ひきこもりの心理
知り合いに“元ひきこもりナンパ師”を自称する夏目涼介さんという方がおりまして。
夏目さんは、自衛隊に数年間在籍した、つまり社会人としての経験もある方なのですが、自衛隊を退職後ひきこもりになってしまいます。
夏目さんは、どうも内向的な性格であったらしく、これまであまり外出などということはなかったそうな。
そのことをご自身のブログで書いておられるので、ちょっと長いけど引用させていただきましょう。
ひきこもりナンパブログ
2007年02月03日
ひきこもりにナンパは可能か? その1
「まずは、ひきこもりが外に出るのが困難なのは、なぜか?
このことからお話ししましょう。
ひきこもりの原因は多種多様にわたるでしょうが、共通する最大の要因は
外の世界がどうなっているのか、わからないことだと思います。
もちろん、新聞、テレビ、インターネットで、外界のニュースは入ってきます。しかし、これらのメディアは肝心なことを教えてくれません。
ちょうど一年前、僕は毎日パソコンだけに向かう完全なひきこもりでした。
5年に及ぶ自衛隊生活で精神がおかしくなる寸前までいじめられたので、とにかく人間嫌いになってしまい、他人との接触を完全に断って生活していました。( ̄_ ̄|||)どよ〜ん
しかし、このままではいけないなぁと思い始めたとき、偶然ネット上でNPOコトバノアトリエの代表である山本さんに出会いました。
そして、運良くスタッフに加えてもらったのですが、そこで非常に困ったことが起きたのです。
「スタッフの打ち合わせは、毎回、ロッテリアかミスタードーナッツで行います」
( ̄△ ̄;)エッ・・?
ロッテリアかミスタードーナッツだと……
な、なんだ、このオシャレでトレンドな雰囲気は!?
こんな社交的で明るそうなグループの人たちの中に入ってうまくやっていけるのか!?
いや、それよりもむしろ……
ロッテリアって、どう利用したら良いのじゃ!?
なにを隠そう、僕は高校、自衛隊時代から、外出して遊ぶという経験が全くない、スーパーインドア派人間『準ひきこもり』を経て『ひきこもり』へとクラスチェンジしたので、ロッテリアやミスタードーナッツに入った経験がありませんでした!
なので、最初、ロッテリアで山本さんに初めて会ったときも、どう商品を注文して良いのか、料金は前払いなのか、後払いなのか、それすらもわからず、とても戸惑いました。
そう、二十代の男性が身につけていてしかるべき、当然の社会性が一部欠如していたのです!
その代わり、銃の分解結合や、射撃、匍匐前進という、社会生活にまったく関係ない妙な技術だけは持っていました。Σ( ̄ロ ̄lll)
ただ、僕の場合、自衛隊時代に半ば強制的に先輩や同期たちとの飲み会に参加させられたりしていたので、ひきこもりながらも、最低限度の社会性を持っていました。
なので、ロッテリアに入って商品を注文するという行為も、戸惑いながらもできたわけです。
が、もし高校を卒業してから二十代半ばまで、ずっとひきこもり生活を続けてきていたら……
たぶん、ロッテリアに入って商品を注文するなんてことは、踏破不能のエベレスト山脈のごとき巨大な壁だったでしょうね。
なぜなら、二十代半ばの男性が、買い物の仕方がわからないなんてことは異常であり、異常であることは迫害や嘲笑の対象になるため、それを回避し続けようとする心理が働くからです。
買い物の仕方は、残念ながら、ふつうに生活していれば自然に身に付くものであり、誰も教えてくれません。
いまさら、恥ずかしくて、ロッテリアではどう商品を注文するのですか?
ホテルに泊まるにはどうしたら良いですか?
電車にはどうやって乗ればよいですか?
なんてコトは、絶対に聞けないですよ。
しかし、外に出ようと思ったら、これらの施設を当たり前に利用できるようにならなければいけません。
だからこそ、ひきこもりは外に出られないのです。これはもはや、精神論や根性論ではどうにもならないモノです。
一緒に外に出て、社会の仕組みを教えてくれる家族や友人、そしてその行為を恥と思わないで実行できる勇気が必要です。」
いかがでしょう?
ロッテリアというファーストフード店に入り注文をするということが、ひきこもりであった夏目さんには、大変大きな壁であったというのです。
このことは大いに考えさせられることです。
普通なら「たかが……」と言われることが、なかなかできない。壁になるというのは、ありうることだと思います。
この事例を笑える人は、おそらく想像力が欠落した人でしょうね。
ぼく自身、やり慣れていないことは、ちょっと手控えたくなったり、不安を覚えたりします。
“世慣れる”
という言葉がありますが、経験のない人、対人恐怖や自信がない人、内向的な人や傷ついた人などは、なかなか“世慣れる”ことができないかも知れません。
できれば……
夏目さんがおっしゃるように、家族や友人に手伝ってもらって、少しずつ慣れていくとか、あるいは自分で少しずつ慣れるようにしてみる必要があると思います。
少しずつ……
少しずつでいいですから。
FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)