自殺を悪と決め付けない

自殺というのは、家族や周囲の人に大きな影響を与えます。

作家の五木寛之さんと精神科医香山リカさんの対談書である『鬱の力』という本に次のような一文がありましたので、引用します。

五木 自殺は遺された人に大きな心的傷外を残すでしょう。

香山 ええ、ほとんどのケースで、遺された家族は崩壊してしまいます。痛手を乗り越えて仲良くやっていく人もいますけれど、多くの場合、「あんたが悪いから死んでしまった」と言って、罪をお互いになすりつけあうようになる。結局、家族がうまくいかなくなるケースが多いですね。

(中略)

五木 遺族の心のケアは自殺防止と同じくらい重要な問題です。父親が首を吊って死んだとすると、遺された子どもが「お前の父ちゃんは首吊って死んだ」とみんなにはやされて、転校せざるをえなくなる。二度、三度と転校することになったり、縁談が急に取り消しになったり、内定していた就職が取り消されたりする。お見合いのときに「あそこのお兄さんは自殺した」なんてことが噂になったら、絶対に原典ですから。田舎のほうへ行くと、三十年たっても「あそこのうちのあれは首吊って死んだ」というかたちで、ずっとついて回る。

―『鬱の力』五木寛之香山リカ著 幻冬舎新書より―

香山医師いわく、遺された家族の多くが崩壊するほどの影響がある。

五木氏いわく、遺された子どもや家族に30年たっても影響がある。


しかしそれでもぼくは、自殺を悪と決め付けない方がいいと考えています。

自殺する人には、文字通り自殺を選ばなければならないほど、深刻な事情があるのです。

それは、他者にとって大した問題ではないかも知れない。

しかし、当人には、限りなく重大な問題で、やむにやまれぬ事情や、心理状態になり自殺をいう手段を選ぶのです。

そのつらさや悲しさを思いやれば、決して自殺者を軽蔑したり、自殺を悪と決め付けることなどできないはず。


自殺を悪と決め付けてはいけない。


しかし、その影響と、周囲の人たちの傷を考えて、できるなら自殺はやめてほしい。

そう思います。


FHN放送局代表
巨椋修(おぐらおさむ)