生れ落ちた環境について


次のようなメールをいただきました。

以前から巨椋さんの考えを聞いてみたいと思っていたことがあります


一時期心の勉強をしていてよく出てくる説で、小さい頃からショボい親の元で育って、虐待されまくるとトラウマになって、将来色々と不具合が出る、という説があります。


で、こうなると大人になっても自分を変えるのはなかなか難しいといいますがそれは本当でしょうか?


僕は本当だと信じていたのですが、このトラウマ説って実は精神科医を始めとした、心に関わる人達が、「飯を食っていくため」にある程度でっちあげたのだと言う話しを最近ちらほら聞きます。


この「(幼児期の)親の虐待のせいで心が病んだんだ。ニートになったんだ」という説についてもう少し巨椋さんの考えをお聞かせ願えればと思います。

お答えいたしましょう。質問の中の

小さい頃からショボい親の元で育って、虐待されまくるとトラウマになって、将来色々と不具合が出る、という説があります。


で、こうなると大人になっても自分を変えるのはなかなか難しいといいますがそれは本当でしょうか?

はい、これは本当だと思います。どのような人物でも、幼少期に受けた心の傷、つまりPTSDから解放されるのは、困難だといいます。

10年、20年かかることもめずらしくありません。それどころか、一生PTSDに苦しむという人も少なくないようです。

そのような人が、「自分で自分を変える」というのは、大変な困難が付きまといます。


自分の思考、性格は、もって生まれた気性と、幼少期や後天的に学んだり、習慣化された考え方により決まります。


これを変えるためには、まず気に入らない自分を受け容れ認れ、否定をしないこと。


どのような過去であれ、いまの自分がいるのは、過去があったからだとうことを理解しなければなりません。

そして、そんな自分を変えうるのは、自分自身であるというのも、知らなくてはなりません。

親をうらんで生きていくか、それとも違う一歩を歩み出すのかは、自分次第ということですね。


次に、新しく変わろうとする自分をも受け容れ、否定しないようにしなければいけません。

過去の性格や、思考、行動は、習慣化された、つまり癖になっているものですから、それを断つには、努力が必要です。

右利きの人間が、左利きに治そうとするようなもので、新たなストレスと努力が伴なうものだと考えておいた方がいい。


自分を変えるといっても、自分ではない別人になることはできませんが

「まるで、別人のように」なることは可能です。


それと、精神科医など、心を扱う人たちが“食べるために、そういう説をデッチあげた”ということはないと思います。


むしろ、トラウマ理論を信じたくない人たちがデッチあげた可能性のほうが高いのではないでしょうか?

ただし、治療やカウンセリングを受けているうちに、患者が自己を正当化するために、記憶をデッチあげたり、あるいは治療者の誤誘導で、「自分は親から虐待された」と、記憶を作ってしまったりすることは、実際にあります。


この「(幼児期の)親の虐待のせいで心が病んだんだ。ニートになったんだ」という説についてもう少し巨椋さんの考えをお聞かせ願えればと思います。

人間が生まれて、最初の教育者は親ということになります。

親が関西弁なら、子どもも関西弁を喋るようになるでしょうし、英語なら、英語を喋るようになるでしょう。

親がかっとなって子どもを殴る傾向があれば、子どもも、かっとなったとき、暴力にはしる傾向や、自己否定的な心が出てきます。

親の言行が一致していなければ、子どもは、人を信用できにくくなるでしょう。


しかし、子どもが、親離れの年齢になったとき、


「わたしがニートになったのは、親であるアンタらのせいだ!」


と、親を責めるのは、あまりいい方法ではありません。

これはいわゆる“アダルトチルドレン”と呼ばれる人に多い傾向らしいですが、もう物心がついているわけですし、過去を取り戻すこともできないんです。


そうやって、親に対して鬱憤を晴らしているくらいなら、そのイヤな親から離れればいいんです。


親もまた、子どもと距離をとった方がいい場合もあります。


子どもが親から独立するには、何はともあれ、先立つもの、お金がかかりますから、できるなら、ニートや引きこもりを1日も早くやめて金を貯めることですね。


逆に、親の立場からすれば、むりやり一人暮らしを強制しない方がいいですね。

生活能力がない人を、むりやり一人暮らしを強いると、かえって子どもを追いつめる結果になります。


親殺しのような凶悪犯罪は、このよう必要以上に子どもを追い詰めたあげく起こる場合が多かったりします。


どうしてもいう場合、事情を理解して面倒をみてくれるような施設などに、預けるという方法もあるでしょう。

それも、子どもに充分に理解と了解を得る必要があります。

子どもの了解を得ないで子どもを施設等に連れて行った場合、子どもは



【追い出された】【捨てられた】【だまされた】



と感じ、親を恨み復讐行為をする可能性もあります。

親子は、永遠に一緒というわけには、いきません。

大抵の場合は、親が先に死ぬ。

親が死んだ後、子どもはひとりで生きて行かねばなりません。

ですから、親離れの時期がくると、子どもがひとりで生きて行けるようにしないといけない。


これは親も一緒ですね。

親も子離れが必要です。

親離れ、子離れもムリせず、お互いに協力していきながら、できればいいのですけどね。


FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)