『彼女たちの売春(ワリキリ)』を読んで
数日前に扶桑社さんより荻上チキさんの著作『彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力』という書物を献本していただきました。
この本の著者である荻上チキさんは100人の売春(ワリキリ)をしている女性にインタビューし、詳細なデータをとっています。
この本によると
・ワリキリを始めた平均年齢 20.7歳
・風俗経験 あり39人 /風俗経験はないがキャバはある24人/なし37人
・精神疾患 病識あり30人/病識はないが自傷行為の経験あり17人/病識なし53人
・DV経験 あり33人 /なし67人
とあります。
・精神疾患もしくは自傷経験があるワリキリ女性は47%もいること。
・DV経験(主に親からの虐待)があるワリキリ女性が33%もいること。
ということは、ワリキリをやっている女性たちの多くが、とても生きづらい人生を送ってきていたことをあらわしています。
また8割以上の女性の学歴が高卒以下であるというデータも出ていました。
また、多くの女性が貧困ゆえにワリキリをしていること。
そしてこれらは「道徳」「の問題ではなく、「社会問題」であることを著者の荻上チキさんは訴えています。
この本にも書かれていますが、女性の貧困はこれまであまり注目されてきませんでした。
国税庁が調査した「民間給与実態統計調査(平成20年分)」によると、平均年収 男533万円、女271万円と大きな差ががあります。
さらにシングルマザーの平均年収は、233万4千円(但し、「生活保護費」「児童扶養手当」も含む、2007年度版「母子家庭白書」より)という経済状況で子どもを育てています。
いまだワリキリをする女性に対して「道徳の問題」とか「怠けや甘え」と思っている人も多くいるようですが、決してそれだけではないということを教えてくれる本でした。
社会問題に興味がある方にお薦めの一冊です。
この本の最後に、荻上チキさんがこんな言葉を残しています。
「買春男に彼女たちを抱かせたくないのであれば、社会が彼女たちを抱きしめてやれ」
まさしくその通りだと思います。
そしてこの言葉は、ワリキリをしている女性のみならず、いま困っている人、つらい人、悩み苦しんでいる人にも、共通する言葉だと思います。
『不登校・ひきこもり・ニートを考える FHN放送局』
巨椋修(おぐらおさむ)拝