情報と判断
1938年、アメリカのCBS放送で「宇宙戦争」というラジオドラマが放送されました。
「宇宙戦争」は、その後何度か映画化されている物語です。
火星人が、地球に攻撃をしてきたというストーリーで、それをオーソン・ウエルズ監督が、ニュース番組風とドキュメント番組風にやったラジオドラマです。
それを聞いた人の中には、ドラマじゃなくって本当に火星人が地球を侵略に来たと思った人が大勢いて、逃げ出す人や銃をもって対抗しようとする人がいっぱいいたといいます。
でね。
このラジオドラマを聞いて、本気にしちゃった人って言う人は、どういう人が多かったかというと、ちょっと残酷な言い方になるんですけど
教育レベルが低い人
って言われているんです。
つまり、ちゃんと判断力のある人だったら
「宇宙人が攻めてくるほどの大事件なら、他の放送局でも報道をやっているはずだから、その放送も聞いてみよう」
と、思って他チャンネルの報道を聞く。
すると、そんな話はまったくやっていない。
そこで、
「ああこれは、創作なんだ」
と、判断するわけで、他の人のように逃げ出したりするようなパニックに陥ることはなかったと言うんです。
これって、現代にも当てはまることでね。
東日本大震災でも、デマに踊らされてしまった人がたくさんいました。
もっとも、あれほどの大災害で、しかも政府やマスコミの情報がハッキリしないため、パニックになったり、デマを信じてしまうというのも無理ありません。
ぼくも震災の直前に、ちょうどデマや都市伝説や情報操作について調べていて【週間SPA!】さんに取材とかされていて、一般の方よりもくわしいはずだったのですが、さすがに不安になりましたものね。
また他にもネットのデマや情報で、スマイリーキクチさんというタレントさんが、インターネットで【殺人事件にかかわっている】と、なんと10年にも及んで中傷され続けたという事件もありました。
中傷があまりに長期で、しかも悪質であったため、ネットに書き込みをした人たちは19人も摘発されたといいます。
この事件をスマイリーキクチさんにインタビューした記事が【ふらっとNOW】に載っているので引用します。
http://www.jinken.ne.jp/flat_now/kurashi/2011/11/25/1335-2.html
ぼくが殺人事件とは本当に無関係だと知ると、「ネットに洗脳された」と泣き崩れた男性。
「離婚してつらかった。キクチさんはただ中傷されただけじゃないですか。私のほうがつらいんです」と主張する女性。
「ほかの人は何度もやってるのに、一度しかやってない自分がなんでつかまるんですか」と刑事さんに食ってかかった男性。
「こんなに書き込みがあるんだから、この人は絶対悪い人です」と言い張る男性に、刑事さんが「証拠は?」と尋ねると
「書き込みが証拠です。事件をネタにしたのを見たという人がこれだけいるんですよ」と自信満々で答えたそうです。
住んでいる場所や年齢、環境はバラバラでしたが、共通していたのは無責任だったことです。
まず「やってない」と否定し、証拠を突きつけられると友だちや同僚のせいにし、最終的には「ネットの情報にだまされた自分も被害者だ」「自分のほうがつらい」と言いだす。
涙を流しながら「キクチさんに謝りたい」と言った人が何人かいたそうですが、実際に謝ってきた人はひとりもいません。
スマイリーキクチさんのときはちゃんとした教育を受けた人や学歴が高い人も、デマを信じてキクチさんを攻撃した人がたくさんいたようです。
しかし、こういうのは、情けないですね。
ネットにしても、テレビや新聞雑誌、映画もそうなんですけど、何も考えないと見ている人は
「あ、そうなんだ」
ってなっちゃう。
それって、情報を発信している人に踊らされているだけなんです。
ひとつの情報は、あくまでひとつの情報に過ぎないんです。
わたしも情報発信をしている側の人間なんですけど、ひとつの事例を取り上げる場合、その人物をどうにでもできるところもあります。
それを情報操作といいます。
観ている人は、そういった情報操作に惑わされることなく、多方面、多面的に物事を捕らえて、判断してほしいですね。
マスコミやネットって、『不登校・ひきこもり・ニート』に関して、一面的に判断したり描いたりしている場合が多いでしょ。
その情報が正しいとは限りません。
ひとつの情報や報道は、参考程度にしておいて、いろいろな角度からみて、最後にご自身や家族と相談して判断することです。
ものの見方を変えてみると、問題だと思っていることも、さほどではない場合や、案外解決の方法がある場合だって少なくないんですから。
FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)