人の怒りに対処する


わたしは陽明門護身拳法という、護身術・総合格闘技道場師範でもあります。

この道場には、『護身のための3ヶ条』というのがあって、



第一条「君子あやうきに近寄らず」
護身術の基本です。まず極力危険を避ける事。

第二条「三十六計逃げるにしかず
極力危険を避けているにもかかわらず、巻き込まれてしまった場合、とにかく逃げる、その場を立ち去る事。

第三条「窮鼠猫を噛む
避けたにもかかわらず、逃げるに逃げられない、どうしょうもない状況になったとき、はじめて技を使う。



と、いうのを信条にして指導をしています。

第一条「君子あやうきに近寄らず」ということに、護身術の極意があります。

普段している闘う練習や、第三条は付け足しみたいなものですね。(笑)


「君子あやうきに近寄らず」という文の中には、心術も含まれます。

その心術とは

怒らない 怒らせない 怒った相手に対応する

ということですね。


武道は、礼儀作法をうるさくいいますが、それには理由があります。

武道をやる人間は刀とか凶器を携帯していて、その扱いに堪能なわけです。

下手に相手を怒らせたら、バッサリやられるかも知れない。

そうならないためには、相手を怒らせない術が必要となってきます。

それが、礼儀作法。

立ち振る舞い、目の付け方、口のききかた、気の使い方、お互いの尊厳の守り方が、自分の身を守ってくれるんですね。

「いじめ」にあう人の中には、自分は悪くないのに、いじめられてしまう人がいますが、その中には、そういった事が身についていないため、無意識のうちに相手の怒りをかってしまっている人も少なくありません。


さて、今回のお話しは、相手が理不尽な怒りを、自分に向けてくる場合です。


もし、相手と深い付き合いでなければ、前述した3ヶ条がそのまま使えます。

そのような理不尽なことを言ってくる相手には、近づかない。距離をとって付き合う。

あまりしつこいようであれば、あるいは避けられないようであれば、逃げる。もっと距離を置く。

それもできないときは、何らかの処置をする


しかし、相手が家族であったりした場合、近づかないとか、距離をおくといっても、なかなかできるものじゃない。

相手が親であった場合、自分の部屋に閉じこもって、『ひきこもり』になるしかない。

『ひきこもり』は、学校や社会で傷つき、さらに家庭でも家族から怒りをぶつけれ、家族の中にも居場所を失い、自分の部屋に閉じこもってしまうという場合もあるんですね。

また相手が、夫や妻、子どもなどであれば、逃げるに逃げられないということも多いでしょう。

そういうときの方法としては、

「この人は怒りやすい人なんだ」

と、開き直ってしまうということが必要となってきます。


もし怒りに暴力が伴なうときは、とりあえず普段からヘソクリなどを用意しておいて、家から避難するという方法もあります。


怒る人というのは、自分の怒声を聞くことによって、いっそうエスカレートする事もありますし、怒っているときは、まともに物が考えられない状態、感情をコントロールできない状態になるわけですから、そのときに口論をしても、火に油をそそぐ状態になりかねません。

また、売り言葉に買い言葉とやってしまうと、ますます険悪、大喧嘩になってしまいますので、そういったときは、少し離れてお互いに頭を冷やしてから、お互いの主張をした方がいいんですね。

理不尽な怒りに対して、やられっぱなしでいいということはありません。

しかし、怒りに怒りを返してしまえば、事態はより険悪になりますから、それは避けた方がいいでしょう。

冷静になってから、お互いに主張をするべきです。


「ああいう風に、怒りをぶつけられるのは、イヤだ」


と主張をするべきです。

そして、相手が冷静にいるときに、あらかじめ、


「わたしは、理不尽な怒りをぶつけられるのは我慢できない」

「あなたが怒ったときは、わたしは一時逃げるよ」

「でもあなたが冷静になったとき、戻ってくるから、そのときに話しあいましょう」

「わたしは、あなたを大切に思っていますので、あなたもわたしを大切に思ってください」


ということを、伝えておくべきです。

それでも……、どうしてもダメな場合は、最終手段として、相手と別々に生活をする。二度と会わないようにする。第三者に相談するという方法もあります。




FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)