虐待の後遺症
2010年度中に被災地を除く児童相談所が対応した児童虐待相談は55,152件で過去最多となっています。
この数字は、統計を取りはじめた平成2年では1,101件でしたから、ここ20年で虐待相談件数がいかに増えているかがわかります。
もっとも、虐待件数は、この20年で虐待という問題を、世間が知るようになったというもので、この20年で、世の親たちが、特に凶暴になってきたというわけではないと、わたしは思っています。
つまり、虐待が増えたというよりも、児童相談所に相談や通報する人が、それだけ増えたということではないかということですね。
それまでは、家庭の問題は家庭内に隠蔽(いんぺい)する。他人の家庭の問題は、口出ししなかったのではなかったかと考えているのですよ。
ただ、全国の児童相談所で、非行相談を受け付けた子どもの30%が虐待を受けた経験を持ち、8割以上が何らかの心理的な問題を抱えていることがわかってきました。
また、非行相談を受けた子どもの約半数は、育つ途中に親の離婚や、施設に保護されるなど養育者が代わり、親や家族との愛着関係を絶たれる経験をしているそうです。
また、児童相談所で非行相談を受けた中で、30%の子どもは親などから虐待を受けていたといいます。
虐待の内容は、
身体的虐待、ネグレクト(養育放棄)、心理的虐待、性的虐待などがあるわけですが、非行相談を受けた子どもの“心”に、何らかの問題があるというのは
83%!
その内容は、
・衝動性、攻撃性が高い
・自己中心的、協調性がない
・人間関係がとりにくい
・劣等感、自信喪失
・不登校
などがあるといわれています。
※ここで念のために注意しておかないといけないのは、“心”に問題のある子どもイコール、虐待の結果ではありません。
また上記の内容イコール虐待の結果ではないことを書いておかねばなりません。
ここを注意しておかないと、とんでもない誤解や差別が生まれかねませんので、充分にご注意を!!
ちなみに、児童相談所に相談があるというケースの約7割は、14歳未満。
14歳以上になると、児童相談所ではなく、警察が対応するためですが、もし14歳以上も非行少年も含めて調査をすると、もっと悲惨な結果を生むことになるかも知れません。
家庭というのは一種の密室であり、虐待が表に出るというのは、氷山の一角にしかすぎないというのも、おそらく事実でしょう。
虐待をする親の中には、
「これは虐待では、ありません。”しつけ“です。我が家の教育方針に口出ししないでほしい」
と、思っている親も多くいます。
『不登校・ひきこもり・ニート』の裏側に、虐待が隠されていることも少なくありません。
また、虐待には、必要以上に親が子どもに干渉しすぎるという ”優しい虐待” もあります。
暴力を体罰とカン違いしている親。体罰ではなく、言葉で子どもに暴力をふるっている親もいるかも知れません。
これまでの調査で、虐待の後遺症がいかにひどい結果を生むかが、明らかになっています。
昨今、話題になっている親子殺人、兄弟殺人の裏側も、虐待の後遺症であるやもしれません。
親も子も、教育福祉関係者だけではなく、社会全体が虐待というものがいかに不幸をもたらすのかを、もっとよく考えるべきでありましょう。
『FHN放送局』
巨椋修(おぐらおさむ)