風評被害といじめ

前回、『子どもは親や大人の真似をする 』と題した文章を書きました。

そのあと、次のような報道がありました。

千葉・船橋 福島から避難の小学生に“放射能いじめ”
[ 2011年4月15日 06:00 ]―スポニチより―
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/04/15/kiji/K20110415000632440.html



 福島県から避難してきた小学生が「放射能がうつる」などと偏見を持たれるケースが千葉県船橋市であり、同市教育委員会が市内の小中学校に適切な指導を求める通達を出した。


「避難している人の気持ちを考えて」と配慮を要請している。専門家は「放射能はうつらない。正しい知識の教育が必要」と呼びかけている。


 船橋市教育委員会に情報を寄せた船橋市議によると、震災直後の3月中旬、福島県南相馬市から船橋市の親類宅に身を寄せていた小学5年生と1年生の兄弟が、公園で遊んでいた際に地元の子供たちから声を掛けられた。


 「どこから来たの」と聞かれたので、兄弟が「福島」と答えると、子供たちは「放射能がうつる」「わあー」と叫び逃げたという。


 兄弟は泣きながら帰宅。今月から市内の小学校に転校する予定だったが、両親は「子供を我慢させてまで千葉にいる必要はない」と福島市に移ったという。


 市教委では、3月28日に市内の小中学校計83校に適切な指導を求める通達をメールで送付。指導にあたっては「思いやりを持って接し、温かく迎える」「避難している人の気持ちを考えて言動に注意する」など避難している子供たちへの配慮を要請。さらに「(放射線に対する)大人の不安が子供たちに影響を与え、冷静な対応が取れなくなる恐れがある」と保護者と連携した対応の重要性も指摘した。


 全国各地には、被災地から移り住んだり転校した子供が多くいる。約900人を受け入れている新潟県教育庁では「子供たちは噂に左右されやすい。被災者に限らず、親が亡くなったなどの個別の事情は、保護者と相談して他の子供たちに具体的に明かすようにしている」と対応策を説明。「その方が偏見を減らせるのではないかと思う」としている。


 情報を寄せた市議は「学校から子供たちにきちんと指導してほしい。(偏見を持たぬよう)大人が手本になることが一番大事だ」と強調した。


 ▼放射線医学総合研究所 放射線を浴びたとしても除染済みであれば他の人に影響することはない。そもそも避難した方たちの中に除染を必要とするレベルを浴びた人はいない。子供にはきちんとした知識を教育することが大事だ。

ぼくは、原発事故の直後くらいから、こういった風評被害が出ることを、機会があるごとに訴えてきましたが、残念ながら事実となってしまいました。


こういったことは子どもの世界だけではなく、今後、10年20年といった長いスパンで起こります。


たとえば、今後原発のある地域や県に住んでいた人が結婚をしようとしたとき


「子どもが産めない体だ」

「奇形児や障害児が生まれるかも」


といった理由で差別や、結婚を反対されることが予想されます。


いえ、予想というより、かつて第二次大戦の長崎や広島の人たちで、そういった差別や、「原爆の毒が移る」というイジメ、その他多くの風評被害を受けた人がたくさんいたのです。


長崎や広島だけではありません。

多くの公害病の被害者たちや、その子どもたちにも、そのような差別やイジメ、風評被害がありましたし、いまでもあるのです。


これら風評被害はなぜ起こるのかというと、ひとつには【無知】からおこります。


むかしのアメリカで宇宙戦争』というラジオドラマがありました。

何度の映画にもなっていますのでご存知の方もいると思います。

ドラマの内容は、火星人が地球に攻めて来て、地球の軍隊が火星人と戦うというSF。

「本当に火星人が地球に攻撃をしかけてきた!」

と、勘違いし全米各地でパニックを起こしてしまったという事件です。


この事件に対して、アメリカの心理学者キャントリルは、


「パニックになってしまった人々は、教育レベルが低い人が多かった」


と、指摘しています。

教育レベルというと、多少誤解を生むかもしれませんので、これは「リテラシー(読み書き能力。情報を選別し活用する能力)」といったほうがいいかもしれませんね。


教育レベル(リテラシー能力)の高い人々は、そのニュースが嘘か本当か、本当ならどこまで本当かを調べることによって、パニックを避けることができたといいます。


風評被害や風評によるいじめ等を防ぐのも同じで、正しい知識をつけることで防ぐことができます。


もっとも、どんなに「わかった風なこと」を言ってみても、すべての人類は、やはり無知であり、自然のことも人間自身のことも何も知らないのですから、パニックになったとしても、それは仕方のないことです。


ただ、ほんの少し、その情報について考えてみると、かなりパニックや不安は抑えることができ、風評被害やいじめ、差別を防ぐことができます。

参照:大地震におけるデマその2「不安の心理学」
http://npn.co.jp/article/detail/78045934/


参照:大地震によるデマその3「デマは心の闇が浮き彫りになる」
http://npn.co.jp/article/detail/98692109/


※追伸:このブログでも何度か言ってきましたが、今回の震災で、負の影響を受けてしまい、うつ状態になったり、パニックになってしまっている人がたくさんいます。

そういう方は、震災情報を少し断つなり、ゆっくりと休んでください。

そして一日でも早く元気になるのが、結局は1番の支援活動です。

不登校・ひきこもり・ニート』の支援活動もそうで、影響を受けて自分達が『不登校・ひきこもり・ニート』になっては、支援活動ができないのと同じですね。

だからゆっくりと休んでくださいね。



FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)