長期化するひきこもり
−NPO法人全国引きこもりKHJ親の会における実態調査報告書8-
http://www.khj-h.com/pdf/10houkokusho.pdf
によりますと
● ひきこもり 平均年齢 約31歳
● 平均期間10.21年
と、あります。
平均で10年ですから、これは決して短い期間ではありません。
この10年は“平均”なのですから、半数以上が10年以上ひきこもっているということに注目すべきでしょう。
さらに
● 不登校経験があると答えた人は40.1%
と、不登校からひきこもりになる人がとても多いことがわかります。
これは
【不登校になった人は将来ひきこもりになる】
という短絡的なものではなく、
【子どもの頃で人との関係や集団行動が苦手な人はうまくいかない傾向がある人は、大人になっても、人間関係でつまづきやすく、ひきこもりになることがある】
ということなのでしょう。
さらに就労経験はというと
●就労経験(アルバイトを含む)があると答えた人は54.5%
● その内,就労回数が1回である答えた人は43.6%
と、彼らの4割がろくに働いた経験がないとういことも現れています。
また、東京都の「平成20年度ひきこもりの実態調査結果」によりますと、はじめて35歳以上のひきこもり者の調査が行われています。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2009/03/60j3u101.htm
それによりますと
●35歳以上では、ひきこもり期間7年以上が6割(34歳以下では15%)
年齢別の期間
(35歳以上)・7年以上(61%)・1年〜3年(15%)・5年〜7年(11%)
(34歳以下)・1年〜3年(32%)・3年〜5年(23%)・7年以上(15%)
と、年齢が高いひきこもりの場合、7年以上という長期のひきこもり者が大変多いということがわかっています。
そして、家族が感じていこととして。現状の生活より「将来の生活への不安」が非常に多いことがわかります。その割合は
●老後に不安がある(62%)・きょうだいの生活と将来に不安がある(51%)
ということでした。
これらの調査でわたし個人が思うところは、1〜2年くらいのひきこもりならば、本人の休養ということでいいのかも知れませんが、3年以上となるとひきこもりを放置していては問題はますますこじれてしまう可能性大。と、いうことですね。
もちろん、おうちが大金持ちで、親の老後もひきこもり者の老後も心配ないというのであれば、一生ひきこもっていてもいいのでしょうが、多くの場合そうはいきません。
ひきこもりが長引けば長引くほど、社会に出て働くということが困難になるのが現実です。
中には「ひきこもりは暖かく見守っていれば、すぐにでも出てきますよ」とか「ひきこもりを家族が肯定し、本人も肯定できれば、出てきますよ」と、こう支援者もいますが、正直、これらのデータにあるように、ひきこもりが7年とか10年続いている場合、そうも言っていられないでしょう。
もしかしたら、「暖かく見守る」ではなく実質「放置」という状態のままずるずると続いてしまっているのかも知れません。
実際、長期化してしまったひきこもり家族は、ひきこもりを何とかしようとする努力を行うと、必ず何らかのトラブルや苦労、波風が立ちます。
おそらく長期化してしまった家族や本人は初期の頃にそういった苦労を経験し、「あんな思いをまたするくらいなら、そっとしておいたほうが、波風がたたなくてよい」と、思っていることが多いように思えます。
そして、ただ時間だけが過ぎ去っていき、気がついたら7年、10年とたってしまっていることもあるかと思います。
長期化したひきこもり者が世の中に出るためには、短期間ではまず難しいでしょう。
焦らずに、時間をかけて、リハビリをする必要があるでしょう。
本人や家族が気がつかない障害や病気の場合もあります。
相談機関や公的支援機関に相談をして、復帰のために少しずつアクションが起こせればいいですね。
何もしなければ、また、1日、1カ月、1年、3年、5年と似たような日々が去っていき、ただ年齢だけを重ねていくことになります。
また、そうなると、いつか破綻の日を迎えることになるかも知れません。
破綻の日まで、いまのままでいるという選択肢もあります。
それでいいというのなら、もはや他人には何もいうことはありません。
FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)