ひきこもりと殺人


先日、ひきこもりの男が家族5人を殺傷するという事件がおきました。

報道によると、犯人は中学卒業後、一時働くも人間関係が苦手で、その後15年間ひきこもりだったといいます。

犯人は、暴力で家族を支配し、両親の給料のほとんどを自分が奪い、一部を両親に渡し、自分は父親のカードを使って、ネットを使って買い物を続け200万円以上の借金がありました。

家族は県の相談所や保健所、警察に相談。

それら相談機関からの指示で、カードやインターネットの接続を止めたため、この事件が起きたといいます。

殺されたのは犯人の父親と、まだ1歳であった犯人の姪。

襲われた家族は全員で3名。

それぞれ3ヵ所から17ヵ所を切ったり刺し、さらに自宅を放火しました。


こういった事件が起こると、ひきこもりの支援団体かどからマスコミに対して

「ひきこもりや不登校の人が、殺人事件を起こしたときマスコミは騒ぎすぎる。一部の人のために、不登校者やひきこもり者全員が、殺人をおこすような書き方はしないでほしい」

といったことがよくいわれます。

確かに。ほんの一部の人が犯した罪のために、その他の人たちが感情的にあり、いわれのない差別や誤解を受けるのは、迷惑であり困ったことです。

そうならないためには、なるべき冷静になり、ひきこもり本人や家族の実態を知る必要があります。

本当にひきこもり者は、殺人を犯しやすいのか……

実際に、ひきこもり者や不登校児が、殺人など凶悪犯罪をどれくらいの割合で行なってしまうのかは、残念ながら正しい統計がないのでわかりません。

しかしおおよその推測は可能でしょう。

昨年2009年は、戦後もっとも殺人事件が少ない1年でした。

その数、殺人未遂、予備容疑も含めて、の認知件数は前年比200件減の1097件。

この中から、ひきこもり者の数を推測するのは、ちょっとイメージしにくいと思いますので、件数のすくない少年殺人事件を例をとりましょう。

犯罪白書によると、昨年の未成年(少年)における殺人検挙者数は、わずかに56人。

ここ何十年の間に、少年凶悪犯罪は激減して、ここ最近では、年間少年による殺人犯は100人前後といわれていましたから、さらに少年による殺人が激減していることがわかります。

この56人のうち、どれくらいの数がひきこもり者なのかは、やはり統計をとっていないのでわかりません。

しかし、仮に5〜6人いれば、少年殺人犯罪者の10人にひとりは「ひきこもり」ということになります。

そして、おそらく5〜6人はいると推測できるのです。


これが、成人も含めた殺人事件全般である1097件の殺人となると、ひきこもり者の割合はかなり少なくなると思われます。

と、いうのも、殺人事件でもっとも多いのが、親による子殺しで、殺人事件の3分の1を締めているからです。

次に多いのが、子による親殺しなのですが、それは殺人事件の10分の1もありません。

しかし、ここに垣間見えるのは、殺人犯の多くが、家族にも何らかの問題があるということです。

不登校・ひきこもり・ニート』も、家族にとって大きな問題となりえます。

不登校・ひきこもり・ニート』に関係する人は、この事実から、目をそむけてはならないと考えています。



また、最後になりますが、この家族は警察などに相談をしています。

暴力やカードの使い込みがあったためで、警察への相談は間違っていませんが、ご家族か警察が、同時に「ひきこもり」事例にくわしいとする医師や相談機関に相談していれば(実は、あまり適切でない団体や医師もいるのも現状ですが……)、急にカードを取り上げたり、ネット接続を停止するようなことはなかったと思われ、ついては、このような悲惨な事件にならなかったと思います。




FHN放送局代表
巨椋修(おぐらおさむ)