低所得家庭と不登校

ちょうど2年前の新聞記事です。


<中学生不登校>生活苦も原因 保護世帯の1割 東京・板橋
毎日新聞 -09年01月30日)




 生活保護を受ける世帯の中学生の不登校発生率が、生活保護や就学援助を受けない中学生の4.8倍に上ることが、東京都板橋区の調査で分かった。

不登校は学校嫌いが原因とみられがちで、国も家庭の経済状況との関連を調べていない。

低所得も大きな要因とわかったことを受け、都内の一部自治体は、生活保護不登校児童生徒を支援する事業を始めた。国も背景分析や支援が求められそうだ。

 就学援助は給食費などを助成する制度で、所得基準は生活保護よりやや緩い。

板橋区の就学援助受給率は35%、生活保護の保護率は2.47%で、共に全国平均の倍以上だ。


 板橋区は、中学生の不登校が多いため調査を実施。

区立中の06年度の全生徒8844人のうち、援助を受けていないのは5267人。

不登校はうち127人で、発生率は2.41%だった。

一方、生活保護を受ける中学生449人中、不登校は52人。発生率は11.58%で援助を受けない子の4.8倍に達した。


 また杉並区は昨秋、生活保護を受ける中学生70人を調査。ケースワーカーが「いつも家にいる」ことから不登校と判断した中学生は6人で発生率8.6%。

前年同期の区全体の不登校発生率(2.19%)の約4倍だった。


 板橋区は昨秋から「貧困の再生産を防ぎ、子どもの自己実現を図る」ため、生活保護世帯で不登校の小中学生に、学習ボランティアの派遣費を年6万4000円助成。

杉並区もフリースクールの受講費と通学費で年最大約20万円を支給する。

共に都の生活保護世帯自立促進事業の一環だ。


 学校関係者の間では、貧困のため親が食事や洗濯の世話を怠り、生活リズムが乱れ学校に来なくなる子の存在が指摘されていた。【山本紀子】

(※読みやすくするため、巨椋(おぐら)が改行をいたしました)



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以上、毎日新聞からの引用なのですが、不登校については、80年代、90年代などは、むしろ“裕福”な家庭の子どもが多いなどといわれていた時代があります。



もちろん、そんなことはありません。



不登校にせよ、非行にせよ、どのような家庭環境からでも出てくるものです。


ただ、当時、不登校について、大きく問題視していたのは、フリースクールや、不登校を対象にしたカウンセラー等の人が多かったのですが、そういったところに行く人に、比較的裕福な人が多かったからそのように思われていたのでしょう。


貧しい家庭では、月に数万円もする月謝や、一回数千円するカウンセリング料は支払えませんから、そういった施設や、相談機関に行くことが多かったのが、比較的裕福な家庭の人であったというだけの話しです。



しかし、現実としては80年代、90年代の時代から、低所得者層にも、不登校の児童生徒は多かったと思われます。


わたしが不登校にかかわりだしたのが、90年代の終わり頃ですが、その頃はまだ、


不登校は比較的裕福な家庭の子が多い」


とか言われていたんです。


実際に、いろいろと調べたりしているうちに、「ん?」と思ったものです。


「いやいや、低所得家庭の子どもも結構いるぞ。むしろ多いかも知れない。ただ、不登校を対象とした業者に注目されていないだけではないか?」


と。


さほど裕福ではない家庭の子どもは、私立や民間の施設には、なかなかいけないので、保健室登校や、当時できたばかりの適応指導教室とかに行っていたようです。


当時、ある民間の不登校業者の代表が講演の中で


適応指導教室は、学校へ子どもを戻すためのものだから、行ってはいけない!」


と、言っていたことがありました。


「う〜ん、それもどうなのかな? この人の施設でも、月会費が払えない家庭の子どもは受け入れないわけだし、ただこの人が学校と対立しているだけなのでは……」


とか、思ったことがありましたね。


ともあれ、当時から、低所得の家庭の子どもにも、不登校の児童生徒は多くいたと。


そして、不況が続く2000年代になって、教育格差がひどくなってきているといいます。


富裕層の親は、子どもを塾に行かせ、家庭教師をつけ、幼稚園時代からのお受験はまずます盛んになっていると。


いっぽう。低所得者層の親は、子どもの教育への余力がない。


高度成長期の時代と違って、努力すれば上いけるという実感も幻想もない。


子どもが不登校になってしまったとしても、民間の施設にやる余力はもちろん、適応指導教室にやるという気力もなくなってきている。


いま、低所得者層の親に、教育への情熱が薄くなっていることが言われていますが、親に子を思う心があれば、所得が低くてもいくらでも方法はあると思います。


また、親の所得が低く、教育にも関心がないという場合、あとは本人が、どのように考え、行動するか……、になってくるのだと思います。



自分が低所得家庭に生まれようと、不登校であったとしても“自分磨き”を忘れてはいけないということですね。


誰に文句を言おうとも、自分の人生ですし。





ああ、それと最後にご注意を。


この新聞記事を読んで、【低所得者層の家庭の子は、不登校になりやすい】と、短絡的に考えないでほしいということですね。


そこんところは、ご注意、ご注意。




不登校・ひきこもり・ニートを考える FHN放送局代表』
巨椋修(おぐらおさむ)