富山奇行中編 なぜこんなにマスコミの方々が〜
今月24日に14年前に撮った映画『不登校の真実』がついにDVDとして発売されることを記念して、撮影当時富山にロケにいったときのことを記録したドキュメントブログをここに再録する。これは事実談でありこのアホウな男たちは実在する。
●富山奇行6 怒涛の富山二日目
ふと時計を見ると、すでに夜中の2時を回っている。
夕方の6時くらいから飲み始めたワケだから、そうとうに飲んだことになる。
元々それほど酒に強くないオレは、そろそろ眠くなってきたので、みなさんより一足先に眠らせていただくことにした。
富山第一日目は、こうして終わりをつげたのである。
(ほかのみなさんは、3時まで飲んでいたのだそうな……、タフだなぁ……)
次の朝、目が覚めたオレは、シャワーを浴び、アベを起こして、さっそく撮影に入ったのだ。
もちろん、オレは猛烈な二日酔いである。
しかし富山に滞在できる日時は限られている。
時間は極力無駄にしたくなかった。
今回の富山行きでは、富山駅などの背景と地元の方々のインタビューを撮影する予定である。
オレとアベは、カメラを用意すると、ふらふらと学校の廊下を、歩いていた。
もし学校の許可を得ていなかったら、酒くさい息を撒き散らし、ビデオカメラをもったオレたちは
変質者そのもの
として警察に連れて行かれても文句がいえないところである。
実際、生徒の皆さんは、いかにも
あやしいオジさん
を見る目でオレたちを見ている。
「キ……キミタチ、オジさんたちは、変質者ぢゃないんだよ、オジさんはね、オジさんはね」
などと、ヘタな言い訳をするパワーもなくオレたちは学校を出て、富山駅へと向かおうとしたそのときである。
後ろのほうから、うら若き女性が
「あの〜、オグラさんですかぁ?」
と、声を掛けてくるではないか。オレは思わず。
「はい、いいえ、わたしは変質者ではありません。決して、決して!!」
と、ますますあやしい答えをいってしまっていた。
その女性のことを、まるで小学生に戻って理科の時間に『ちいさないきもの』を観察するように見てみると、けっこう見目良いお方ではないか……
そういえば、昨日一緒に飲んだ新聞記者も女性でけっこう見目良い方であったな、などと余計なことを考えていると、その方が名刺を差し出してくれている。
あわててこちらも名刺を差し出し、名刺の交換をして、その女性の名刺を田舎の少年が日本地図を広げて、自分が生まれた村を一生懸命探すような注意力で見てみると、テレビ局のディレクター兼記者さんであるという。
記者さんはI記者と明記しておこう。
そのI記者から、取材の申し込みを受ける。
もちろんOKである。
我々が、これから富山駅周辺の撮影に入るところだというと、同行してお話しをうかがいたいとおっしゃるではないか。
もちろんOKである。
われわれは、富山駅周辺をビデオにおさめながら、I記者にこの映画の主旨などをご説明申し上げ、朝飯を食べるヒマがなかったので、コンビニで、富山名物の鱒のおにぎりをパクついていると、プロデューサーのミヤカワ氏から携帯に電話が入る。
なんでも、他にも記者の方がいらっしゃったから、急いで戻ってきてほしいとのことである。
オレとしては、いま目の前にいる見目良い記者さんと話しているだけで充分なのだが、どうもそうはいかないらしい。
仕方なく我々一行は、S高校に戻ることにした。
すると、そこにはとんでもない事態がッ!!
つづく
●富山奇行7 なぜこんなにマスコミの方々が〜
ふらふらとしながら、S高校に戻ると、なんとなくさっきと雰囲気が違う。
なんとなく人が多いのだ。
しかもザワついている。
しかし我々としても、まだ富山二日目なので、この学校の事情などわからない。学校に戻ると、そのまま校舎2階にある和室に通される。
みると10数人の人たちが、たむろっているではないか……
見ると、その人たちの中で、ある人はマイクを持ち、ある人はテレビ用の巨大なビデオカメラを持っている。
そう……
この人たちは、我々を取材にきたマスコミの方々であったのだ。
その数
新聞社5社 テレビ局3局
テレビ局の人は、カメラマン、記者、マイクなど数人で行動するから、その数はけっこう多い。
オレとアベは、まるで何かの犯人のごとくマスコミの方々に取り囲まれていた。
その状態のまま、テレビ局の取材を3軒受け、オレが取材を受けているシーンも今度の映画のワンカットか、あるいはメイキング作品で使おうと、アベにもカメラを回してもらう。
ニュースキャスターにインタビューをされるというのは、生まれて初めての経験なのだが、スラスラと言葉がでてくる。
なんのことはない実は・・・
昨夜の酒がまだ抜け切れていないだけで、つまりは酔っ払って話しているのだ!
