「発達障害に気づかない大人たち」を読んで



『発達障害に気づかない大人たち』 (祥伝社新書 星野仁彦 著) を読みました。

発達障害とは

落ち着きに欠け衝動的な「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、対人スキルや社会性に
問題のある「アスペルガー症候群」、読み書きなどの習得に難のある「学習障害」などの総称

とのことで、不登校・ひきこもり・ニートの多くにこの障害が見られるようです。

発達障害は「大人になれば治るもの」とされていたようなのですが、実際には、大人になってもなかなか治らず、苦労をしている人が多いようです。

アメリカの研究によると、10人に1人以上の割合で「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」の人がいるという説もあるそうです。

大人の発達障害でもっとも多いのが「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」なのだそうですが、その基本傾向として

・いつも落ち着きがなくそわそわしている
・気が散りやすく集中できない
・後先考えず、思いつきで行動してしまう
・やるべきことを先延ばしにして仕事がたまる
・気分屋で情緒不安的
・ひどい心配性で強い不安感にとらわれやすい
・対人関係が未熟で孤立しやすい
・低い自己評価と自尊心。マイナス思考
・あきっぽくて長続きしない


とのこと。

その他随伴症状として

・整理整頓ができず、忘れ物が多い
・計画性がなく管理が苦手−低すぎる生活技術
・事故を起こしやすい
睡眠障害と昼間の居眠り
・爪噛み、チック、抜毛、貧乏ゆすりなどの癖がある
・酒、タバコ、薬物、ギャンブルなどに溺れやすい
・のめりこみとマニアックな傾向がある


さらに、大人の発達障害の合併症として

うつ病気分障害
双極性障害躁うつ病
・不安障害(神経症
・依存症
・後遺障害(非行)、反社会的行動(犯罪)
・異常性愛
・パーソナリティ障害(人格障害
・チック症、トゥレット症候群
学習障害

などがあるとのこと。


そしてこの本の筆者である星野医師の研究によると

「大人の発達障害者」に子どもがいた場合、約半数に子どもへの身体的暴力やネグレクト(育児放棄)が見られたこと。

さらに、虐待された子どもたちは心だけでなく、脳の発達にも障害が生じることを「第四の発達障害」と提唱したことで有名な杉山杉山登志郎医師によると

虐待を受けた児童の54%に発達障害が認められたこと。

などなど、発達障害者が生きるのに苦しく大変であるかということを書いています。

この本をお書きになった星野仁彦医師ご自身も、大人の発達障害者のお1人であり、その苦労がわかるだけに、そして、障害を「認める」「受け入れる」ことから改善をはじめることができるとのことです。

この本を読んで少し思ったのは、仮に10人に1人くらいの割合で発達障害の人がいるとして、世の中にはだいたい10人に1人くらいは、「ちょっと変わった人」「ちょっと困った人」がいるものです。

また、「学校になじまないとか、ひきこもっている人、人とうまくいかない人=発達障害」と、決め付けられてしまいそれで「仕方ない」と終わってしまはないかというのが、気がかりでもあります。

著者の星野医師も「障害」という名称について、誤解や偏見が生まれないかと心配をしておられるようです。


おそらく、実際に不登校・ひきこもり・ニートの人に、発達障害の人は多いと思われます。

そして発達障害を抱えているがゆえに、いじめにあったり、二次症状であるうつ病や不安障害になる人も少なくないでしょう。

星野医師によると、発達障害

心理療法(カウンセリング)
認知行動療法
自助グループによる語り合い
薬物療法

などで適切な治療によって、治せるとのことですから、心当たりのある方は、専門医に相談してみてはいかがでしょうか?



FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)