上昇志向という罠
●上昇志向をもつのはいい。しかし過剰にもつと一生不満を抱えるということになる
ほとんどの人は上昇志向を持つことを善きことと思っています。
では、ここでいう上昇志向とな何でしょうか?
もっと立派になりたい!
もっと知識を増やしたい!
もっと出世したい!
いい学校を出て、一流企業に勤めて、いい女(男)をつかまえて、一流と言われる人になりたい!
まあ、こんな感じと考えていいでしょう。
でもこれ全部欲、我欲です。
我欲は善くないなんていいません。我欲大いに結構! 上昇志向大いに結構! しかしこの【もっと】が、延々と続くとすると、これは飢餓地獄にいる餓鬼と同じで、永遠に飢えたままで満足できず、満足できないということは、【不満】ということですから、過剰な上昇志向を持つ続けると【一生不満のまま】ということになりかねません。
上昇志向を持つということは悪いことではありません。しかし、あまりそれが過剰になると、一生不満を抱えたまま終わるということになりかねません。
また、上昇志向には、自分と周囲の人との間に、「自分はあいつより劣っている」という劣等感と、「自分はあいつより上だ」という人を見下した性質を、生み出しやすいことも覚えておいたほうがいいでしょう。
●耳なし芳一と足るを知るということ
作家の佐藤優さんの著作『インテリジェンス人生相談 復興編』に、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の『耳なし芳一』についての話しが出てきます。
『耳なし芳一』は出家した琵琶法師である芳一が安徳天皇の墓の前で、琵琶を弾く。つまり高貴な人の霊に憑りつかれるという話しです。
佐藤優さんは、この物語に「上昇志向という妄想」を感じたということです。芳一は、出家したほどの人でしたから、金銭欲とかはなかったかも知れませんが、琵琶法師として、琵琶が誰よりもうまいと評価されたいという願望があり、幽霊たちを呼び出したと書いています。
「金に対して関心のない人間というのは、往々にして名誉欲が肥大化していく場合がある。僕はもっと「小さな人間になる」ということが重要だと思うんです。人に迷惑をかけない、しかし自分の家族を大切にして、自分のできる範囲で苦しい人を助ける。」(『インテリジェンス人生相談 復興編』P75より抜粋)
佐藤優さんがいいたいことは、おそらく「足るを知る」ということなのではないでしょうか?
「足るを知る」とは老子の言葉で、『故事ことわざ辞典』によると正しくは「足るを知る者は富み、強めて行う者は志有り(満足することを知っている者は富者であり、努力している者は志ある者であると言える)」ということであり、「人間の欲望にはきりがないが、欲深くならずに分相応のところで満足することができる者は、心が富んで豊かであるということ。」とあります。
老子は努力すること、つまり上昇志向を否定していませんし、分相応の満足することの大切さも、同時に説いているわけです。
●上昇志向という罠
上昇志向という言葉や、プラス思考という言葉は、多くの人が無条件で善いことだと思っています。
もちろん、悪いことではありません。しかし、行き過ぎると、とても息苦しくなることも多いのです。
上昇志向を自分に向けるだけではなく、友人や家族に向ける人もいます。
「もっと頑張れ!」「お隣の〇〇さんは、あそこまで行っているのに、あなたは何をやっているの!?」
などなど、友人や家族にプレッシャーを与えてしまいがちです。
これは何を意味しているかというと、友人や家族に「いまのあなたではダメだ」と、言っているのに等しいのです。
と、いうことは、友人や家族にとって、あなたは癒しや安心、リラックスを与える人ではなく、圧力をかけてしまう人になっているということでもあります。
確かにときには、プレッシャーを与えることも必要でしょう。しかし行き過ぎると、お互いに疲れ果て、ついには顔を見るのも嫌になるようになるかも知れません。
上昇志向は悪いことではありませんが、そんな罠が潜んでいることもお忘れなく。
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巨椋修(おぐらおさむ)
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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。
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