不自然こそ自然である

人間にとって不自然こそ自然である

―BY巨椋修(おぐらおさむ)―



例えば、「農作業など自然にふれ合う作業をすれば、心が豊かになり、優しくなれる」とか言う人がいるでしょ。


でもね、田んぼや畑って自然じゃないんですね。(笑)


そんなこと言ったら、農業を必死でやっている人怒られちゃうから。(笑)


田畑って、極めて人工的で不自然なものだから。




農家の人は、毎年必死になって、自然の土壌に手を加えて、品種改良した植物を植えているわけで、すべての農産物は、自然でも天然でも野生でもないから。


人類が発祥して現代に至るまで、地球における最大の自然破壊行為は農業だから。


いまだって、農業や植林をやって、その土壌が海に流れ込んで、海の生物が生きていけなくなったりしていて、地球規模の環境破壊を一番しているのが農業だったりするんですね。



でも、人間はその農業なしでは生きていけないわけで、世界規模で「地球に優しい農業」なんかをやると、たちまち億単位の人が餓死しちゃうのですね。



つまり人間が生きていくためには、不自然な行為をしていかなければならないってこと。

人類ってのは、どうやらそういった不自然が大好きな種だってことです。



自然が大好きって人でも、原種の野菜と品種改良した野菜と食べ比べてみれば、ほとんどの人が人工的に改良した野菜が好きだっていうと思いますよ。


これは農産物だけじゃなくて畜産物もそうで、バッファローと松坂牛を食べ比べてみたら、ほとんどの人は松坂牛を好むと思うし、イノシシと鹿児島の黒豚を食べ比べてみても黒豚を選ぶと思いますね。



ファッションだってそうで、人間は化粧をしてみたり髪の毛を切ってみたり、髭をあたってみたりして、自然のままを心地良いなんて思ってない。

アフリカやアマゾンの裸族だって、入れ墨をしていたりして人工的なファッションをしています。



ときどき、人は都会よりも田舎暮らしの方が、平和で優しくなれるっていう人がいるけど、実態はそうでもないの。


殺人など凶悪犯罪は、近年になるまで都市部よりも地方の方が多かったりします。


ここ10年か20年くらいで、都市部と地方の凶悪犯罪が同じくらいになったんですね。


田舎暮らしがそんなに素晴らしいなら、日本の代表的な田舎である東北部や北陸に自殺が多いのはなぜよ?



大自然に囲まれた北海道や沖縄に離婚が多いのはなぜ?



殺人事件だって、東京が特に多いってことはなく、都道府県別でいえば中間くらい。



都市だからとか地方だからと、『不登校・ひきこもり・ニート』が多いとか少ないとかは関係ないんです。



どっちがいいとかも関係ない。



東北や北陸に自殺が多いのは、田舎だからじゃなくて気候が関係しているらしいってことも、都市部では大阪とかも離婚が多いってことも知っているけど、ぼくが言いたいのは、


「自然や田舎は素晴らしく、都市は人工的で心が荒ぶ」


なんて教条的な常識なんか現実には存在しないってことですね。


もうそれは人それぞれってことでね。


不登校・ひきこもり・ニート』の関係者って、その教条的常識に縛られすぎている人がたくさんいるのね。


人間が生きていく上で、常識とかを知っておく必要はあります。

しかし必要以上に縛られてしまうと、こんどは生きていくのがつらくなってくる。




人間はねえ


不自然が大好きな生き物なんですよ。


不自然が快適。


不自然が自然。


人間って種は、天然自然から少し外れている種なんです。


でも、住みやすいように自然を改良して、人工的に手を加えて適応してきたんですね。


多少不自然なのが、人間の“あるがまま”だったりします。


だから人の生き方だって、多少外れていたり不自然であったりしてもいいと思うんですよ。





不登校・ひきこもり・ニートを考える FHN放送局代表』
巨椋修(おぐらおさむ)