「現代型うつ」「新型うつ」について
近年話題になることが多い「現代型うつ」、これは「新型うつ」とも呼ばれるもので、精神医学上ではそういった病名はありません。
現代型・新型うつがどういうものかというと、
・うつ感情が高まり会社なり学校なりに行けなくなる。
・しかし、会社が学校には行けないが好きな遊びには行ける。
・従来型のうつは中高年が多いが「現代型」「新型」は若者に多い。
・うつ病の薬が効きにくい・効かない。
・従来のうつ病は、自分が悪いと思いがちであるが、現代型・新型うつは「自分のせいじゃない。他人が悪い、親が悪い、周囲が悪い、社会が悪い、政治が悪い、学校が悪い」と攻撃的。
などなどがあります。
ぼくが『不登校・ひきこもり・ニート』について取材をはじめた頃、実はこういった人が多くてかなりとまどった経験があるのですよ。
若者だけではなく、大人世代、親世代にも多くありました。おそらく傷ついた人、傷つきやすい人はそういった状態になるのかも知れません。
その当時は、まだ「現代型うつ」とか「新型うつ」とかいう言葉はなかったんですけどね。
また、ネットラジオ『オールニートニッポン』でキャスターをやっているときも、ぼく以外の人のキャスターの多くはそういう「自己責任ではなく、人のせい」という論調の人が多かったような気がします。
その中でぼくだけが「自己責任ってあるよ」とか言っていたので、リスナーの方から「巨椋さんは保守派だ」とかよく言われました。(苦笑)
もちろん、ぼくは全部自己責任とか、全部人のせいなんていうつもりはありません。
自己にせよ他者にせよ、責任論には必ず線引きが必要だと思っています。
先日、NHKの「クローズアップ現代」という番組で「現代型うつ」を特集していましたが、精神科医の方が
「何か困ったことが起こったとき「なんでも他人のせいする」というのは子どもの心性。何か嫌なことがあればママのせい、先生のせいと人を責めるもの。それが成長してくると内省して自分にも何か非があるんじゃないかと思うようになる」
「いまの若者は、傷つき体験が少ない」
と、おっっしゃっていました。確かにそういったこともあると思います。
また、従来のうつ病の人に「がんばれ」等のはげましはよくないと言われていましたが、「現代型」「新型」と呼ばれるうつの場合、
「はげます、場合によっては向き合って怒るとか叱責するとか、問題点を突きつけることが必要」
ともありました。
ぼくも以前から、従来からあった紋切り型の「うつの人にがんばれと言ってはいけない」というのはどうかなと思っています。
がんばれという声がけを禁止されたとき、場合によっては職場などで「声がけ」がやりにくくなり、最終的にシカトや無視をするということになるのではないか? という危惧があるからです。
ただ、また逆に、「はげましすべき」「怒ったほうがいい」と、短絡的に考えてしまうのも、間違っていると思いますね。
すべはケース・バイ・ケースで、一概に決め付けるのは間違いでしょうね。
最初にいったように現代型・新型といわれるうつは、病名としてはないんです。
中には従来型のうつ病の人や、他の障害や病気の人も多数含まれていると思うんです。
また、中には
「うつ病と称して、仕事はしないくせに、遊びには行けるなんて許せない」
という人もいます。
しかし、ぼくは「仕事に行けなくても、遊びに行けるのならいいじゃないか」と思うんです。
重いうつ病の人って、自分でトイレにも行けないくらいの状態になります。
と、いうことはです。遊びにでも行けるのなら、まだそれほど重症ではないということです。
それでも、ぼくが知る限り、現代型・新型といわれるうつの人も、全員大変苦しい思いをしています。
「うつのくせに遊びに行くとは許せない」とは、逆になんと思いやりのない自己中心的な考えであることかと思います。
ときには、そうやって苦しんでいる人を責めている人も、もしかしたら、そうやって責めることで自分が救われようとしているのかな? とか思うこともありますね。
ただ、実際に、勤めた先がブラック企業だったり、ひどい上司やひどい学校、ひどい環境にある場合もあります。
そして現代型・新型うつ病の人が、問題を人のせいにしたりするのを見て、不愉快になるのも当然であるとも思います。
苦しんでいる人は、自分や周囲とうまく折り合いをつけてほしいと思うばかりですね。
『FHN放送局』
巨椋修(おぐらおさむ)