人間も魚も養殖がいいのかも
この前、テレビでいろいろな養殖を特集してたんですよ。その中で、魚の養殖業を営んでいるオジサンがおもしろいことを言っておりました。
「松坂牛も神戸牛も、薩摩の黒ブタも、言ってみればみんな養殖じゃないですか! 魚介類だって、そのうち養殖のほうがブランドになりますよ」
したり名言!!
確かに、野牛よりも人間が食用に育てた牛のほうがウマイに違いありません。
ところが、日本では魚に限り養殖より天然のほうが美味しいと言われていて、一種の“”天然もの信仰”があります。ところが養殖の技術が進み、いまでは天然ものと養殖とでは、味に差がないどころかむしろ養殖の方が美味しいさえ言われています。
昨年、近畿大学がマグロの完全養殖に成功したというニュースがありました。
いま日本人が好むマグロは脂の乗った大トロ中トロ。ところが天然もののマグロでは、大トロや中トロが取れる部位は20%程度と少ないのですが、養殖だと40%が中トロ。30%が大トロ。残りが赤身と、高級な部位が多く含まれています。
また、いま天然マグロは水銀の含有量が多いため、妊婦さんは食べるのに注意が必要とされています。
これは天然マグロが餌にしている小魚を大量に食べるためですが、養殖の場合、天然マグロほどの運動をしないため、それほど多くの小魚を食べる必要がありません。
またマグロは長く生きれば生きるほど、体内に水銀を溜め込むことになるのですが、養殖の場合、大型化する前に出荷するため、水銀はあまり溜め込みません。
さらに水銀は赤身といわれる筋肉部分に多く溜まるのですが、前述したように、養殖マグロは体のほとんどが大トロ中トロですから、これもまた水銀が溜まりにくい理由となっています。
つまり、養殖マグロは美味しい上に安全。
さらに安定して供給されるために安価。
これはマグロに限らず養殖マダイ、養殖ハマチなどにも当てはまります。
考えて見れば、お米や野菜、果物も、野生種よりも品種改良したもののほうが美味しく安価なのは道理。
ウシやブタ、ニワトリなども野生より畜産されたものの方が美味しくて安価。
よくいうところの食の安全はどうか?
安全性については、養殖物には抗生物質(抗菌剤)を使います。
さらに検査でひっかかった魚は排除されますが、そのひっかかった魚を食べた場合でも「毎日100キロ以上を一生食べ続けると害がある」といった荒唐無稽な設定がほとんど。
国産の養殖の場合、養殖にも薬事法があり、用法・用量が定められ、出荷前に「休薬期間」が存在し、薬が残留しないように定められており、また、ほとんどの業者さんは、出荷前にその休養期間の数倍の期間、薬を与えません。
なぜかって? 魚が弱いのは人間と同じで赤ちゃんや子どものとき。大きくなればあまり病気をしなくなり薬を使う必要がないから。
薬はお金がかかるので、業者さんも残留のリスクはもちろん、無駄な出費を避けるためにも必要最低限しか使いたくないという極めて合理的な理由です。
いっぽう、天然のお魚は検査もなく出荷されています。まあ、どちらが安全・安心であるかは、消費者であるみなさんにお任せします。
※ただし、これらは国産産に限ります。海外産の養殖魚はむしろ逆で、とても危険です! 特にサーモンなどは、ノルウエーなど海外産のものは年三回以上食べてはいけないという研究者もいるほど! 回転寿司とかのサーモンは海外産がほとんどですから、注意が必要ですね。
また、ルールが安全であっても、業者が不法を行えばどうしようもありませんから、消費者が注意をするひつようがあるでしょう。
それに、近代になって急激に膨れ上がった世界人口の生命を維持するためには、農業や畜産、養殖の技術を上げなくては、いま以上の大量飢餓が人類に襲い掛かってきます。まさに「養殖は世界を救う!」ですね。
いまやマグロ類は乱獲の結果、マグロ類8種のうち3種が絶滅の危機にあるか、ほとんど絶滅状態だそうで、自然保護のためにも養殖は必要。これはニホンウナギもそうで、ウナギもいつ絶滅してもおかしくない状態なのです。
ウナギを絶滅から救うためには、世界の人たちがウナギを食べるのをやめるか、養殖の技術を高めて安価で安定供給するしかないというわけ。
幸いウナギの完全養殖に成功しており、後は実用化の開発が待たれます。
また、食の安全や自然保護、漁師さんの職を奪わないためにも、海洋汚染について真剣に考えるべきでしょうね。
思えば現代人だって、いわば養殖されているようなもの。
文明という養殖網に囲まれて、わたしたちは生きています。
といっても、それでも戦前までの平均寿命は50歳くらい。ストレスはもしかしたら養殖の魚より多いかも知れませんね。
とはいえ、アフリカとかで野生に近い状態で住んでいる人より、先進国に住んでいる人の方が長生きだし、医療や教育も発達しているから健康で長生きしています。
ある意味、ありがたいのかも知れません。
ただしわたしに関しては野生! いえ! 野生というより野獣! 野獣と書いて「ノケモノ」と読む!
なんか泣けてきました。とほほ……
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巨椋修(おぐらおさむ)
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