運の良し悪し
世の中には、運のいい人、悪い人というのが、確かに存在しているのかも知れない。
ただ、それが本当に幸運だったのか、不運であったのかは、誰にもわからない。
わたしが見たことのある“運の悪いお話し”をひとつ。
わたしが19歳くらいのとき、わたしは、友だちを数人集めて建設現場で働いておったのですよ。
前日までにわたしが仕事を請け負って、朝になると車で友だち数人を拾って現場に連れて行く。
終わったら、車で全員を家に送っていくという仕事をやってたんです。
で、あの日は天気のいい朝でございました。
わたしは友人数人を車に積み込み、現場へ急いでおったのです。
と、我々の目の前を走る車は、人間の排泄物を吸引して回る自動車、通称「バキューム・カー」でございました。
我々はバキューム・カーのすぐ後ろを走っておったのです。
しばらくしていると、バキューム・カーのホースが、少しずつはずれてきたんですな。
最初は、1メートルくらいでしたが、そのうち3メートル5メートル、やがてホース全部を、バキューム・カーを引きずって走っている形になったんです。
我々としては、クラクションを鳴らすか、追い越しざまに教えてやるかなどと思いながら、少し離れながら走っておりました。
と、前を走るバキューム・カーの前の方に、バス停が目に入りました。
バスの待っている人が一人いました。
白い服をきた、遠目にも大変美しいお嬢さまでございました。
そのお嬢さまの前をバキューム・カーが通り過ぎた瞬間でございます。
引きずっていたホースと、バキューム・カー本体が、ぽんと外れたのでございます。
次の瞬間!!
外れたホースから、バキューム・カーが吸引した内容物が、
びちゃびちゃびちゃ
と、
白い服をきたうら若く美しいお嬢さまへ、降りかかったのでございます!!
全身、ウ●コままみれになった横を通りすぎるわたしたち。
両手のじっと見つめて、自分に起きたことが信じられないという表情がいまでも忘れられません。
このお嬢さまを、不運と言わずして何を不運というのでしょう。
が、しかし本当に不運であったかどうかは、不明なのですよ。
運が付いていたのかも知れない。(ウ●コだけに)
もし、何もなくバスに乗ってお出かけしていたら、交通事故にあって亡くなってしまっていたかも知れない。
通り魔に刺されていたかも知れない。
だとしたら、もしかしたら、バキューム・カーの内容物を浴びてしまったのは、運のいいことだったのかも知れない。
これは、誰にもわからない。
起きてしまった事象は、事象です。
しかし、その事象をどう考え、どう感じるのかが大切なのかも知れませんね。
FHN放送局代表
巨椋修(おぐらおさむ)