【相談事例】お姑さんとのトラブル

その日、ぼくは「どうしても相談にのってほしい」という不登校の子どもさんを持つ、あるお母さんと面談をしていました。

仮にそのお母さんをＡ子さんとしておきましょう。

Ａ子さんの息子さんは、中学１年生のときから学校に行かなくなり、やがて小学5年生の娘さんも学校に行かなくなったといいます。

会ったときＡ子さんは、子どもたちのことからはじまり、夫のこと、そしてお姑さんのことなど、矢つぎばやに話されていました。

ぼくは、ただあいづちを打ったり、うなずいたり、たまにちょっとした質問をするくらいであったように思います。

Ａ子さんは、ときどき涙を流しながら、自分が置かれた状況や、つらい思いをしていることを話してくださりました。

ここでは、くわしい内容等は伏せますが、おおまかにいいますと、まず、Ａ子さんの旦那さんはお姑さんに、ずいぶん厳しく育てられてきており、それは一種、虐待といってもおかしくないような内容でした。

Ａ子さんの家族はご夫婦に子どもさんが2人、そしてお姑さんの5人暮らしです。

旦那さんは、どちらかというと大人しく、暴力をふるうような人でもありませんが、日頃からお姑さん、つまり旦那さんのお母さんにすごく遠慮をしているようなところがある人のようでした。

そして姑さんは、ときどきお酒に酔い、ご夫婦やお子さんたちを激しくののしったり、ときには物を投げるなど暴力をふるうこともあるといいます。

Ａ子さんの家庭は、お姑さんが恐怖支配をしている状態であったといってもいいでしょう。

お子さんたちも、そういう家庭の雰囲気につらくなり、それが不登校の原因の一つになってしまったのかも知れません。

ぼくは、何度かＡ子さんと会い、また旦那さんとも話しをし、「どうすればいいか？」という相談に対して、「例えば……」を前提に次のような提案をしました。

一方的に耐えるだけでは、全員か疲れてしまうだけなので、お姑さんになるべく丁寧に、そして穏便に「そういう言われかたをするとつらいので、やめて欲しい」と伝えること。

暴力などがおさまらない場合、可能であるなら家族で数日間家を離れて、お姑さんと距離を置き、避難すること、そして避難したときでも、1日数回は、こちらかお姑さんに連絡し、事情を話すことでした。

これは、口でいうのは簡単ですが、実際はなかなかできないことです。

いまでも、この提案が正しかったかどうかわかりません。

しかし、ご夫婦はこの提案を受け入れ、また幸いにも子どもたちも同意してくれ、トラブルが起こったときは、ときどき、一泊から一週間くらいの外泊をするようになりました。

一つ良かったのは、一時的に家を出ることで、普段はあまりない家族の会話、特に子どもとの会話ができたことのようです。

ご家族の外泊は、ウイークリーマンション等を利用したようですが、そうすると、子どもたちもずっと部屋に閉じこもっているのが窮屈になったのか、昼間は学校に行くようになったそうです。

また、お姑さんも以前ほどわがままをいわなくなり、いまではほとんどトラブルはなくなったとのことでした。

この例は、あくまでたまたまうまくいっただけに過ぎないでしょうし、どの家族でもできるという方法ではありませんので、特におすすめはしません。

そしてつくづく思ったのは、家族というものの難しさです。

家族というものは、一体のように見えて、とてもあやういものだからです。誰かに問題があるといって、早々に切り捨てるなどということも出来にくいものですしね。

そうそう、ぼくがＡ子にしたもう一つの提案というものがあります。

話しを聞いていて、あまりにも思いつめていて、家族問題に一生懸命になりすぎ、それでかえって疲れているように見えたので、ときどき手を抜いたり、息抜きをすること。

家事とかもときときサボってお友だちとお茶をするとか、カラオケにいくとかして、自分の時間を大切することです。

どんな人でも、その人の人生は自分の人生なのですから、ときどきハメを外すなり、ときにはちょっとした反則をしてもいいから、楽しんだほうがいいと思うのですよ。

きっとそのほうが楽しい人生を送れると思います。

『不登校・ひきこもり・ニートを考える　ＦＨＮ放送局』
巨椋修（おぐらおさむ）

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