強制入院について
さて前回、オセロの中島知子さんについて書きました。
報道によると中島さんは、いま家族とも会おうとせず、ひきこもり状態にあるようです。
伝わってきている言動も、
「盗難被害に遭い、警察に『引っ越してはいけない』と言われた。警視総監と話している」
「中島が自宅で、顔全体にテープを貼り付けている。そして、手のひらにもテープをたくさん貼り付けて、顔を無表情で触っていた」
「中島さんはベッドに横たわり、
彼女はひと言も口をきかず、ただ、虚ろな目で寝たまま天井をぼんやり見つめているだけだった」
と、正常とは思えないような状態にあるようです。
このような状態の人に対して、「家族や行政、警察等の要請で強制的に入院させることができないのか」
と、思う人がいるかも知れません。
この場合の入院は精神科の入院ですが、精神科の入院にはいくつかの形態があります。
●任意入院
任意入院とは、本人が入院を同意した場合に入院する形式。
●措置入院
自傷・他傷の事実あるいはそのおそれがある人に対する強制入院。
精神保健指定医2名の合意が必要。
都道府県知事,政令指定都市市長の権限でする入院。
精神保健指定医が、入院治療の必要があると判断し、本人の同意が得られないが、保護者の同意でする入院。
精神保健指定医1名、病院管理者、保護者の同意が必要。入院期間は72時間。
●緊急措置入院
緊急措置入院とは、2名の精神保健指定が確保できない場合でも、緊急性が高い時、精神保健指定医が1名の診察でも入院が可能な制度。この場合でも、72時間以内にもう1名の精神保健指定医による診察が必要。保護者の同意は不要。
●応急保護入院
措置入院ほどひどくはないが、緊急の入院が必要で保護者の同意がすぐに取れない場合に行われる強制入院。入院期間は72時間。
このように、精神科の入院にはいくつかの条件があります。
緊急での強制入院は、薬物やアルコール、精神病の発作などで暴れているときや、薬の大量服用で自殺未遂のときなどが多いようで、現場は修羅場となっているときも少なくないそうな。
オセロの中島さんの場合、まだ精神の病気であるかどうかもわかっていません。
(精神疾患でない場合も普通にあります。おかしなことを言ったり、顔にセロテープを張ってボンヤリしているだけで病気と決め付けられては大変です)
また、仮に精神疾患だったとしても、いまのところ自傷他害の事実もおそれも、いまのところはありません。
成人しており、また独立して暮らしているので、強制的に入院ということはできません。
中島さんの場合、親御さんが裁判所に「人身保護請求」を出し、一時入院をしていたそうです。
「人身保護請求」は通常、離婚した親の片方が子どもを連れ去ったり虐待をしているときに使われることがほとんで、中島さんのような例は、極めてめずらしいとのこと。
もっとも中島さんは、退院するとすぐに元の生活に戻っていったそうです。
そしてもし仮に、警察や医師、行政の権力で強制的に入院させることができるとすると、それは大変おそろしい世界といえるでしう。
権力者が、気に入らない相手を精神病患者に仕立て上げ、強制的に入院してしまうことが可能になるからです。
そうならないためにも、強制入院には、多くの条件が入っています。
ただ、中には、明らかに病気で、多くの人に迷惑や心配をかけているにもかかわらず、本人や保護者が入院や治療を嫌がっているために、どんどん病気が悪くなっていくということもあるようです。
これは大変難しい問題といえますね。
FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)