精神鑑定について


今回は、犯罪者に精神的な病気が疑われる場合に使われる「精神鑑定」について書こうと思います。


例えばこういう実例があります。


ある小学校の用務員が、働いていた学校の教員のポットに、精神安定剤を入れて飲ますという事件が起きました。

その用務員は逮捕。

精神病と判断され精神病院に措置(強制)入院。

39日後に退院。


その男は、2年後に大阪の池田小学校に押し入り、7人の児童を殺します。


犯人の名前は、宅間守といい、彼の人生は、暴力、レイプ、詐欺、家庭内暴力で満ちており、そして彼が逮捕され、刑務所に行ったのは、強姦事件の一度だけでそれ以外では、何度逮捕されても不起訴ということが多かったりします。


理由は精神病院に入院歴があり、精神鑑定の結果で、です。


彼は精神病を詐病(病気を装うこと)して、犯罪を繰り返していたとも言われています。


実際、彼は働いていた学校で、精神安定剤入りのお茶を飲ませて逮捕され。措置入院した後、医師に


「あれは罪を逃れるために幻覚幻聴が聴こえると言っただけ」


と、主張。


つまり、自分は精神病ではない、詐病であったと主張していて、医師のそれを認めて39日目で退院を許しています。


つまりつまり、精神病患者として、拘置所や刑務所ではなく精神病院に送られ、病院で患者が「オレは罪から逃れるために、病気と嘘をついたのだ」と主張。


その言葉を精神医が受け入れ、「この人は精神病じゃありませんから退院です」と、拘置所や刑務所に送り返すのではなく、一般社会に出しちゃったわけです。


その後なぜか傷病手当金を要求。


精神分裂病のため労働ができないとして傷病手当金を申請し、傷病手当金、月20万円が支給されています。


約一年半後、傷病手当金が終了したので、こんどは精神障害者年金を請求。


池田小学校での犯行まで障害者年金は、月々支給されておりました。


現代の現在の心理学、精神医療では、詐病かどうかも、なかなかハッキリとわからないというのが実情のようです。


こういった事態を見ていると、つくづくと「精神鑑定」「心理テスト」ってなんだろう? と思わざるを得ません。


もし犯人に対して、正しく「精神鑑定」が行われていたら……

「精神鑑定」が信用のおけるものであったとしたら……

池田小学校の事件は起きなかったハズなんです。



また、次の事例もあります。


「平成16年版犯罪白書のあらまし」によると


「(4)  精神障害者の犯罪
   平成15年における一般刑法犯の検挙人員のうち,精神障害者は999人,精神障害の疑いのある者は1,655人であり,両者を併せると,一般刑法犯検挙人員に占める比率は0.7%であった。また,罪名別検挙人員に占める比率を見ると,放火の14.3%,殺人の8.4%が特に高くなっている。


 心神喪失により不起訴処分になった324人の罪名を見ると,殺人(71人)が最も多く,次いで,放火(58人),傷害(41人)の順であり,精神障害名は精神分裂病統合失調症)が225人と最も多い。


 また,不起訴処分になった者のうち心神耗弱者と認められた280人について見ると,罪名は傷害(73人)が最も多く,精神障害名は精神分裂病統合失調症)が148人と最も多い」



よく“人権派”とか、“人道主義者”と称する人が


精神障害の犯罪者は、一般に比べて少なく、凶悪犯罪者のほとんどは覚せい剤麻薬中毒のせい」


という人がいます。

確かに、軽い犯罪は圧倒的に少ないんです。


上記の「平成16年版犯罪白書」においても、「一般刑法犯検挙人員に占める比率は0.7%であった」と、かかれています。


しかし、凶悪犯罪となると一変してしまうのです。


「罪名別検挙人員に占める比率を見ると,放火の14.3%,殺人の8.4%が特に高くなっている」


つまり、自転車泥棒や万引きといった犯罪では、少ないんですが放火や殺人といった凶悪犯罪は、とても高くなっているということは、事実として関係者は知っておいた方がいい。


では、次に触法精神病患者(犯罪をした精神病患者)はどのような病気が多いのか?


「平成15年版犯罪白書」によるとこうあります。


精神障害名別で見ると,多い順に,精神分裂病統合失調症)(465人),そううつ病(58人),アルコール中毒(42人)となっている」


この犯罪白書を信用すれば、前述した


【“人権派”とか、“人道主義者”と称する人が精神障害の犯罪者は、一般に比べて少なく、凶悪犯罪者のほとんどは覚せい剤麻薬中毒のせい」】


と、いうのとはずいぶんと違います。


こうやって書いていると、まるで


「精神病患者は危険だから、全員強制収容してしまえ!」


と言っているように勘違いする人がいるかも知れませんが、それはぼくが言いたいことと、全く違います。


ぼくが言いたいのは、


「精神病は、『不登校・ひきこもり・ニート』の周辺事態である。

当事者には、そういった病院で薬をもらっている人も多いし、人間関係に問題を抱えている人も多くいるのが事実である。

よって、家族や支援する人は、この事実を知っておいて欲しい」


と、言うことです。


犯罪というのは、障害者であろうが健常者であろうが、環境や状況、教育、各自のストレスやトラウマと深い関係があります。


人は、犯罪を行いやすい環境や状況、教育や過度のストレスを避けることで、犯罪を予防することが可能です。

さて、いささか話題がずれました。



「精神鑑定」についてですが、これは他の「心理テスト」と同様に、極めていい加減なものです。


おせじにも科学的と言えるものじゃない。


なぜか?


科学とは、同じ条件であれば、誰が行っても同じ答えが出るものであるのです。

医者や心理士によって、全然違う答え、病名がでるようでは科学的とは言えません。

また、池田小の犯人が証明してみせたように、病名を偽ることも可能。

残念ながら、現代の心理学や精神医学では、まだまだ人の心は解明できていないというのが、現状のようです。




では、心理学や精神治療は無用かというと、そうでもありません。

この世界での研究は急速に発達していて、薬やその他の治療すいぶんと病気が軽減できたり治ったりするようになってきました。


ですから患者やサービスを受ける立場からいうと、うまく利用することです。


うまく利用するといっても、詐病などに利用は禁物ですよ。




不登校・ひきこもり・ニートを考える FHN放送局代表』
巨椋修(おぐらおさむ)