そうこうしているウチに、ミヤカワ氏が代表をつとめるフリースペース『麦の根』の若者達もやってきた。
彼らとのディスカッションをやるもの、今回の旅における大切な仕事のひとつなのだ。
彼ら、実際に不登校を経験した若者達からインタビューをし、話し合いを持ち、そのシーンを映画に取り入れていくという作戦である。
それを、多くのマスコミのみなさんがいる前に行うことになった。
これはこれで、実におもしろいことなので、そのまま収録を続けることにする。
ただ、気をつけなければならないのは、実際に不登校をやっている若者の中には、マスコミに顔が出ることを極端に嫌う人もいる。
そして、いまだに心に傷を負っている人も少なくないため、彼らが我々の映画やマスコミに出ることについては、できうる限りの心配りをする必要があるのだ。
このときオレは数人の若者と雑談や、不登校体験を聞くことができた。
ついでに取材に来られたマスコミの方々に、逆取材を試みる。
ただ、マスコミ関係者としての意見ではなく、一個人としての意見をなるべく聞くようにしたつもりである。
多くのマスコミの方に取材をされ、また逆取材をするという作業は、数時間に及び、二日酔いの醒めぬまま突っ走っている感じであった。
そのときフト、いつも一台のカメラがオレたちを捕らえ続けていることに気がついた。
それは、取材の合間を縫って、ジュースやビールを買いにいったときのことだ。
一人のカメラマンと前述のI記者がついてくるではないか。
なぜかオレがビールやジュースを買っているところも、カメラにおさめている。
なぜなんだろう?
それとなくI記者に聞いてみる。
「あれ? 言ってませんでした? ミヤカワさんには、伝えてあるんですどね」
「なにをです?」
「今回、ウチの局で皆さんを密着取材させていただくことになりまして……」
「エッ……、密着……?」
つづく
●富山奇行8 助監督アベの逃亡
「あの……、それは我々の映画作りを密着取材して、テレビのドキュメント番組を作るというモノなのでしょうか?」
I記者は、当たり前ですと言わんばかりの笑顔で答えてくれた。
「はい、もちろんです」
オレがいま撮ろうとしている映画は、半分ドキュメント、半分ヤラセの半ドキュメント映画なのだ。
すると、我々もI記者たちが我々をドキュメントを撮ろうとしている姿を撮って、いかに不登校をテーマにした映画をドキュメントにするドキュメント番組が作られていくかを、ドキュメントしていくという作戦にしてみれば、結構おもしろくなるのではないだろうか?
そのうちお互いをお互いが追いかけて、一本の木の周りをぐるぐると走り、バターになってしまうかも知れない。
(なんて書いても、若い人にはわかってもらえないのだろーなー)
とにかく、その日は新聞各社やテレビ局の方々に、次から次にインタビューを受け、何がなにやらわからないうちに夕方になっていたのだ。
テレビの人たちは、6時のニュースに流しますから、といって、嵐のように去っていく。
マスコミの皆さんがいなくなったS
高校の一室で、オレや不登校経験者の若者達は、なにやらボーゼンとしていた……
オレは誰にいうとなく、つぶやいた。
「なんか疲れたなぁ……」
不登校経験者の若者の一人が、ぼんやりとしながら、答えていた。
「そうですね……」
「やっぱり、カメラに撮られると魂が抜かれるのかも知れないね、こんなに疲れるんだから……」
そんな話しをしていると、朝からずっと撮影をやっていた助監督アベが、ちょっといいですかとやってきた。
別室に行くと、朝から撮影をしていた一部が、機材の接触不良で音声が入っていないことに気が付いたのだ。
一部とはいえ、朝からの労働が無駄になったのである。
しかもマスコミに取材をされているというシーンは、なかなか撮ろうと思って撮れるものではない。
アベは、ひどく落ち込んでいた。
幸い、音声が切れていたのは、大した場面ではなかった。
オレはアベに気にするなといったところ、アベはただだまって、うなずくばかりであった。
しばらく、オレとアベは、不登校経験者の若者達と世間話をする。
そうしていると、アベが
「コンビニに買い物に行ってきます」
と、我々の前から姿を消したのだ。
やがてアベは1時間たっても帰ってこない。
はやく帰ってこないと、次の予定である、小杉町の町長と、取材をかねた会食の時間が、迫ってきているのだ。
アベの携帯に電話を入れてみる。
出ない。
オレは思わず、つぶやいた。
「アベが逃げた……」
つづく
●富山奇行9 助監督アベ見つかる
「ほらぁ、オグラさんが、コキ使うからアベさん逃げちゃったぢゃないですかぁ〜」
不登校経験者の一人が笑いながら言った。
部屋の一同がどっと笑った。
そう……
その時点までは、全員助監督アベが逃げたというのは、冗談のつもりだったのだ。
しかしアベはさらに30分たっても、1時間たっても帰ってこないのである。
携帯電話は相変わらす通じない。
オレは少しアセッてきた。
何度か携帯に電話を入れる。
やっぱり出ない。
小杉町の町長と会う時間は刻一刻と迫ってきている。
ますますアセッてきた。
「ホントに逃げたんじゃないの?」
不登校経験者がポツリとつぶやいた。
こんどは誰も笑わなかった。
携帯に電話をする。
出ない。
電話をする。
出ない。電話をする。出ない。
電話をする。
出やがった!!
