自傷行為について
『不登校・ひきこもり・ニート』の取材をするようになってからも、多くの当事者に会い、いろいろなお話をうかがいました。
最初の頃は、自傷行為を“する”人を見て驚いたというのが正直なところですね。
いえいえ、リストカットの傷跡とか見て驚くとかじゃないんです。
話している最中目の前で、いきなり自傷行為をする人とかもいたのですよ。
そりぁ驚くわな。
相手の人が、いきなり自分の手首を切ったり、タバコを自分の顔に押し付けたりするのは、あまり見ていて気持ちのいいもんじゃない。
じゅ〜ッ
なんて肉の焼ける音もいい気持ちはしない。
さらにぼくの方に向かってきて切り付けられるなんてもの、いい気持ちはしないもんです。
(ごくまれにそういうことがありました。運良く実際に切られることはありませんでしたけど)
傷跡とかを見るのは、全然驚かないんです。慣れちゃったのかも知れません。
傷跡も、体中にタバコの焼け跡があるものから、切りすぎて手首が盛り上がっているもの。
手首じゃなくって、自分の体中に数100ヶ所も切り傷があって、傷が蛇腹状になっているものとかね。
最初は、何で自分の体を傷つけるのかわからなかったけど、たくさん話をしているウチに、なんとなくわかるような気がしてきました。
なんとなくなんですけどね。
最初は、「やめときなよ」なんていってたけど、そのうちそれほど止めようなんて気がしなくなってきたんです。
自傷行為の理由は、
●自罰行為
●怒りを他人にではなく、自分に向ける
などといわれています。「手首を切ったら、何となく落ち着くんです」という人も多くいます。
流れる血を見て、「わたしはまだ生きているんだ」と、実感するという話す人もいます。
自傷行為は、彼らにとって、自分が自分であるために行って行為なのかもしれません。
また、他人にやたらとケンカを売るとか、売春、万引き、ドラッグ、摂食障害、各種依存症なんてのも、一種の自傷行為といわれているようです。
自傷行為の代表格であるリストカットっていうのは、60年代だったと思うけど、アメリカで流行したのが、マスコミで取り上げられて日本に定着したそうなんですね。
それまでは、手首を切るなんていう行為は、知られていなかったということなんでしょう。
だからといって、自傷行為がなかったわけではなく、刃物で自分を傷つける人はいたり、その他の自傷行為をやっていた人は、たくさんいたみたいです。
自傷行為っていうのは、自分で自分を傷つけることなんですけど、そうすることでやっと生きている人って、結構多いと思うんですよ。
多分……、ですけど、肉体の傷以上に心に傷を負っている人も多いと思うんです。
だから、やっぱり多分……、なんですけど、体の傷と同時に、あるいはそれ以上に、心の傷を何とかするのが、一番だと思ったりしています。
ちなみに、いまの中高生では、10人に1人の割合で、リストカット等自傷行為をした経験があるといいます。
若者はいつでも悩むものですが、いまの若者は特に生きづらい時代なのかも知れませんね。
『FHN放送局』
巨椋修(おぐらおさむ)