性格は変えられるか


心理学や哲学の世界で、大昔から現代にいたるまでの、続いている論争があるんです。



・人間の性格は、持って生まれてきたものか?

・それとも、生まれたときは真っ白で、その後の環境によって作られているものか?



というお題の論争なんですけどね。

【人間の性格は、持って生まれてきたもの】



っていう考え方としては、19世紀にロンブローゾというイタリアのお医者さんが、


「犯罪者は、生まれつきのもので、それは身体的特徴からわかる」


とした“生来性犯罪説”なるもを発表しています。


また、ドイツの精神科医クレッチマーという人が、人間の性格は、体格でわかるとした発表をしています。

これは、太ったひとは、陽気で、外交的。

痩せた人は、内向的できまじめ。

ガッチリした人は、几帳面でガンコであるというもの。


さらに近年の日本では、血液型で性格がわかるといった、“トンデモ信仰”まで存在しますね。(笑)



一方、人間の性格は環境で出来るものという考え方も、昔からありいわゆる



【氏より育ち】



という言葉に表されています。


まあ、答えからいうと、現在ではロンブローゾの『生来性犯罪説』は、否定されている。

クレッチマーの『体型により、性格がわかる』というのも、人間はそんなカンタンなものじゃない。

血液型性格診断は、まったくのデタラメ。


まあ、我々はこういった単純な論理に、納得したいわけで、血液型性格診断も、星座占いも一緒で、


「ああ、アナタは乙女座だから……」


とか、「やっぱりね、あなたの血液型は△型だから……」


なんて、わかったようなことを言って納得したいわけです。
そのほうがオモシロいし、タンジュン、カンタン、ワカッタ気になれるから、なんとなく安心。



では、『氏より育ち』なのかというと、そうとも言い切れない。

例えば、環境がいかに人間の性格に影響するかを調べる研究では、一卵性双生児が生まれたときに、別々の家庭で育てられたというケースを調べるという研究者たちがいます。


一卵性双生児は、ほとんど同じ遺伝子を持っていますから、後は環境の影響によって,差が出るだろうということなんですが、その研究によると



一卵性双生児の知能指数は、違う環境に育っても、約9割が、ほぼ同じである。


という結果が出ています。

なんでも、いくら努力したところで、知能指数に関しては、環境や努力の差はそれほど思ったほどではないらしい。



ただし、学校の成績はというと約2割ほどの差が生まれてくるらしい。



まとめると、持って生まれた“知能指数”は変わらない。

しかし、環境や努力によって、“成績は多少”上げることはできる。


ということになりそうですね。

意識して勉強すれば、成績はもっと上がるかも知れない。



身長ではどうかというと、ある研究では、違った環境で育った一卵性双生児の差は、わずか2%くらいの差しかないそうです。


身長なども持って生まれたものということが言えるのでしょう。


さて、性格はどうかというと、『生まれつき』か、『氏より育ち』かという二つにひとつでは、あり得ないというのが、最近の研究でわかってきたんですね。


つまり、身長や知能指数がある程度、決まっているという事実と、その後の育ちによって、作られていく


遺伝と学習によって、人間の性格は作られていくということです。


遺伝の中には、身長や、皮膚の色、容姿、太りやすい、痩せやすいといった外見も入りますし、病気に対する抵抗力、内面的な気性も入ります。


学習には、乳児の親とのアイ・コンタクトやスキンシップ、言葉がけにはじまり、友だちとのコミュニケーションにより、成長していきます。



人間は、この持って生まれたものと、環境が複雑に入り組んだ中で成長をし、性格が作られていくんです。




では、最初のお題。


性格を変えることはできるのか?




これは、ある面ではイエス


ある面では、難しい。




持って生まれた性格、あるいは、幼少期に植え込まれた性格を、まったく変えてしまうというのは、その人の本来ある土台を変えるに等しいものですから、まず難しい。


それなら、その土台の性格をうまく利用したほうがいいんです。


「消極的な自分をなんとかしたい」とか、「自信をつけたい」「神経質なところを直したい」といったことなら、かなり可能。


おそらく、あなたの周りにも子どもの頃、目立たなかった人が、なぜかいま人気者になっていたり、暗かった人が、すごく自信満々になって、明るくなった人などが、たくさんいるんじゃないですか?


そういった意味での性格を変えるのなら、全然可能。


では、どうすれば変えることができるのかですって?



それに、 “自分が理想とする性格をやってみる” というのもいい方法です。



あまり理不尽な無理はいけませんけど(笑)、とにかく理想に近い状態の、真似をしてみる。

普段、笑わない人だとしたら、マンガやコメディでも観て、とにかく笑う癖をつける。


すぐにキレちゃうような人は、キレないというに自己ルールをつくる。

キレそうになったら、席を外して深呼吸したり、お水を一杯飲んだりして、ルールを思い出す。

人間の性格や心というのは、一種の癖に支配されているわけですから、その一度固まった癖を、違うに癖に矯正しないといけないんですよ。


それには、当然それなりの努力がいります。


しょっちゅう挫折はするのでしょうが、懲りずに何度でもやってみることです。

自分をマイナスな気持ちにさせるような人が、周囲にいたとしたら、できるなら距離をとるか、気にしないようにするほうがいいですね。

周囲の人の影響って、思いのほか大きいですから。


そうすれば、周囲の態度も変わってくるものです。

また、知らず知らずの間に、自分が少しずつ理想に近づいていっているものです。



『FHN放送局』
巨椋修(おぐらおさむ)