「おめ〜ッ、いまどこにいやがるんだ。まだ富山か!?」
「は? なんのことですか?」
「まあいい。なにやってんだ?」
「撮影に使うイヤホンを買おうと思って、電気屋さんを探してるんですが、なかなか見つからなくって、いまやっと見つけたところです」
「イヤホンって、コンビニとかでも売ってんじゃねーの?」
「いや〜、自分の欲しい型がなくって、町中歩きましたよ。富山って電気屋さんが少ないんですね〜。でも大丈夫! 300メートル先に見つけましたから!!」
「ええい! その300メートル往復している時間が惜しい! いますぐ走って帰ってこい!!」
「え〜!? あと300メートルなのにぃ〜」
「ぢゃかあしいわい!! もうすぐ小杉町の町長との取材があるんぢゃい!! 遅れるだろーがぁぁぁ!!」
「は、はい、そうでした。走って帰ります」
こうして我々は、慌てて帰ってきたアベと、テレビ局の撮影クルーと共に、小杉町の町長との取材・会食へと車を発車させたのある。
つづく
はい、長い再録記事をお読みいただきありがとうございました。前述したように、ぼくが14年前に撮った『不登校の真実』がDVDになりその記念上映会を、26日に行います。入場条件は『不登校の真実』DVD(3800円)を一本お買い上げいただくことですが、よろしければいらしてください。
【映画DVD発売記念上映会】
「不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか?」
原作・監督:巨椋修
出演:西凜太朗、仁藤優子 ほか
主題歌:「命はじまり」/花房真優(Blood Orange Records)
BMXR-8011 3,800円(税抜)
2017年2月24日発売(Amazonなどで予約受付中)
&全国のTSUTAYA全店にてレンタル開始!
発売元:Mach Visual/株式会社エクセレックス
販売元:株式会社MPDビーエムドットスリー
富山県PTA連合会/富山県精神障害者社会復帰施設連絡協議会/(財)富山YMCA/日本映画監督新人協会・推薦作品
【上映イベント開催決定!】
日時:2017年2月26日(日)15:00に開場
住所:東京都中央区銀座8丁目3番先 高速道路ビル102号
内容:DVD「不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか?」発売記念上映会
巨椋修・織原りょう子・若木萌サイン会
入場条件:当日会場にお越し頂き、受け付けにてDVD「不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか?」(3800円)をお買い求めください。
*限定30名様までのご入場とさせて頂きます。先着順にてご入場となります。
特典:「不登校の真実」ポスター
サイン会:上映会終了後、会場ロビーにてサイン会を実施します。DVD表紙、特典ポスター、いずれかお好きな方をご指定頂き、巨椋修監督・織原りょう子・若木萌3名のサインをさせて頂きます。
FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)拝
わたし(巨椋修(おぐらおさむ))が監督した映画『不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか? 』DVDになりました。
精神科医や不登校に携わる皆さんにインタビューをしており、問題解決のヒントになれば幸いです。
『TSUTAYA』のドキュメンタリーコーナーにも置かれておりますのでご覧になってください。不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか? [DVD]
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●巨椋修(おぐらおさむ)の著書
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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。
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