欧州(Isaacson, 2000)および米国(Grunebaum ら, 2004)で行われている。すなわち、抗うつ薬の処方数の増加に伴い、自殺者数が減少しているのである。あるいは自殺企図は、抗うつ薬療法の導入直前に最も多く、導入後は徐々に減少するという 65,103 名のうつ病患者を対象とした報告もある(Simon ら, 2006)。」
と、抗うつ薬を飲むことで自殺が減少しているデータがあることも報告しています。
ここも「抗うつ薬療法の導入直前に最も多く、導入後は徐々に減少するという 65,103 名のうつ病患者を対象とした報告もある」というのは、前述したアクチベーション症候群のせいであると考えられます。
●90年代末の自殺激増は抗うつ薬とは関係ない?
さて、ここでもう一度上のグラフを見てみましょう。
97年から98年の一年で自殺が激増していることがわかります。
ではSSRIをはじめとする向精神薬が売れ出すのはいつでしょう?
98年から99年にやや売れ出し、その後はどんどんと市場規模を伸ばしています。
日本で最初にSSRIが売り出されたのは1999年5月。
『うつは心の風邪』キャンペーンで製薬会社が大々的にSSRIを売り出したのが、1999年。
それなのに、97年から98年の一年で自殺が激増している。
「SSRIや向精神薬の処方が増えると自殺が増える」としたら、なぜSSRIの発売前、向精神薬の売り上げが伸びる前に、自殺が急増していたのかという謎が残ります。
SSRIや向精神薬が自殺とまったく関係ないとはいいませんが、どうも釈然としません。
●自殺激増の原因は97年に起こったあることではないか?
自殺と景気は正比例するといいます。
日本では91年にバブル経済が崩壊し、そのあと現在に至るまで回復しておりません。
バブルの頃は景気が良かったせいか、自殺率は大変低くなっています。
しかしバブルが崩壊し、日本が立ち直れていないいない時期に、日本政府は消費増税を行います。
それから急激にうつ病はじめ精神疾患を病む人が増え、さらに自殺が激増します。
つまり不況→消費増税→うつ病が増える→自殺急増となったのかも知れません。
さて、結論としては、向精神薬の売り上げが増えると自殺が増えるというより、景気が悪くなり、社会に余裕がなくなり、それで精神を病む人が増え自殺が増えたということなのでしょう。
実は不登校やひきこもりも、90年代末から急速に増えたのです。
1日も早く景気が回復し、余裕のある暮らしになってほしいものです。
FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)拝
わたし(巨椋修(おぐらおさむ))が監督した映画『不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか? 』DVDになりました。
精神科医や不登校に携わる皆さんにインタビューをしており、問題解決のヒントになれば幸いです。
『TSUTAYA』のドキュメンタリーコーナーにも置かれておりますのでご覧になってください。不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか? [DVD]
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●巨椋修(おぐらおさむ)の著書
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- 作者: 巨椋修
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- 作者: 米良仁,巨椋修
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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。
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