子どもの貧困は日本衰退の予兆である

以前、このブログで「ルポ 子どもの貧困連鎖−教育現場のSOSを追って」という本を紹介しましたが、ルポライター鎌田慧さんの書評が日刊ゲンダイにありましたので、さらに引用させていただきたく思います。


[http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334976903:title=「ルポ 子どもの貧困連鎖−教育現場のSOSを追って」(保坂渉、池谷孝司
著、光文社1680円)]


鎌田慧さん】
日刊ゲンダイ6月16日付(15日発行)10面 現代を読み解く本 35回目

「貧困の連鎖で日本社会が衰退へ」


授業料を払えなくなった学生、中途退学をする高校生など、社会に出る前から、すでに貧困化の犠牲になる若者たちが増えた。奨学資金が無償貸与でなく、銀行ローン化し、返済を滞納するとブラックリストにはいる。


「滑り台」とか「無縁社会」といわれたりする。この酷薄社会のひずみを、小、中、高、さらには保育園から、具体的なケースとして突き出した一冊である。共同通信から、全国の地方紙に配信され、掲載された。


ある保育園に「孫だけでも夜、泊めてもらえませんか」と園児の祖母が頼みにきた。事情を聴いてみると、離婚して園児を引き取った父親と祖父母の4人は、1ヵ月前から車上生活をしていた。


ある園児は、「小学生になったらアルバイトをしたい」といった。シングルマザーの母親を助けたいのだ。ドメスティック・バイオレンスの被害者もいる。まともに働いても、非正規労働は極端な低賃金である。親がダブルワークやトリプルワークでくたくたで、子供の教育などできるわけがない。貧しい女性たちは疲れ切っている。そのしわ寄せが子供たちへいく。


幼児教育の専門家である。大宮勇雄福島大学教授によると、北欧諸国は、単に児童福祉として保育におかねをかけているのではなく、民主主義、自己の尊重、文化の多様性の理解、つまりどんな人間と社会をつくるための保育かを問いかけている。ヨーロッパでは、保育料の無償化が進んでいて、就学前の2年間が標準という。


朝、保育室で、前日の給食の残りのパンや牛乳をもらう小学生たちがいる。


学童保育で、午後8時を過ぎても迎えにこられない親がいる。


もはや子育ては家庭の自己責任などと責任を押しつけられる時代ではない。


企業社会が家庭を崩壊させている。


子供時代の貧困は、将来にわたってダメージを与える。貧困の連鎖である。子供を大事にできない社会は、これからさらに衰退する。
※読みやすくするため改行は巨椋がやりました。



現在、日本の子どもたちのうち、6人に1人の割合で相対的貧困の子どもたちがいます。

1日の栄養を学校給食で摂る子どもたち。

病院に行くお金がないので、保健室の応急手当ですます子どもたち。

着替えやお風呂に入れず「くさい、汚い」といじめられる子どもたちが、たくさんこの日本という国にはいます。

子どもの貧困は、大人の貧困によって生まれます。

大人が貧困になれば、当然、子どもの教育にお金を掛けられなくなる。

教育とは、未来への投資なのですが、子どもの貧困がひどくなれば、国家が衰退していくということになる。

国家の衰退や反映は政治の責任です。

子どもの貧困は、親の責任といっていられる時代ではありませんし、もはやそんな場合ではない。

いま、若者の失業率が高く、ニートが増えているというのも、個人が怠けているからで済まされる時代ではありません。


1日でも早く、子どもの貧困や、若者の貧困、失業やニート問題の解決に着手しなければ、この国はますます悪くなっていくことになります。



FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)